CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

巧みさとその発達(ニコライ・ベルンシュタイン)

2006-02-02 04:51:41 | リハビリ
デクステリティ 巧みさとその発達

金子書房

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運動制御・運動学習の講演会でいつも紹介するベルンシュタインが書いた名著です。

もともとロシア語で一般向けに書かれた本ですが、私の恩師のMark L Latashがロシア語から英語に翻訳したものDexterity and Its Developmentの邦訳です。(ロシア人なのでBernsteinと書いてベルンシュタインと読みます。バーンスタインじゃないよ・・・と、よくLatashがアメリカ人に注意していました。)

パブロフとほぼ同時期に活躍したロシアの神経科学者ですが、パブロフがノーベル賞だったのに対し、ベルンシュタインは失職の憂き目に。なぜか? 時の政府ソビエト連邦にとって、人間が反射や条件反射の複合物でできているというパブロフの人間観は都合が良かったわけですが、人間が「自発的」に運動を行う仕組みを解明しようとする随意運動制御の研究は、危険思想と考えられたからです。そんなことで、科学者の評価まで変えてしまう時代だったんですね。

今、パブロフと比較にならないほど偉大だったベルンシュタインの再評価が世界的に盛んになっています。Re-actionの科学(反射学)も重要ですが、Actionの科学(随意運動制御、学習、行動、思考、創造)はさらに奥が深く、脳を知り、人間を知るためには重要なのです。

この本を読めば、半世紀以上前に運動制御の基本的問題をほとんど指摘していたベルンシュタインの洞察力がわかると思います。筋肉が不良品だったからこそ神経系が発達したという考えや、恐竜が絶滅した新説?なども面白いですよ。