かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞

2022-10-02 12:20:17 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の18(2018年12月実施)
     Ⅲ〈錬金術師〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P93~
     参加者:泉真帆、M・I、岡東和子、A・K、T・S、曽我亮子、
         渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子   司会と記録:鹿取未放


140 いかがわしき錬金術師の見し夢に父をおもえり父の人生

    (レポート)
 いかがわしき錬金術師の夢の中に父の人生を思ってはめ込んで思ってみる。ちなみにこの錬金術とは「鉄、鉛、銅などの卑金属から金・銀などの貴金属を製造しようとする秘術」(小学館「国語大辞典」)さらに「不老長寿の薬や万能薬を作ろうとする術にもわたり、近代科学成立以前の原始的な化学技術全般をもさす。古代エジプトの冶金術に起源をもつといわれ、ヨーロッパ、アラビアに伝わった。」小学館「国語大辞典」)
 これらから思うに父の人生をやや前近代的にとらえているのかもしれない。しかし、息子として、それをあからさまに言わず、誰かの夢の中にはめ込んでみるという面白い構成。(慧子)


     (当日意見)
★偽物を作るようなインチキな人をいかがわしきと言っている。そういう人が見た夢、思い
 描いたことをお父さんも同じようにしているんじゃ無いかと。軽蔑というのか、一歩引い
 て批判的に見ている。(T・S)
★「いかがわしき錬金術師の見し夢に」のところ、どういうことなのかなと。錬金術師が見
 た夢の中なんですよね?作者が「いかがわしき錬金術師」の夢を見たのでは無く。錬金術
 師がお父さんの夢を見るってことは無いですよね。(A・K)
★錬金術師が見た夢と同じような夢をお父さんが見ているってことじゃないですか。
   (T・S)
★そうですね。昔、錬金術師というのがいた。そして錬金術が成功して一攫千金の夢を見て
 いた。同じように、父も事業を拡大させて成功者になることを夢見ていたように思える。
 そういう父の人生だったと。実際は、いろいろ失敗して事業もそう順調では無かったのか
 もそれませんね。だからお父さんが錬金術師のようにいかがわしいことをしているという
 意味では無いと思います。(鹿取)
★わかりました、わかりました。夢の取り方を私、間違えていました。(A・K)

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