CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

高次脳機能障害が後遺障害として認定されない現実

2006-02-28 19:14:29 | リハビリ
知られざる高次脳機能障害―その理解と支援のために

せせらぎ出版

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高次脳機能障害という言葉自体は、以前に比べて格段に広まったと思います。

厚生労働省でさえも、この問題はかなりデリケートな問題である、という認識ができてきたと思われるような政策になっています。

しかし、損害保険等における高次脳機能障害の認定や、裁判における損害賠償等は、目を覆うような状況が、いまだに続いています。

保険については、ややばらつきが出て来た感がありますので、どの会社の保険なら認定されるか、を公表して情報交換しても問題ないのではないかと思って、計画しています。

裁判では、まだまだ判例を重ねる必要があります。特に前頭葉機能障害については、「もともとこのような人ではなかったのか」とその人の「性格」に見える場合が多いようです。性格、積極性、意欲、計画性、などが、事故によっていくら変化しても、家族や知人以外にはわかりません。

客観的な数字を示せ、と加害者や保険会社側は言いますが、この分野は、まだ容易に数字が出せるものではありません。数字にならないから症状がない、ということを主張されますと、自分や家族がそうなったらどんな気持ちになるか、と返したくなります。

知能指数は主に脳の中心溝より後方の機能を数字にしたものであって、IQが100あっても脳機能が正常ということには全くなりません。中心溝より前方の機能は、IQとは全く別に測定しなければなりませんが、そのような指数を作るまでには、相当の時間を要するのです。

患者さんの個人データはもちろん公表できませんが、高次脳機能障害について、理解して認定してもらえる保険会社と、無視して保険金を支払わないような方針の保険会社を公表することに問題があるでしょうか? 私の立場でできなくても、患者さん同士での情報交換をして頂き、それを一般の皆様が保険契約の参考にしても良いのではないでしょうか?

この本の著者の一人である高次脳機能障害のリハビリで有名な山口研先生が同じ主旨の発言をしておられますが、私も「夢も人生も生活も性格も壊されて、何が『軽度』だ!」と言いたくなる場面が、しばしばです。

『算定日数上限』の除外疾患をより多く

2006-02-27 21:33:33 | リハビリ
リハビリを発症からの日数だけで区切るタイムレースのような考え方に対する疑問が、全国的に広がっております。患者会も動き始めたとの情報があります。

除外疾患について、現在厚生労働省で調整中のようですが、是非、疾患特異性や偶発的合併症の可能性等を考慮した上で、拙速を避けて頂くように要望します。

人間の身体に起こることは、100%予測できるものではありません。長嶋茂雄さんのような典型的な経過をたどる脳卒中の患者さんの中にも、経過中に肺炎や尿路感染などで、リハビリ病院への転院の時期を逸する場合もあります。今年度までは、回復期リハビリ病院への転院の時期は発症後3か月まで余裕がありましたが、来年度からはこれが2か月に短縮されます。つまり、発症後60日あたりに発熱してしまったら、その後のリハビリ医療を受けるチャンスまで、ほぼ全て奪われてしまいます。

さらに、やむを得ない状況であっても、発症から180日を超えてしまうと、一律にリハビリ医療が打ち切りになってしまいます。

まるで、『GAME OVER』のようなゲーム感覚の制度になっています。

チャンスを逸した患者さんの受け皿を、介護保険としているようですが、これからリハビリ医療を受ければ歩けるかもしれない患者さんが、どうして寝たきりのままで介護されなければならないのか、不思議であります。介護費用が膨張する一方の中で、効果的なリハビリ医療をきちんと行ってから、介護保険にスムーズに移行させることが必要ではないでしょうか?

制度が扱っているのは、ゲームの中のアニメキャラクターではなく、生きた人間であることの想像力を働かせて、制度を作って欲しいと思います。前回まではリハビリ医療に関する診療報酬改訂は、私は85点以上であったと評価していますが、今回だけは0点に限りなく近いものと思います。

無駄を削るために全部削る、という制度であれば、素人でも作れます。無駄を削り、有効な部分は残す制度を作ることができるから、国民は国を信頼できるのです。そういう能力があるはずですから、是非とも発揮して欲しいと思います。

現時点でできることは、『算定日数上限』の除外疾患をより多く認めることです。厚生労働省への問い合わせも日を追って増加しているようですが、切実な患者さんの声を反映した発表がなされることを期待しています。

医療としてのリハビリテーションとプロフェッショナリズム講演会

2006-02-26 06:43:55 | リハビリ
徳島プリンスホテルで講演しました。皆さん大変熱心に聴いて下さり、質問も沢山頂きました。ありがとうございました。

