ちょっと忙しくて先週は書けなかった。いやしかしこの2週間のいろいろは、小さな地震じゃなくて、構造的変化に至るものばかりで面白い時代に立ち会っているとつくづく思う。
そして、後述するように、この無様な「アメリカ覇権」なる不自由極まりない体制の中でどれだけ有意の人々が苦難を強いられたかと思うと悔しく思う。もっと、こうでない80年はあり得た。
とはいえ、まぁ歴史はそのようなものと思って変化を楽しむのが吉であろうと思う。そして、「歴史の終わり」とか言い出したあの恥ずべき日本人の言説は偶然の産物ではないと思うので、日本の今後にとってのああなってはいけない最終ラインとして再考されるべきではないかとも思う。面倒くさい仕事だが。
■ 3月22日
というわけで、2週間前に予想した通り、3月20日からの習近平氏のモスクワ訪問は大きな出来事だった。
モスクワに到着し、クレムリンでプーチンに挨拶して、翌日、正式にクレムリンで2人が会って、
President Putin Receives Xi Jinping In The Kremlin Palace pic.twitter.com/3DOdccfqAb
— RT (@RT_com) March 21, 2023
その間、習近平氏に同行していた多人数の中国側の閣僚レベルの人たちとロシア側の人たちとのセッションがあって、最終的に、21日にプーチン大統領と習近平主席が「中華人民共和国とロシア連邦による新時代の全面的戦略協力パートナーシップ深化に関する共同声明」と「中華人民共和国主席とロシア連邦大統領による2030年までの中ロ経済協力重点方向発展計画に関する共同声明」に署名した。
新華社に2人の写真が出てるけど、
それよりなにより、ネット上で出回ったこの写真が非常によいと思う。
狭い意味の同盟関係を締結したのではないけど、全面的に協力すると言ってるわけだから、大型の熊同盟には違いないわけですよ。そうであれば、そりゃもう、アメリカとその子分たちにとってはやりにくいことこの上ない。
そうこうしているうちに、ロシア方面からはこのような絵が流れてきた。寓話の挿絵みたいだね。「3月の熊同盟」とかいうタイトルはどうだろう。
この寓話の挿絵がなかなか凝っていて、アメリカ国旗の前の老いた鳥が点滴をしてたり、くちばしの先のところにある小さな▲は、拡大してみるとあのへんな目玉が入っていたりする。壁には「$」の絵がかかってる。
籠の中の子豚はウクライナだろうね(そういう面白い動画が流行ってる)。
そして、習近平氏は3月22日、帰国の途に就く前に大変意味深なことを言った。
習:「100年間起こらなかった変化が来てるんだよ。そして私たちはこの変化を推進してる」
プーチン:同意するよ
Xi Jinping: Change is coming that hasn't happened in 100 years. And we are driving this change together.
— Russians With Attitude (@RWApodcast) March 21, 2023
Putin: I agree.
Xi Jinping: Please, take care, dear friend.
Putin: Have a safe journey! pic.twitter.com/eYdKFkl2PL
21日の中露トップの会見のクレムリンのスクリプトはここ。
Press statements by President of Russia and President of China
■ 中東方面
熊同盟が楽しい時間を過ごすすぐ前には、サウジとイランが中国の仲介で仲直りをする、というニュースが駆け巡っていた。仲直りというより、敵対関係を解消していく枠組みを作ってるというべき事態だから、もっと大変なわけですが。
イランとサウジアラビア、外交正常化で合意 中国が仲介
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR10C3F0Q3A310C2000000/
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR10C3F0Q3A310C2000000/
その後も、この2国の関係改善への取り組みに関するニュースは続いている。
サウジ国王が、イラン大統領を自国に招待
中国とサウジが初の人民元建て融資協力実施 もたらす影響とは?
