![]() | あなたが変わるまで、わたしはあきらめない井村 雅代光文社このアイテムの詳細を見る |
この本も、家内が東国原知事と、北島選手の本を図書館から借りてきた本。
せっかくだから…と読んでみました。
結論から申し上げると、「凄い」の一言。
井村コーチは、シンクロナイズドスイミングのコーチとして、「ブレ」が全くない事が分かった。それが「凄い」。
(井村コーチは、この著書でも、コーチに「ブレ」があったら、負けると断言している。)
シンクロの「鬼コーチ」のイメージが定着しているけれど、「ブレ」がないからそう見えるだけ…と感じた。
もっと極端に言えば、「大阪のおばちゃん」と何ら変わりがないなぁ…と。
ただ、シンクロと、学校の教諭の経験がある分だけ、コーチングが凄い…というだけ。
井村コーチも、この著書で述べていますが、考え方が「シンプル イズ ベスト」だなぁ…というのが感じ取れた。
井村コーチが、中国のコーチとして招かれたのも、単に「隣の国が困っている」から、「その手助けに行った」だけ…と。
だから、「日本の技術が中国に奪われる」…という日本からのバッシングもあったけれど、やっぱり「ブレ」がないし、シンプルに考えての行動だと感じた。
あとは、シンクロのコーチとしてメダルを獲得させる…という「目標」をクリアするには、どうすれば良いか…何が必要なのか…という点は、東国原知事や北島選手と、基本は全く同じ。
やっぱり世界レベルで戦っている方は、皆さん「ブレ」がないんでしょうね。
では、どうやってコーチングしているか…。
これも考え方はシンプルで、指導してできるまで待っている…というスタンスを崩さないでいること。
どうしても指導した通りにできない選手に対しては、この著書から引用した、以下の「叱る絶対三点セット」で指導するそうだ。
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だいたい叱るって何なの?…褒めるって、相手のいいところを「いいよ。いいよ」と言うことですよね。じゃあ、叱るは?…相手の悪いところをはっきり指摘することです。
露骨な表現と批判されますけれど、そうしないと、耳に留めてくれへん子がいるんですから、仕方がない。そもそも本当のことを言っているだけですから。
で、本当のことを言ったら、必ず次に直す方法を言わなければいけない。そして、最後にそれでいいのかどうかを伝えなければいけない。この三つが「叱る絶対三点セット」なんです。
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コーチングの一つとして「褒めて育てる」方法もあるけれど、井村コーチは「それはあかん」と。
最後にOKを出すだけなんだとか…。
それに、指導した選手は、今日はできても明日はできない可能性があるし、今日と明日とで、微妙に変わっているので、指導の仕方も、それに合わせるのだとか…。
なかなかできないですよね。
「昨日言った通りにできていないじゃない」って、言っちゃいそうですよね、普通。
でも、「納得」できなければ、昨日と今日とで指導が180度変わることもあるのだとか…。
要するに、井村コーチは人間が好きだから、じ~~っと選手を見ているんですね。
それで、できるまで「待つ」姿勢だから、選手をプールに12時間も入らせることも平気なんでしょう。
「待つ」というのは、相当なエネルギーが必要だけれど、それをちっとも感じさせないのも「凄いなぁ~」と思った。
そんな井村コーチの座右の銘は、以下に引用した「敵は己の妥協にあり」なんだとか。
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わたしは戦っています。選手と戦い、世界と戦っています。でも、最終的には自分と戦っているんです。
一生懸命やってもできない子は「もういいよ」と言いたい時もある。でも、そこで自分に妥協してはいけない。「できてナンボや」と教える。
わたしは本当に人間の力を信じています。人間、求めたら絶対に来る。求められた子どもは絶対に来ます。
だから、自分に妥協するな。自分の可能性を信じて夢を捨てるな。そうすれば、いつか「夢見る夢子さん」で日本がいっぱいになるはずです。
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でも、ここに井村コーチのヒューマニズムのほぼ全てが凝縮されているように思った。
「ブレ」もなければ、「妥協」もしない。
だから、自然と「鬼コーチ」と、周りが言うんでしょうね。
「凄い大阪のおばちゃん」の姿を、この著書を通じて感じ取ることができた。
人間、誰しも可能性はあるし、変われるチャンスがいくらでもあることを、改めて思い知らされた。