かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 1の47

2020-07-03 17:18:58 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究 5(13年5月) 『寒気氾濫』(1997年)橋として
          参加者:崎尾廣子、鈴木良明、渡部慧子、鹿取未放
          レポーター  鈴木良明
          司会とまとめ  鹿取 未放


47 組織へとひっそりと沈みはじめしがぬらぬらとやがて見えなくなりぬ

          (レポート)
 組織とは、作者の所属する地方自治体を含む国・社会全体の構造のことだろう。霞が関に出張したあと再び日常の仕事に戻り、それまでの昂ぶりも徐々に鎮まって、国・社会全体の構造のなかにひっそりと呑み込まれてゆく自分の姿を、身体的な感覚と外からの描写とによって生々しく詠う。まるで水没していくかのように、下半身から徐々に沈みはじめ、胴、胸、最後に残った顔が水面から消えてすっかり埋没し、姿が見えなくなったのである。(鈴木)

      (意見)
★「ぬらぬらとやがて見えなくなりぬ」、よほど嫌な感じなんでしょうね。(慧子)
★私は権力志向のある人とか出世したい人とかを見て詠んだのだと思います。組織
 べったりの他人のこと。組織に忠誠で個というものをなくしていって、やがて組
 織そのものと一体化してしまった、そういう人。一人ではないのだと思います。
 それを見ている気味悪さ。(鹿取)
★敵から逃げるために自ら泥の中に沈んでいくという映画があったけど、そんなイ
 メージ。上の句は体感で、見えなくなるのも自分を外側から見ている。こういう
 歌い方は渡辺さんによくある。これが他人が沈んでいく場面だと考えると唐突な
 感じがする。(鈴木)
★私も鈴木さんと同じで、こんな風に埋没しなければ組織では生きていけないのか
 なと思う。(崎尾)


コメント
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