そして、ついには、サウジアラビアが上海条約機構への参加を希望し始めた。
サウジ、上海協力機構への参加を閣議了承 中国との関係強化
上海協力機構には、既にイランが入ってるので、両方に懸案があれば、この機構内で話し合える、とも言える。
さらに、サウジアラビアとシリアが関係正常化を模索してる。
サウジとシリア、関係正常化で合意に近づく ロシアが仲介
https://jp.wsj.com/articles/saudi-arabia-syria-close-to-resuming-ties-in-russia-brokered-talks-e402249a
https://jp.wsj.com/articles/saudi-arabia-syria-close-to-resuming-ties-in-russia-brokered-talks-e402249a
2週間前に、シリア動乱でロシアが勝った意味は莫大に大きいと書いたけど、その帰結が現在実現化しているとも言えるでしょう。
金融危機、フランス大混乱、アサド大統領モスクワ訪問とシリア動乱振り返り
結果的に、サウジアラビアが西側のゲームのプレーヤーじゃなくなってる。
アサド大統領夫妻は最近UAEを訪問し、同国のナヒヤーン家のムハンマド大統領は、「シリア人がアラブの家族に戻る時です」 と言っていた。
"it is time for the Syrians to return to their Arab family", says the UAE President HH Sheikh Mohamed bin Zayed Al Nahyan. 🇸🇾❤️🇦🇪 pic.twitter.com/aADswB8Emo
— Kevork Almassian🇸🇾🇦🇲 (@KevorkAlmassian) March 20, 2023
■ アメリカの中東戦略、壊れました
で、これはつまり、30年か50年か知りませんが、長々とアメリカが取ってきた中東戦略が、上手くいかなくなりましたというお話し。
特に、イランを悪者にして、サウジとイスラエルを仲良しにするというアメリカのどちらかといえば共和党が取ってた路線は破産ですね。
これにより、最終的にイランを潰し、アフガニスタンも潰し、いわゆる中央アジアを支配して、もってロシアを解体する、みたいな「願望」は妄想に終わった。
なんかこれ、ソ連を崩して、将来アメリカと決戦を迎えるのだとかいう妄想を恥ずかし気もなく披歴していた石原莞爾を思い出させる。いわゆるネオコンと石原莞爾は思想兄弟だなとしばしば思う。
そして、生まれた結果がこれですよ。この南北回廊のインパクトは歴史的。
ロシアが、この回廊を通じてアラビア海関係者になってますがな、という仕上がりだし、逆にはインドと中央アジアがイランを介してより密接になる。
前にも書いたけど、ヨーロッパ人がアジア(特に西半分のアジア)に対するヨーロッパの優位性を保つためにはロシアを仲間にすることが是が非でも必要だったわけですよ。にもかかわらず、巨人を取って食いたがる馬鹿な欲求がそれを阻んだ。ナポレオン後のフランスの方が今の「アメリカ覇権」プロジェクト関係者より利口だったな、と思ったりする。
■ 正統DS問題:文化自由会議
そんなこんなで、歴史的な展開が続くわけですが、そうであるならばこそ、どうして今現在の私たちは何か著しくおかしな「アメリカ覇権」の中にいるわけ?と考える人がいるのは理の当然、情の必然。
そこで、前から書いているように、「正統DS問題」を語る人々が後を絶たない。正統、とくっつけているのは、トランプがわけのわからない妄想を引きずる応援団の妄想を整理することもなく「ディープステートが~」とか言い出したもので、様々な人が様々なDSを思い描く「DSの氾濫」が起こっているから。
それはそれでいいけど、ともあれアメリカの中で昔からほじくられてきたDS問題を私はここで「正統DS問題」と呼んでいる。
世界を苦しめる妄想誘発史観&正統DS問題
で、今回書いておきたいのは、
The Congress for Cultural Freedom (CCF)
日本では「文化自由会議」というらしい。
