かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 364(中欧)

2020-03-07 18:42:34 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠50(2012年3月実施)
   【中欧を行く 秋天】『世紀』(2001年刊)91頁~
   参加者:N・I、K・I、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:崎尾廣子     司会とまとめ:鹿取未放


364 いまの地球救ひうる一人缺けてゐる英雄広場の酸性の雨

        (当日発言)
★なぜ一人なのか?一人だけなのか?(T・H)
★T・Hさんの疑問はもっともで、期待する英雄は一人だけでなくたくさんいてほしいですよね。
 でもまあ、ここは修辞です。たとえば「いまの地球救ひうるあまた缺けてゐる」と言ったら歌に
 ならないでしょう。(鹿取)
★作者はこの旅行の前に『プラハの春』を読んで行ったそうだ。十四体以外に入るべき人がいる
  はずなのに入っていないと言っている。ハンガリー革命の英雄の一人か?(藤本)
★もし藤本さんのいうようにかつてのハンガリー革命の英雄の一人が欠けているということなら
  「いまの地球」という表現にはならないでしょう。また、『プラハの春』は1956年の事件を題
 材にしているので、ハンガリー革命の英雄とは結びつかないと思います。(鹿取)
 

       (まとめ)
 酸性の雨の降るうすら寒い英雄広場に立って、今の地球を救う一人が存在しないことを嘆いている。ここには十四体のかつての英雄が顕彰されているが、今現在の混沌とした世界を救う人物が存在しないと嘆いている辛辣な歌。ちなみに英雄像十四体の内、最後の像は一九四八年にハンガリー革命一〇〇年を記念して入れ替えられたそうだ。その入れ替えられた十四体めが、ハンガリー革命の指導者で亡命しイタリアで客死したコッシュートである。入れ替えられる前は、英雄広場建設当時のハプスブルク皇帝フランツ・ヨーゼフの像であった。(当時ハンガリーは、ハプスブルクとオーストリアとの二重帝国の時代だった。)
 この歌が歌われてから20年ほどが経過した現在、更に世界は昏迷を深め、今の地球を救う一人が存在しない感は深くなる一方だ。(鹿取)


コメント
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