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忘れさせられていたパレスチナ問題、蘇った二国家解決

2023-10-17 18:10:25 | WW1&2
昨年から今年は本当にいろいろなことが起きる。

スローモーションのバルバロッサ作戦と「経済的電撃戦」を組み合わせた、NATO諸国によるウクライナを使ったロシア侵攻は既に1年8カ月をすぎたが、NATO諸国はまだ諦めない。諦めなくても膨大な武器弾薬が消費され、ウクライナ人は死んでいく。どう終わらせられるのかがわからないから終わらないというフェーズだと思う。

そんな中、10月7日、パレスチナのガザでパレスチナを実効支配するハマスがイスラエルの中に入り込み、イスラエルの軍人、民間人に相当な被害を生じた。これに対してイスラエルの反応はやや遅かったが、反撃というよりほとんど復讐の構えを取りだした。

いうまでもないですが、ガザは残り少なくなったパレスチナ人の支配地域。


長く見ている人はみんな知ってる通り、イスラエルはガザの人間を人間だと思っていないメンタルだから、ガザには水も電気もガスも与えないと包囲(は既になされている)の上の殲滅を狙うかのよううなことを言い出し、実際、大規模に空爆した。

ガザの200万超の人口の全員に罪がある訳でもないうえに、その大半は女子供なのだが、それでもまったく気にせず、我々は完全な包囲戦(siege)を行うと言う人が、影にいるんじゃなくて、堂々といるんだなと私にしても驚いた。



そして、

このような光景が広がった。



それでもイスラエル当局はターゲットはガザの人間全部だと言って憚らない。ガザの人間に無実のものはいない、とか言い出すわけですよ。

 


長く見ている人は怒りはあっても驚きはないだろうが、多くの人にとっては、そんなことを一国の大統領、首相、国防相が言うということそのものが驚きだったようで、世界中でイスラエル非難の声があがった。


■ ハマスはイスラエルが作った

で、少なからぬ人たちが最初に頭に浮かんだのは、これはイスラエルが、またはイスラエルと米がわざと仕掛けたのではないのかということ。

なぜなら、そもそもハマスは、アラファトのいたPLOを相手とせず、パレスチナ問題解決とならないために、イスラエルが強硬派をスカウトして作ったものだから。

だから、そこを使って、対立を作って、多くの人が「テロリストを潰せ」と叫ぶ中、イスラエルが正当性を得てガザを今度こそ全部破壊する、人を立ち退かせようとしているのではないのか、と。つまるところ、911のようなもの。

今でもそこに拘る人は多いし、それはそれで無理もないのだが、今回はちょっと様子が違っているんじゃないのか、少なくとも、もしシナリオを描いた人がいたとしたらその通りにはいかなかったのではないのか、と思える。

結局、この問題を長く見ていた人の一人の米の政治学者ミアシャイマー教授が発生から3、4日経った頃に動画で言った、

ハマスがイスラエルを攻めてくることは誰の驚きでもない。しかし、イスラエルはそのスコープに驚いたのだろう、

というのが適切な言い方なのではないかと現時点ではそのように思う。

実際治安機関が読み取れなかったのか、読み取ったが内緒にしてたのか、Aが掴んでBには伏せたのか、だいたい見通してたけど規模が違ってて、こりゃヤラれた、となったのか等々、そこらへんは後で明らかになるかもしれないし、ならないかもしれない。

一つだけわかるのは、イスラエル軍の軍人は結構な数が殺害され、それもあって対応が遅れたようだし、民間人の危急を助けることもできなかった、つまり、経緯はどうあれ、これはイスラエル治安機関の失敗だということ。

今のネタニヤフ政権が強硬政策を取りたがるのは、戦争を長引かせてそこに立ち戻らせないためだろう、と考えて悪いことは全然ないと思う。そもそもイスラエル国内はこの右派政権を巡ってずーーーっと分裂していたわけだし。


