2025年度版 渡辺松男研究2の8(2018年1月実施)
『泡宇宙の蛙』(1999年)【百年】P40~
参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉真帆 司会と記録:鹿取未放
54 膨れあがりくる椎の瘤ずきずきと時間が外へ出たがりている
(後日意見)
53番歌(圧しゆがめられたるさまに椎の木の瘤はあるなり一つ目の瘤)の続きで、「圧しゆがめられ」た異形の椎の瘤を詠む。時間の堆積によって木からはみ出してぐにゃりと曲がった瘤、それは時間が外に出たがって膨れあがってくるのだ。「ずきずき」という痛みを伴う体感のオノマトペで椎の瘤の切実さを出している。
「体制に身動きのとれない我身」というように人間に引きつけて狭く限定しないで、樹木そのもののキモチを読む方が歌としてずっと面白いと思う。(鹿取)
(レポート)
「ずきずきと」が主観的に詠まれており、この一首を印象強くしているだろう。53首目で「圧しゆがめられ」と詠み、次いでこの一首は瘤に堆積した時間が外へ出たがっているという。椎の木の瘤を見つつ、体制に身動きのとれない我身をかさね、椎の木のこころと同化しているようだ。(真帆)
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