かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  364

2021-12-01 17:31:54 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究44(2016年12月実施)『寒気氾濫』(1997年)
    【半眼】P148~
     参加者:泉真帆、M・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部 慧子    司会と記録:鹿取 未放


364 椎の木の匂える影に踏み入りて木の内側に一歩近づく

     (レポート)
 椎の木があってその木の影とともに香りがある。そんなところへ踏み入りて、木の内側に近づくと言う。その近づき方を漠然と捉えず、「一歩」としていることが細やかだ。同時に立派なものへの、畏れ、つつましさ、の表れであろう。薫陶を受けるという言葉があるように、木の立派さがその匂いや影ににじんでいて近づくと、それと知らず影響を受けるのだろう。(慧子)


     (当日意見)
★椎の木が匂っている、その椎の木の内側が影なんだという捉え方がユニーク。陽が当たって
 いる方ではなく、木からしみ出ている内面が影かなと思って。一歩近づくというのがレポー
 ターとは違って、私はちょっと近づくくらいの、あまり意味がない感じ、具体的な一歩とい
 うよりも少し近づいたという感覚かなと。(真帆)
★私も一歩というのは真帆さんと同じ捉え方です。(M・S)
★影については、単純に木の影だと思うのですが。その影に入ると椎の木の匂いが感じられる距離
 になる。そしてそれは木の内側に一歩近づいたことでもある。
 レポートの「木の立派さ」というところに少しひっかかります。立派というのは歌のどこから導
 かれた解釈なんだろう。柿の木は立派でなく、椎の木は立派というような区別なんだろうか?
 それとも人間は立派でないけれど木はみんな立派っていう解釈なのか?作者は木の種類によっ
 て優劣は付けていないようだし。作者は木に憧れてはいるけど、人間一般と木を比べて優劣を言
 ってはいないと思うけど。(鹿取)
★薫陶を受けるという言葉がありますよね、傍にいるだけで良い影響を受けるような、この木もそ
 んなようで、立派としました。椎の木は花時以外匂わないんだけど、それを匂うと表現するから
 には大きくて立派な木なんだろう、いいものなんだろうと思ったのです。影とまで言っているの
 ですから。何かと比べてということではありません。(慧子)

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