■ サウジアラビアの声明

さはさりながら、大きな出来事は、発生から間もない現地時間の同日に静かに起きていた。

サウジアラビアが、今般の事象に際しての声明を発表した。





そこでは、双方間のエスカレーションの即時停止、民間人の保護、自制を求めるとした上で、

王国は、継続的な占領、パレスチナ人民の正当な権利の剥奪、そしてその聖地に対する組織的な挑発の繰り返しの結果として状況が爆発する危険性について、繰り返し警告した。

国際社会に対し、自らの責任を引き受け、地域の安全と平和を達成し、民間人を保護するための二国家解決につながる信頼できる和平プロセスを活性化するよう改めて呼びかける。

と記されていた。

この声明は、メッカとメディナというイスラム教の二大聖地を抱えるイスラム世界のビッグ・プレーヤーから出たわけだが、果たして十分な光が当てられているのだろうか? ちょっとよくわからない。

報道されようがされまいが、サウジがパレスチナ人民の正当な権利の剥奪を遺憾として、その上で、二国家解決に言及したことは大変に大きな出来事。

集団礼拝が行われる金曜日には、イラクでもイランでもトルコでも、ありとあらゆるイスラム教がメジャーな国で、パレスチナの人たちを助けろ、空爆するな、解放しろという趣旨で大きなデモンストレーションが活発に行われていた。




もちろん、デモだけでなく様々なメディアを通して、ガザの様子、イスラエルやアメリカの反応が伝えられ、現状、イスラム世界での関心事ナンバー1みたいな感じになっている。

毎度中東で事件があるたび思うけど、西側ってもう報道姿勢とか分析の質の点で中東にもロシアにも中国にも負けてると思う。朝日じゃないわとBBCにしがみつく人は、単に差別主義というか、西側チームの優位性を信じ込んでる人かもしれないなぁとか思う。

アメリカ覇権体制はそもそも多くの嘘によって成り立ってるので、タブーが多すぎて馬鹿みたいなことを言える人しか表に出ない体制になっちゃってるのが最大のネックではある。


■ アメリカの中東政策の失敗

サウジアラビアの声明から3日経った10月10日、ロシアのプーチン大統領が、折から「ロシア・エネルギー・ウィーク」というイベントのためにロシアを訪れていたイラクの首相を横にして、この問題について最初の発言をした。




多くの人が私に同意してくれるだろうと思いますが、これは米国の中東政策の失敗を示す明確な例です。

米国の政策は、決着のプロセスを独占しようとするもので、しかし残念なことに、双方が受け入れられる妥協案を見つけることには関心がありませんでした。

それどころか、これをどのように行うべきかについて自分のアイデアを提案し、両方の側に、まず一方に、次に他方という具合に実際には両方に圧力をかけます。

しかし毎回、パレスチナ人民の基本的利益が考慮されず、なによりまず、独立した主権国家であるパレスチナ国の創設に関する国連安全保障理事会の決定を履行する必要性が念頭に置かれてもいません。



その後か同時にか、ちょっと時間はわからないが中国も同様の立場を表明し、外相の王毅さんが、イスラエルは自衛権の範囲を超えてる等積極的に発言している。


■ パレスチナ国を認めない米と子分

パレスチナ問題がアメリカの中東政策の産物で、この悲劇からすればそれは失敗と言われるべきであろうことに誰も異論はないでしょう。

ただ、サイコパスの政策担当者たちが、失敗じゃない、この波乱の上にガザを更地にするのだと考えているかもしれないことが気がかりなだけで。

実際問題、パレスチナを国家として認めようという動きはずっと継続していて、国家承認していないのは、いつものようにアメリカとその子分たちという明白な事実がある。




さはさなりながら、その問題のパレスチナがパレスチナに生きていた人々の子孫が少なくともちゃんと住んでるようなパレスチナでなくなっていって、外形的パレスチナが残ったりしては何の意味もない。