診療報酬改訂の不備(医療保険と介護保険の谷間問題)を指摘しますと、それだけで講演時間がいっぱいになりますので、敢えて、原点に戻ろうという主旨で話を組み立てました。

最も強調したかったことは、リハビリ『医療』がQOLの専門医療であり、リハビリマインドをもった専門職でTransdisciplinaryにチームを構成すれば、どんなにお金をかけた先端医療よりも、質の高い医療が実現できること、その基盤に各専門職のプロフェッショナリズムの意識が最も重要であること、さらに、もはやリハビリ医療は病院機能でも必須の普遍的な要素であり、リハビリ医療を削減する医療機関は生き残ることはできないこと、です。

平成18年度の診療報酬改訂が、リハビリテーション医療を必要とする多くの患者さんを切り捨てようとする中で、どうすれば医療機関として患者さんを守ることができるか、これは医療機関の経営問題ではなく、日本の医療そのものの死活問題であることを間接的には主張できたかと思います。

プロフェッショナリズムの定義を知れば、当然のことながら、そこに経済性以前の使命感が必要であることがわかります。国がリハビリ医療を後退させようと方針転換する中、地域医療を支え、リハビリマインドをもって必死に患者さんに向き合う専門職の皆さんの声を聞きますと、リハビリ医療が地域医療の最後の砦であることがひしひしと感じられます。

いのちを切り捨てるような仕事をすべきでないことは、厚生官僚の皆様には自覚して頂きたいと思います。プロフェッショナリズムを取り戻して下さい。自分自身や家族がリハビリ医療を受ける立場になったら、身にしみてわかることでしょう。(当事者にならないと、重要性がわかりにくいのが、リハビリ医療の特徴でもあります。)

プッチーニ 歌劇『トゥーランドット』全曲

2006-02-25 22:28:47 | 音楽
トゥーランドット*歌劇

ユニバーサルクラシック

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徳島での講演から戻りました。徹夜で準備した新作の講演の様子は週明けに記事にします。

とりあえず、おすすめ投稿です。フィギュアスケート金メダルの荒川静香選手が使っていた曲・プッチーニの歌劇『トゥーランドット』です。このオペラには、あの曲(Nessun Dorma)以外にも、劇的で美しい旋律がふんだんに出てきます。
プッチーニは『蝶々夫人』『ボエーム』『トスカ』いずれもおすすめです。DVDで見ると、オペラが他に類を見ない総合芸術であることがよくわかります。(本当は、本物の舞台が見たいですね。ミラノスカラ座の『ボエーム』以来、舞台には全く行く余裕がありません。忙しくしているうちに、歳をとってしまうんですね・・・)

療法士の待遇改善

2006-02-23 08:33:15 | リハビリ
療法士の給与を、訓練単価×単位数×日数で計算するようなことは、やめるべきです。

以前にも申し上げましたが、STが国家資格になる前、診療報酬も安く、誰もペイさせようなどとは思わなかったわけです。しかし、失語症、構音障害、嚥下障害、高次脳機能障害など、その職種が【医療にとって必要だから】心ある病院は赤字部門でも雇用していました。

ところが、診療報酬がPT、OTと横並びになった途端に、人件費分稼いでいるか、という採算性の波がSTにも及んだと思います。

病院は総体として医療を提供する使命をもった施設であり、医者だけでなく、受付も事務も検査も看護師も療法士も全てが医療を担っているのです。特定の誰かが【水揚げがいくら】だから、という【業務評価】をすることが【悪平等】を防ぐと医療経営コンサルタントの言うなりに、支離滅裂な【業績評価】を導入して給与査定をする病院が増えていますが、本当にそんな計算で良いのか、医療のプロとしてよく考える必要があるのではないでしょうか?

『診療報酬上、稼いでいない』職種を解雇したときは、病院が倒産するときです。
急性期、回復期、訪問でのリハビリ部門は今後も赤字にはなりませんが、療養型や外来では非採算部門になります。非採算だということで、リハビリを辞めると決めた日が、病院の終わりの始まりに日になるでしょう。

患者さんがADL上どんどん元気になる効果、廃用症候群を作らずに転倒を防止でき、早期に退院できる効果、嚥下リハビリで誤嚥性肺炎にならない効果、目に見えない患者さんの満足・・・そういう間接効果、質の評価を認めることができるかどうか、が、病院経営分析には最も重要な時代になったと考えます。

事務部門がなければ、病院が動かないのと同様に、病院機能の中では、救急とリハビリはOSに相当します。OSがないコンピュータは、いくら高価なアプリケーションソフトを買っても動きません。

発症からの日数による切り捨て医療制度 その(2)

2006-02-21 15:57:10 | リハビリ
発症後期間による切り捨ての根拠は、『長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーションが行われているとの指摘がある』ということだけです。

『長期間にわたって行われているリハビリテーションの中には、効果が明らかでない場合がある』

したがって、
『長期間にわたって行われるリハビリテーションは、行わせない』という論理??です。論理学の勉強が足りないのではないでしょうか?

