かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 204(中国)

2019-04-02 22:04:50 | 短歌の鑑賞
馬場あき子の旅の歌27(2010年4月実施)
    【飛天の道】『飛天の道』(2000年刊)168頁~
     参加者:K・I、N・I、Y・I、K・T、T・S、
         藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:藤本満須子 司会とまとめ:鹿取 未放


204 砂の街埃の街の入口に吐魯蕃(とるふあん)飯店「民衆」ありき

          (レポート)
 作者のこの旅はあとがきにもあるように、ウルムチ、天池、吐魯蕃から敦煌へとシルクロードを西からたどっている。トルファンは新疆ウイグル自治区にあり中国面積の六分の一、日本の約四倍の面積。東の長安から西の諸国から運ばれてきた文明は、このトルファンを通過することなしに交わることはできない。典型的なオアシス都市。漢の武帝の最前線基地でもあった。宗教も文化も芸術も科学も軍事も、この地を通過して行った。ソ連、モンゴル、アフガニスタン、パキスタン、インドにも国境を接している。(篠山紀信 シルクロード3、中国1 より要約)
 古来、天山山脈南麓東端における交通の要所。盆地で夏は灼熱、別名「火州」といわれる。一二年前のシルクロードの旅、新疆ウイグル自治区は今なお自治区であるが、中国の支配下にあることは違わない。四句めの「とるふあんはんてん」ことばのおもしろさ、何だかユーモアさえ感じるのだが、その店の名前が「民衆」とあるところに作者は矛盾や悲哀を感じたかもしれないと想像する。「ありき」と言い切った結句に作者の思いが詰まっているようにも感じる。(藤本)


      (まとめ)
 ふつう中国で飯店というとホテルを指すのだが、ここは日本流に中国料理のお店だろうか?文字通りホテルだと「吐魯蕃飯店」のみで言い得ているから「民衆」が浮いてしまうような気がするが。 吐魯蕃は新疆ウイグル自治区にあってウイグル族が人口の70パーセント以上を占めるそうだ。自治区ではあるが中国側は新疆省という位置づけで遇している面もあり、漢族との対立も深刻だ。2009年のウイグル騒乱なども耳新しい事件だ。そんな吐魯蕃に中国共産党の支配の名残のような「民衆」という名を見出して複雑な思いに誘われた場面だろう。(鹿取)

コメント
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