ということで、ぶっちゃけていえばパレスチナ人は実はほんとに土俵際に追い詰められていた。

ノーマン・フィンケルスタインが出て来てさめざめと語っていたけど、彼自身、40年を費やしてこの問題と格闘してきたが、最近これはもう諦めるしかないんだなと思い定めていたと言っていた。

Here’s What You NEED To Know About Gaza’s History w/ Norman Finkelstein  

だから、この青空囚人キャンプとなったガザから、ハマスだろうがなんだろうが出て来て行動することを自分は咎められないという。

咎められないどころか、この動画はJimmy Doreというコメディアンの人のサイトに載ったもので、同サイトにはこの件について何本も動画があげられているが、ここに出て来ているおっちゃんたちは、まぁそりゃそうだなと受け入れていた。今だけ見りゃハマスが悪いと言いたくなるだろうが、状況みろよって話しだとぶっちゃけてる。

ハマスどころじゃないだろう、シリアやリビアでアルカイダを養成して、首切り過激派を養成して、ウクライナにはバンデラ・ナチを送り込み、こっちはこっちで過激な反イスラムを主張するハマスだぜ、今回俺がハマスならもっと上手くやる、とか言ってる人もいたりして、いやもう、吹っ切れてるアメ人はいる。


■ 蘇った二国家解決

というわけで、ロシア、中国、イスラム諸国などなどが、

民間人をターゲットにした包囲殲滅戦など許されるものではなく、
唯一の解決策は二国家解決です、

という路線で並んだ。

そして、最も大きいのは、もちろん力技(戦力計算)の問題では、イランが活発で強く、地域への目配りから考えてロシアが積極的であることがとてもとても大きいのだが、サウジアラビアがこっちのキャンプにいることでしょう。

アメリカの中東政策にとっては、サウジとイスラエルを和解させてこの3つで中東を仕切るってのが夢。だからこの政策を「イスラエルとの関係正常化」というタグを付けて語った。

しかしそれは、サウジにアラブ諸国を裏切らせ、パレスチナを見捨てさせることではある。

こうなっている状況に、ビッグ・プレーヤーのサウジがもしここに入ったら、もうパレスチナは終わりだ、誰も救ってくれないだろう、という局面だったわけです。





冷静に考えてみれば、そりゃあんた、いつか崩壊する話しだったんじゃないのかという気もするが。

また、パレスチナの人たちの苦境の中に入る話しではあるけど、このままイスラエルの力が強いままで、外部監視ができない状況が続けば、エルサレムのアル=アクサー・モスクが壊されるというリスクは相応に非常に高くなるだろうという点も、サウジアラビア他のイスラム諸国の旗幟を鮮明にさせる一因となったでしょう。事は歴史とイスラム世界全体の問題ですから。この件はまた別途書くかもしれない。


いつの間にか、というか巧妙に問題が逸れて行っていた二国家解決は、今後の実行が難しいものであるとはいえ、人々の認識の中に戻ったと言っていいでしょう。

どうやって隠していったかといえば、対テロ戦争の語り口で消していったんでしょうね。イスラムといえばテロリスト、パレスチナ人はテロリスト、パレスチナ支援なんていうやつは左翼、みたいなことがさんざん言われてきたもの。パレスチナを支援すると反ユダヤ主義ってバージョンもあった。

実際、その中には本当だという部分もあるでしょう。しかし、事態を切り分けずに使われるそれらのスローガンめいたトークには要注意ですね。(私こそ、ハマスをテロリストとなじることが何度もあったが)

例えばこんなの。

消していった、と過去形ではなく、これは10月13日付けの日経にあったものなので、現在進行形でまだ、対立は「ハマス vs イスラエル」であるようだ。





■ 感想

で、今後どうなるのか。70年もほったらかしにしてきたものなので、とても大変だとは思う。また、イスラエルの現政権とかアメの中のいくばくかの人たちは(勝手に作った)宗教的文脈でイスラエルとかユダヤ人を見ているので、何をしでかすかわからない、という危険性はある。