正解は、
『長期間にわたって行われているリハビリテーションの中には、効果が明らかでない場合もあり、効果が明らかな場合もある』

したがって、
『長期にわたるリハビリテーションのうち、効果が明らかでない場合は、リハビリテーション料を算定しない』とするなら、理解できます。

つまり、期限をこえてリハビリテーションを継続する場合、『効果を客観的に示すこと』という注釈があれば、納得です。結果をともなわない場合に限り、医療機関の持ち出しになるわけです。

発症からの日数による切り捨て医療制度 その(1)

2006-02-21 13:01:47 | リハビリ
診療報酬改定の算定日数の上限について、その起算日は【発症日】とのこと。
しかも、【医学的にリハビリが効果がある】と予想できても、例外は【厚生労働大臣が定める】いくつかの疾患のみ。除外疾患は、まだ発表されていませんから、行動するなら今のうちだと思います。

今、把握している資料では、
高次脳機能障害のない片麻痺が主症状の脳卒中の患者さんだけでなく、長期的にも回復中の高次脳機能障害を有する脳外傷や脳卒中の患者さん、関節リウマチの患者さん、変形性関節症の患者さん、慢性閉塞性肺疾患の患者さん、パーキンソン病の患者さん・・・・ほとんど全ての患者さんが、【発症日】から90日とか150日とか180日で、リハビリ治療を受けられなくなります。

資料は、下記の
http://nhj.or.jp/modules/news/article.php?storyid=138
F002602.pdfの資料の37ページにあります。

期限が切れたら、全てを【介護保険】で介護予防できる、と考えているのでしょうか?

全く、リハビリ医療の現状を知らない人が作った制度に見えます。制度によって、切り捨てられてしまうのは、【不必要な】医療を受ける元気な人、ではなく、本当にこの治療がなくなったら、寝たきりにもなりかねない【生身の人間】だという、想像力が欠けています。

介護保険で介護予防をできるのは一部の基本的に【元気な】患者さんです。介護保険をどんなに充実させても、個々人の障害に合わせた介護予防のためのリハビリ医療を実施しなければ、全く効果はないでしょう。

個別性の放棄は、結局高くつくことに気付いて欲しいものです。


Mike Oldfield ~シンフォニック・フォーク・ロック

2006-02-20 21:04:09 | 音楽
Ommadawn
Mike Oldfield
Virgin

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これも○十年前のロック(?)。マイクオールドフィールドMike OldfieldのオマドーンOmmadawnというアルバムです。クラシックファンの私に誰が教えたのか、よ~く聴いていました。今聴いても、最初から最後まで本当に親しみやすく、ロックでもフォークでもクラシックでもないオリジナルの世界です。
そういうわけで、<シンフォニック・フォーク・ロック>とも言われるそうです。リコーダーやバグパイプやアフリカンドラムや子供の歌声など、意外な音が独特の牧歌的な世界を創っています。


脳の計算理論

2006-02-20 04:48:57 | リハビリ
脳の計算機構―ボトムアップ・トップダウンのダイナミクス

朝倉書店

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リハビリテーションは臨床が最も重要です。その中で、EBMやNBMを理解して発信しつづける臨床研究も推進すべきでしょう。

一方で、リハビリテーション基礎医学の研究者の育成も必須と考えています。リハビリテーション基礎医学とは、バイオメカ、神経生理、呼吸循環、筋病理、骨代謝、老化の研究などなど多岐に渡りますが、誰も視野に入れていなかった分野が、この『計算理論』です。(入門書としては、絶版になった『脳の仕組み』がお勧めです。)

この本を表層だけ読むとちんぷんかんぷんかもしれませんが、すでに川人光男先生は脳研究を世界的にリードしています。つまり、脳を理解したい人は、ある程度、計算論が言わんとするところを理解する必要があります。私は、基礎研究として計算理論(計算論的神経科学)を基盤においています。留学先に川人先生の論敵であるMark L Latashの研究室と、ATRの川人さん(当所ではさんづけの習慣)の研究室を選んだのも、脳の理論がリハビリ医療を変革する、という信念からです。

