CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

リハビリ打ち切りに対する患者さんの怒り

2006-02-01 12:30:05 | リハビリ
「長期間漫然とリハビリをやっている例が多いので日数に上限を設ける」という理由で、診療報酬改定では日数の上限が設けられるようですが、「漫然と」ではなく、明確な目標や治療方針で必要に応じてリハビリ治療を受けている方も大勢います。今回の診療報酬改定では、そのような患者さんも、国は一律に切り捨て、治療を受けられなくしようとしています。

本日の外来から、本年度いっぱいでできなくなるかもしれない、と患者さんや御家族に説明を始めましたところ、「夫くらい重度だと介護保険のリハビリでは悪くなる一方です。しっかりとした医療的リハビリを受けることができて、やっと良くなってきたのに。」と、国に対して怒りをあらわにされていました。私も同感です。

リハビリを実施する時期に、何らかの理由で適切なリハビリを受けられなかった人が、実は大勢います。そんなに全国一律同じようには医療は動いていないのです。机上の空論で医療を動かしてもらっては、患者さんを不幸に陥れます。

専門家の裁量を全く排除してしまうと、いっそう医療の質の低下を招くでしょう。介護保険の「リハビリ」では介護予防できない重症度の患者さんが沢山います。パワーリハビリは、ほとんど元気な方に有効(かもしれない)というだけで、介護予防全体の切り札のように考えるのは、明かに誤りです。特定の業者の機械でないと改善しない、という話にも、多くのリハビリ関係者が首を傾げています。

今回のようなリハビリ切り捨てを行っていると、より重度な方向に介護度が悪化することは目に見えています。真面目に個別プログラムを考えながら、何とか歩けるレベルを保っているリハビリ医療が存在しています。今回、打ち切りの対象になる脳卒中片麻痺であっても、杖への荷重、患側荷重、拘縮、変形性関節症、転倒、心理、筋力、痙縮、合併症、廃用、などさまざまな要因を勘案しながら、リハビリ処方を書き直しています。個別性を奪うことは、患者さんから医療を奪う行為です。

厚生労働省の方もこのブログをお読みだと聞いておりますので、是非、再考をお願いしたいと思います。患者さんも御家族も怒っておられます。