この団体は、1950年6月26 日に西ベルリンで設立され、された時から反共産主義をかかげ、プロパガンダに勤しむことが使命だった模様。で、それは、CIAの資金で行われていた、と。最盛期には世界35か国で活動してた。
日本のグループは、一説によると最も資金を投下されたグループらしい。
で、どうして1950年なのかというと、その前にソ連が「世界平和評議会」を作って、西側各国の中にソ連との対立を止めようという考えに導かれていく傾向が強くあったらしい。
冷静に考えれば、そりゃそうだろう、という部分はあるわけだよね。つい5年前には同盟者なんだし、大きな戦争が終わったことを歓迎している向きが多い中、好戦的な論調を歓迎しない人も多いでしょう。
そんな中で、1949年には中国共産党が勝っちゃうし、ソ連は原爆持っちゃうしで、危機感を覚えたCIAが各国に反共・反ソを浸透させようと頑張りました、ってことなんでしょう。
それが、60年代にこれらの論調が生まれる背景はCIAが資金提供してることだろう、というのがアメリカの中でバレる。しかし、バレて黙るような人たちではないので、さらに「巧妙に」なっていって、さらに倒錯していったという感じだろうか。
特に有名なのは、イギリスの「Encounter」誌で、初期の編集者に
アーヴィング・クリストルがいる。この人はネオコンの「ゴッドファーザー」と呼ばれている人。
で、はたと気が付くわけだけど、ネオコンといえばトロキストが変容していった集団とかいった説明が広くなされているが、総じていうなら、CIAの対ソ工作員集団のうちの一部のことだと思う。
ただ、確かに一部東欧グループに著しい民族的な偏りが見られるので、言ってみるならば、そこの集団は「CIAの対ソ工作員集団のうちのロシア帝国周辺ユダヤ系グループ」とでも呼ぶ方が適切なのでは?
本当はもっと前からアメリカとイギリス、ドイツあたりにまたがる「エリート」グループがこのへんを使ってるが、1945年以降のアメリカの強大さがなければそれは廃れていたはずなので、CIAを頭に付けておくことには一定の合理性があると思う。
ノードストリーム爆破の余波拡大&アメリカID問題
そもそも、今ウクライナで騒いでいる、ウクライナから逃れた人々もまたCIAがなければ存在していない。再々書いているようにそもそもナチ残党で、だったら1945年に終わりになるかと思えばならず、1950年代になってもソ連領内で紛争を起こすほどの力があって、その支えになっていたのはCIA。さらに、自分で引き起こした紛争の結果ソ連に壊滅的な打撃を与えられるのだが、今度はその何万人もの人たちをCIAがアメリカ、カナダに逃した。
同じころ、日本では、最近にわかに活気ある話題となった「壺」に至るグループが形成される。だがしかし、他方で、「文化自由会議」関連は、社会党右派を母体として、後に民社党になる人たちが中心っぽい。
つまり、これは私が前にほじくっていた、なにかおかしい、左翼でない左側の形成に繋がるんじゃないかと思う。ソ連との共存とか戦争反対といったテーマを退けるために当時西側世界に広く存在していた左翼を変質させていった工作というわけでしょう。
で、まぁ、こういう隠された動きが可能なのは、もちろん、アメリカ覇権体制とでも呼びたいこの体制が、表の顔である民主主義などによっては動作していないからですね。先に、誰が決めたのか知れたものではない結論ありきで人々を扇動していく形式だもの。
そして、戦犯だろうが、ヤクザだろうが、精神病みたいなヘイトに凝り固まった集団だろうが、金にあかせてなんだって「仲間」にしてきて、バレそうになるとまた嘘をついて話しを作っていく。この繰り返しによって、現在みるようなカオスな西側世界の精神世界が形成されたと言っていいでしょう。
もちろん、アジア南部や中東で「活躍」するイスラム過激派も同じリーグなのだろうと思うな。ただ、この「世話人」はむしろヨーロッパの側にいるんじゃないかと思うけど。
というわけで、今週もまたまとめられないけど、ますます、「正統DS問題」を整理する必要性が増大していることが確認される今日この頃といったところ。
RTのTwitterに映っているロシアの衛兵、バレエのくるみ割人形かと思った。
立ち姿、身のこなし、制服、身長のバランス
、全てが美しい。どこぞのへっぽこバレエ団のくるみ割人形よりはるかに美しい。
しかも、何ですか?この首の動き!