もちろん、スピリチュアルな健康とか、障害の「受容」などの問題まで、計算理論で説明しようなどは考えていませんが、ブラックボックスと思われてきた脳の機能のかなりの部分が、理論的に説明できると考えています。

今はリハビリ医学の中では重視されていないかもしれませんが、「やがて自分の時代が来る」(グスタフ・マーラー)と思いながら、リハビリ分野では日が当たらない研究を地道に続けています。

患者さんの喜ぶ顔が好きな臨床家を大募集するとともに、脳の仕組みの素晴らしさに感嘆する好奇心旺盛な研究者も募集しています。私一人だけで、この大きなテーマをやり遂げられるものではありません。

いやぁ~、脳って本当に面白いですね・・・


アランフェス協奏曲

2006-02-18 19:58:15 | 音楽
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
ウィリアムス(ジョン), フィラデルフィア管弦楽団, ロドリーゴ, オーマンディ(ユージン), イギリス室内管弦楽団, グローヴズ(チャールズ), ジュリアーニ, ビバルディ
ソニーミュージックエンタテインメント

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アランフェス協奏曲、今ではすっかり有名になり、各種編曲もあります。2楽章のテーマを聴いたことがない人はいないでしょう。
アランフェス協奏曲とともに、ある貴紳のための幻想曲も好きな曲です。
癒されますよ。

リハビリテーション科専門医を一言で言えば?

2006-02-17 17:04:08 | リハビリ
先程、リハビリ医学会のホームページに、《リハビリテーション科専門医医師像》が掲載されました。

《リハビリテーション科専門医医師像》
「病気や外傷の結果生じる障害を医学的に診断治療し、機能回復と社会復帰を総合的に提供することを専門とする医師」

なかなか良くまとまっていますね。
障害を医学的に診断治療する、という視点は、従来の医学にはなく、障害は、診断のための「症状・徴候」や「後遺症」で済まされていました。その部分に光をあてる専門家は我ながら本当に重要だと思います。

自分や家族が障害をもたなければ、なかなかその存在意義をわかってもらえない、という私達と同じ悩みが、米国のリハビリの教科書にも書いてありました。

今日のように、急性期病院での入院日数が10日くらいに制限される時代では、その後のリハビリ医療を担う主治医(=リハビリ科医)がさらに重要になってきますね。


市場原理が日本の医療を滅ぼす

2006-02-15 23:30:40 | リハビリ
市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗

医学書院

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営利企業の世界でさえ、市場原理偏重がホリエモンを生んだくらいですから、医療に市場原理を持ち込めば、すべてうまくいく、というのは全くの幻想にすぎないことに、国民も早く気づくべきです。

商品の質は目に見えますが、医療の質は目には見えないからです。また、商品は買い換えがききますが、人間の身体はやり直しがききません。

この著者の一連の書籍には、米国の悲惨な医療の現状がわかりやすく解説してあります。

米国の医療は手本になりません。日本は国民皆保険を捨てて、どこに行こうとしているのでしょうか?医療の世界でも「弱肉強食」を肯定する将来の日本の凄惨な光景が見えてきます。

「安らかに死ぬ」ことは贅沢だから、「終末期医療を自費診療に」しよう、と耳を疑うようなことを財務省主計局の役人が公言することからも、官僚の意図は明白です。今回の診療報酬改定で主役を演じた厚生労働省の医療課長も「抗がん剤は保険で払う必要がない。延命効果しかないから。」と、医療保険で延命させるくらいなら死んでもらった方が良い、という主旨の発言をしたため、医師会幹部が抗議したと報道されています。

国民の皆さんには病気になった途端に何の医療を受けることなく急死してもらうことが、最も「医療財政の安定化」につながる、と本気で考えているように思える発言が相次いでいます。

誰のための医療?誰のために税金や保険料を払っているの?

よく考える必要があります。

ホームページ・ブログ・メーリングリスト管理

2006-02-14 13:10:40 | リハビリ
現在、ホームページ管理業務として、日本リハビリテーション医学会兵庫医科大学リハビリテーション医学兵庫医大室内楽部(室内楽団)、ブログはこのブログとCRASEED会員専用ブログ、メーリングリストは、CRASEEDラウンジML、Neuro-rehaプロジェクトML、CRASEED専門会員専用MLなどなど、数多くをこなしています。

幸い、CRASEEDホームページの方は、亀田メディカルセンターの宮越理事が担当して下さっていますので、多少は楽ですが、ほぼ限界に近いですね。

外注すると高すぎるし、自分でやるには意外と時間がかかる・・・やはり、この面でも人を育てることが大切ですね。