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NATO東方拡大:ゴルバチョフはマジで約束されていた

2017-12-15 18:07:35 | 欧州情勢複雑怪奇

今更の話ではあるけど、冷戦後のNATO東方拡大はない、とゴルバチョフは確かに西側首脳らから約束されていたのだ、という件の詳細な研究がアメリカの研究所から出てきたそうだ。

Gorbachev WAS promised NATO would not expand east – declassified docs 

https://www.rt.com/news/413029-nato-gorbachev-expansion-promises/

研究所は、ジョージワシントン大学の系列のナショナル・セキュリティー・アーカイブということろ。当該の記事はこれ。

NATO Expansion: What Gorbachev Heard

https://nsarchive.gwu.edu/briefing-book/russia-programs/2017-12-12/nato-expansion-what-gorbachev-heard-western-leaders-early

で、これらを明確に証拠づけるために重要な文書は30あって、そのうちのいくつかは過去数年利用可能になっており、他のものは研究のために情報公開請求をして明らかになったものである由。

 

ソ連軍が東ドイツから撤退し、かつ、ワルシャワ条約機構を解体するというのは、冷戦を終わらせるにあたってのある種のハイライトの部分なわけだけど、ソ連からしたら、かつて大規模に侵略されたことに対するカウンターとして軍を置いているわけだから、それを解体するとなったら不安が残る。

そこで、西側は要するにソビエトのゴルバチョフ、シュワルナゼを騙して東西ドイツを統一させても、NATOという軍事同盟を東方に進めるようなことはしませんよ、と約束したわけ。

研究で明らかになった、というより言われて続けて来たことの文書的な証明がついたのは、

  • 1990年、米、英、仏とソビエトがドイツ東西の統合を話し合う中で、ソビエトはまたドイツが攻めてくる恰好になることを恐れていた。
  • 2月、ジョージ・HW・ブッシュの国務長官だったジェームズ・ベイカーは、ソビエトの外相シュワルナゼに対し、冷戦後のヨーロッパでNATOはもう交戦するような組織ではなく、もっと政治的なものになるから独立的な能力は不要になる、と安心させる。
  • ベイカーは、シュワルナゼに、「NATOの範囲または戦力は東には動かないという厳格な(iron-clad)保証」を約束した。
  • そして、同日、モスクワで、ゴルバチョフに対してあの有名な一言が来る。この同盟(NATO)は「東には1インチ」も動かないという、それ。
  • 1990年2月、ドイツのヘルムート・コールも、同じことをゴルバチョフに語る。
  • ブッシュ大統領は、チェコスロバキアのハヴェル大統領に、ゴルバチョフが自分とフランクに話した問題でチェコスロバキアやその他の国について、問題を複雑にするようなことはないからとゴルバチョフに伝えてくれ、と言った。
  • フランスのミッテラン大統領は、統一ドイツがNATOに加わるということ自体に反対だった。

 

ところが、1994年ごろから東欧諸国との「平和のためのパートナーシップ」なるものが開始され、それを受けて、1997年に米議会に拡大案が提示され、冷戦の仕組みを作ったジョージ・ケナンは大反対をするものの、1998年には上院を通ってしまう。

以降、1999年にポーランド、チェコ、ハンガリーがNATO入り。その後、2004年、2009年に拡大。いわゆる衛星国でないソ連だった部分(ウクライナ、ベラルーシ)にまで手を伸ばそうとして、ウクライナの混乱が発生したということ。

ゴルバチョフやプーチンのみならず、他のアメリカ人研究者や、当時の駐ソビエト米国大使、英国大使も、約束があったのに西側は破ったと語っているのだが、西側はそれを認めず、そんなものはないと言いふらしているのが現状。

 

で、この間に、ユーゴを解体し、これらの東欧諸国の中には、セルビアを空爆する理由は自分たちにはにないと表明した国もあったが、そのまま引きずられ、さらに911が来て、これまで恨みなどあったとも聞かないアフガニスタン人を殺す役割を担わされ、さらにはイラク人だのリビア人だのの殺傷にも手を貸すはめとなったという顛末ですね。

よく考えれば、これって、911で始めようとしていた米の世界戦争のための兵隊が足らないので、東欧の馬鹿どもを使えばいいんだなと考えた、っていう成り行きのように見えますね。今となっては。

そして、現在の日本の安保法制なるものの正体も、まぁこんなところでしょう。

しかし、リアリストからすれば、ロシアと戦争をする体制に持ち込むことの危険性を前にすれば、東欧から何万かの兵隊をかき集めたところで、まったく釣り合わない、となる。ウクライナの騒ぎの頃アメリカ人たちが言っていたのは、ルーマニアだのバルト三国を入れてロシアと対峙するようになることが、安全保障に寄与するなどと、なんという愚かな考えだ、ということ。

このことは、極東にも言えますね。日本人をかき集めていかにも強そうというより金持ちそうな軍隊になったとしても、中国+ロシアと軍事対決するような恰好を作ることのどこが安全保障に資するのか、と。

 

東方拡大問題は、ウクライナ危機の頃さんざん書いた話ですね。

ウクライナ動乱:NATO東方拡大問題(1)

思えば、ウクライナでの騒ぎのとっぱじめから、ソ連終了時のアメリカとイギリスの大使が西側の態度を批判しまくりだったことを考えれば、ウクライナを仕掛けた人々が英米の正常な人々から見て、どれだけ困った人々だったかがわかるというもの。