だがしかし、だがしかしですよ。青空囚人キャンプと特定の人々の殲滅を狙う国家とそれを支援する超大国という長く続く異常な事態が衆人環視の下に晒されるのは、事態の可視化としては何十年かぶりで、みんながいっせいに見てるという意味では今回が初めてではなかろうか。

ガザの解放を願いつつ、今後の成り行きに注目しましょう。


■ オマケ1

プーチンは昨日からエンジン全開みたいな感じで、昨日は下記の首脳と話し、その上でネタニヤフに電話して状況を伝えた模様。現在は、さっき中国についたばかり。

 


■ オマケ2

パレスチナ問題に関しては、私は、エジプトを親米にしてソ連を引き揚げさせたことで、パレスチナの後ろ盾を壊した。そこから、こんな意地糞の悪い、胸糞の悪い組み合わせになっていると考えている。

イスラム過激派を本格的に使い始めるのがこの後で、現在はそのイスラム過激派というものが自然発生の産物ではないとの認識が広まるところまで来た。その間に生まれた憎しみの連鎖は本当だとしても、ハンドラーたちの認識操作に負けてばかりでもない時代が来たかも、など思う。

■ オマケ3

ガザのドローン映像

 



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4 コメント

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Human Animals (セコイアの娘)
2023-10-18 07:38:12
イスラエル要人の発言、これも忘れないでください。
国防相、We are fighting human ANIMALS
動物なんですよ、彼らにとってパレスチナ人は。
私しゃ、ブチ切れましたよ。
イスラエルの有権者は、どうしちゃったのですか。
イスラエルの政治家でも、ちょっとはマシな奴は殺されちゃうんですよ。ラビンみたいに。
いつの間にかネタニアフの独壇場になって、おかしくなった。大体、この男、二年前に汚職でやっと失脚してくれた、ヤレヤレと思っていたら、いつの間にか復活してるじゃありませんか。
アメリカでも明らかに同情はパレスチナ側に集まっていて、ハーバード大の学生組織がいち早くイスラエル非難の声明を発表、おぉ、やるじゃんと思っていたら、企業側から「お前ら、雇ってやらないからな」の一声で、あえなく転向。ただ、圧力で言論を封じ込めることはできても、反感は、心の中で燻り続ける。だって、どう考えたって、悪いのはイスラエルでしょ。
今回だって、イスラエルは知っていたはず。知っていてやらせた。イスラエルの筋書き通りだった、途中までは、ってことでしょ。
Unknown (ローレライ)
2023-10-18 13:10:12
サウジ国旗掲揚のガザはパレスチナのドンバスと言えてる!ムハンマドがプーチン式に、併合すれば良いのですが!
ドンバス (ブログ主Takumi)
2023-10-18 14:47:50
ローレライさん

ドンバスと一緒ですよね。

おっしゃる通り、アラブの上の方の問題。で、西側は今までなめてたけど、今後も同じようにできるか、雲行きが怪しくなってきた。
アメリカの先行きが・・・ (ブログ主Takumi)
2023-10-18 14:53:43
セコイアの娘さん、

学生がイスラエルの集団懲罰当然だの姿勢に反発を覚えるのはまったく当然ですが、圧力が来て、それがまた偉く強い。

で、この状況は西側全体で共通してますが、アメリカがとても顕著だと思うわけですよ。

左と右にそれぞれ究極的にイスラエル支援となるような仕掛けがあるから。

欧州と日本はそこまでイスラエルに入れ込む人はいない。

(日本の場合はアラブの石油という強い要因があるから経済界がまず親イスラエルになれない、欧州の場合はクリスチャン・シオニストの浸透度が米ほど高くない)

結果、アメリカがものの考え方として孤立していく可能性もあるんだな、と思ったりしてます。どうするんだろう?

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