かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  348

2021-11-01 14:08:44 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究42(2016年9月実施)『寒気氾濫』(1997年)
    【明快なる樹々】P143~
     参加者:M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木 良明     司会と記録:鹿取 未放


348 あこがれのはやぶさを見しばかりにて鐘なるごとき冬空の紺

      (レポート)
 隼はタカ目ハヤブサ科の猛禽類。飛翔しながら小鳥などの狩りをするが、急降下時の速度は一説によると時速390キロに及ぶという。巣をつくらず、断崖の窪みなどに卵を産み、生息数は減少しているので、普段目にすることも少なく、隼は「あこがれ」の存在なのだ。その隼が冬空の中に飛翔する姿を偶然目にしたために、鐘の音と冬空の紺色の響き合った「鐘なるごとき冬空の紺」が、強く印象に残ったのだ。(鈴木)


     (当日意見)
★あこがれのハヤブサを見た喜びが「鐘なるごとき冬空の紺」によく表れている。鈴木さんが「鐘
 の音と冬空の紺色の響き合った」と解釈されているところがよいと思う。(慧子)
★「鐘なるごとき」はウエディングベルのような幸せ感を表していらっしゃるのかな。(M・S)
★鈴木さんはどんな鐘を連想されましたか?(鹿取)
★それが分かりにくかったです。ゴーンではなくてコーンという澄んだ音、冬空の紺と掛けている
 のかなと。(鈴木)
★子規の句の「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」ってあるけど、子規の句ではお寺の鐘の音ですよね。
 この歌では鳴ったといっている訳ではないけど、鐘の音の厳かな感じとか爽快感とかをはやぶさ
 を見た一瞬の感動に重ねている。そしてそれが深い冬空の紺色にも通じると。(鹿取)
★具体的にお寺とか教会とかの鐘というのではなくてはやぶさのスピード感を出している。(鈴木)
★佐藤佐太郎さんに夕焼けが轟くごとくという歌があるんですが、景を音で例える修辞法というの
 がある。(慧子)
★佐太郎には聴覚の歌が多いですよね。佐太郎の歌を読むと耳の良い人なんだろうなといつも思い
 ます。(鹿取)
★音と色彩を合わせた、紺には何か音があるような気がする。(鈴木)
★この間鑑賞した歌にも凧がそれぞれの紺色の空にあるというのがありましたね。(鹿取)


      (まとめ)(鹿取)
 当日意見の「夕焼けが轟くごとくという歌」(慧子)は正確にはこの歌。
   はなやかに轟くごとき夕焼けはしばらくすれば遠くなりたり『歩道』
鹿取の「凧がそれぞれの紺色の空にある」は次の歌。
  それぞれにそれぞれの空のあるごとく紺の高みにしずまれる凧


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