そして、彼らを信じるという行為がどれほど馬鹿げているのかは、プーチンが身をもって、ロシアの恥をさらしながら訴えているところでもありますね。

習:新時代だよ、プーチン:米を信じすぎたことが最大の誤り

恥をかいているのは、実はドイツなんだという点が、来年のお楽しみというか、不安材料だなとも思う。

 

■ 補足

30の文書のサマリーをEric Zuesseが書いていた。20世紀最大の詐欺事件は今や歴史的事実となった、とは彼の弁。

How the US swindled Russia
Due to a historic data-dump on December 10th, the biggest swindle that occurred in the 20th Century (or perhaps ever) is now proven as a historical fact.

by Eric Zuesse Eric Zuesse
December 24, 2017, 16:26
http://theduran.com/how-the-us-swindled-russia/

 

■ 関連記事

NATO東方拡大の20年後

ハンガリー:ウクライナのNATO加盟ゴールは支持できない

 

■ 後追い

For example, on February 6, 1990, when the former West German foreign minister, Hans-Dietrich Genscher, met with then-British Foreign Minister Douglas Hurd, Genscher told Hurd that “The Russians must have some assurance that if, for example, the Polish Government left the Warsaw Pact one day, they would not join NATO the next.”

These assurances were made by the former US secretary of state, James Baker, to the former Soviet foreign minister, Eduard Shevardnadze, in February 1990, when Baker noted that before Germany could reunify, “There would, of course, have to be iron-clad guarantees that NATO’s jurisdiction or forces would not move eastward.”

These assurances were given, only to be violated during the administration of President Bill Clinton. Today, over 4,500 US troops are stationed on Polish soil, including a reinforced battalion-sized ‘battlegroup’ stationed along the so-called Suwalki Gap separating Poland from the Baltic nations.

https://www.lewrockwell.com/2020/05/no_author/us-nukes-in-poland-would-not-be-a-deterrent-but-a-massive-provocation-for-russia/


■ オマケ

NATOは東に拡大しないとドイツと報じられた動画。

https://twitter.com/i/status/1496500526476931076

 


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3 コメント

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『バルバロッサ作戦を裏口から引き継いだNATO』 (ローレライ)
2017-12-15 19:10:20
『バルバロッサ作戦を裏口から引き継いだNATO』と言う話で『仏独は歴史の教訓を忘れさせられた』と言う所。
返信する
馬鹿どもではなく,初心ども (И.Симомура)
2017-12-15 23:37:23
小生は四半世紀東欧の国の市民として暮らしていますが,東欧人を馬鹿だと思ったことは一度もありません.ブログ主さんに「馬鹿ども」と見えた方々は,おそらく所謂東欧革命を担った集団から生まれたプロパガンダ機関ー多くは猶*系資金で作られたマスメディアと宗教組織ーによって誤誘導された,単なる”初心なものども”のことではないかな.それなら私もそうだった.ついこの間まで,社会主義政府に反対する市民運動にその創立の淵源をもつ,ある新聞社の論説を真だと信じていた.日本の主流マスメディアの主張もそうだったし.この新聞社の編集長は猶*系で,チェコスロヴァキアのドゥプチェク氏のように,身を挺して体制に戦いを挑んだ勇者だったし.しかしある時,旧社会主義政権のプロパガンダ省元長官だった男の立ち上げた赤雑誌社が,現政権(なんと旧社会主義政党を母体とするのに,親アメリカなのだ)のツルウとの秘密協定を暴露してしまった.ある種の内部告発だ.風光明媚な田舎の旧貴族別邸に某国情報機関運営の”過酷尋問アジト”である疑いが浮かび上がったのだ.驚いたことに,私が信頼していたこの知性派新聞は沈黙していた.あの情報機関長官氏は猶*系だし,商業主義の暴露雑誌のことだからとして,市民の側も記事をあまり信用しようとはしなかった.数年が経ち,”マイダン市民革命”が起こった.これは市民革命などではない.予てより準備してきた,第五列による国家転覆行動であり,ここが策源地だ.猶*民族が最も嫌悪し恐怖するナチズムが公然と姿を晒したのだが,それでも尚この新聞社は反露,親マイダン革命支持の論説を張っていた.クリミア・ロシア復帰のときなど,CCCP帝国の復活だなどと書き立てていた(私は復活して何が悪いと思うが).ボスニアがセルビアから国民投票で分離したのを賞賛したのに,クリミアがそうすると”復帰”ではなく”併合”となるのだった.ドンバス紛争にしても,大量の難民発生とは報道するも,難民の避難先がロシアであることを隠すのだ.私は異邦人であるからこそ,東欧市民の,それも知性派市民の自国プロパガンダ機関による洗脳されぶりが目につくのかな.
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「マグリブの奴隷農場から西欧のそれに置き換えられた東欧」 (海坊主)
2017-12-19 07:04:48
ものすごく重要な情報と感じます。

ちょうどブッシュパパからクリントンに、共和党政権から民主党政権に転換する時期に当たりますね。冷戦終了後の混乱期に米国を中心とする西側世界もポスト冷戦に向けてパラダイムシフトが生じていたのでしょう。

故ミロシェビッチの無罪判決にも驚きましたが、こうして真実が少しずつ伝えられる事をどう理解すれば良いか悩ましいところです。隠された真実が持つ本来の価値が失われた、つまり役目を終えたから流された、と言うことも出来そうです。
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