かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の137

2019-02-09 18:19:28 | 短歌の鑑賞
  ブログ用渡辺松男研究2の18(2018年12月実施)
     Ⅲ〈錬金術師〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P93~
     参加者:泉真帆、M・I、岡東和子、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


137 どっぷんどっぷん自動車流るおとことしてのみ込めぬものばかり流るる

      (レポート)
 どんぶらこ、どんぶらこ、桃が流れてきた。この昔話を思わせる「どっぷんどっぷん自動車流る」とまずは詠い起こす。桃ならばすくいあげ、いずれは食したかもしれない。それはさておきコンベアーに自動車の部品が流れているであろうを、「のみ込めぬものばかり流るる」という。当時の自動車産業の発展、めまぐるしい資本の動きに違和感があるらしく、昔話桃太郎をなんとなく思わせながら、ユーモラスに仕上げている。が、「おとことして」と断っているのは、実利に走りすぎることの疎ましさがあるのだろう。そして男子たるもの哲学をしないとは如何なものか、そんな気分があるのかもしれない。(慧子)


      (当日意見)
★私「おとことして」という部分がわからないのですが。「人間として」ならまだわかるけど。他
 の方、いかがですか?(鹿取)
★ベルトコンベアーに自動車の部品が回っているのだったら、男だって女だって対応できますよね。
 男だからとか女だからとかいう性で屹立する仕事なんかなくなってきていると思います。男とし
 て立つことのできる仕事なんってないので、飲み込めないものばかりが流れてくる。(A・K)
★では、松男さんは男として立ちたいと思っているってこと?(鹿取)
★そうではなくて、男でも女でも性で屹立する仕事はないと言いたかったのかなと。(A・K)
★男として育てられてきたのに、男を生かす仕事が無い。(真帆)
★渡辺さんってそんなに男、女を問題にするような人では無いと思うのですが。「どっぷんどっぷ
 ん自動車流る」に続いておとことして飲み込めぬって続くのがわからない。(A・K)
★飲み込めぬもの「ばかり」だから、自動車は例よね。他にも飲み込めないものがたくさんあるっ
 てことでしょう。私のイメージとしては、桃太郎の桃は一つだけ川を流れてくるんだけど、この
 自動車はたくさん。「どっぷんどっぷん」だと高速道路のようなスピード感は無いから、やっぱ
 り波間を浮き沈みしながら流れてくるのかしたら?それはごんごん回転する資本主義の一端だと
 思うけど、そんなものを自分は肯えない。ただそこに「おとことして」という条件がついている
 のが、私にはわからない。(鹿取)
★パーツパーツが流れてくるので、それは嫌だ。もっと全体を仕上げたい。(真帆)
★でも、自動車が流れるとは書いてあるけど、部品だとかパーツだとかはどこにも書いてない。
   (鹿取)
★私は道路を走っている自動車っきり想像できなかったのですが。工場などとは思えません。
   (T・S)
★そうすると、津波のようなもの?ちょっと不自然じゃ無いですか?(真帆)
★自動車がまるごと流れてくるって不自然だけど、松男さんの世界だからね。(鹿取)
★自分が歯車になりたくないというのはよくわかるけど陳腐ですよね。大正時代?(A・K)
★チャップリンですね。(鹿取)
★では、高度成長時代の積み重ねとして、それぞれの時代のものが流れてくる?(真帆)
★きっと私の読めない何かがあるのだろうと思います、この歌に。(鹿取)


コメント
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