ロビタの目

本日の召使 : ロビタ 漫画「火の鳥」より

「火の鳥 復活編」で手塚治虫はロビタの特徴をこう書いています。
ロボットとロビタのちがいは たとえばこういう点だ ロボットの召使は 主人の命令にこう答える 「はい だんなさま」/しかしロビタは ときによって こう反発する 「しかし だんなさま」/それが ある主人にとっては/がまんのならない反抗に聞こえ ある主人にとっては 人間くさい親しみに聞こえるのだ/
(「火の鳥 5 復活・羽衣編」より引用)
コンピューターのように シャクシ定規な心を持たず/どこか 人間くさかったのである/たとえば 人間らしい 失敗もしたし/感情らしいもので きげんが変わる こともあった/ (同上引用)
これを読んで思い出すのは、黒岩徹・著「イギリス式人生」の
「バトラー養成学校」の生徒の話だ。

ある生徒が著者に「バトラーの心構え」説いた。
「主人とどれだけ親しくなっても、あるいはどれだけ信頼されても、けっしてなれなれしくしてはいけません。われわれはあくまで主人に仕えるのですから。また自分の感情を統御する方法を知っていなければなりません。怒られたからといって、庭師が自分のいうことを聞かないからといって、カッとなってはいけないのです。(後略)」
(黒岩徹・著「イギリス式人生」岩波新書より引用)

ナマの人間の召使は「感情を抑える努力・訓練」を心がけ、
人間っぽい召使・ロビタは「感情らしきもの」があるがゆえに愛される。
(だからナマイキだ、と思う主人もいるけれど)

人々が求める「理想の召使」は、
ちょうど人間の召使とロビタの中間点あたりに存在するのかもしれません。

ロビタが召使として愛されるのは、「人間っぽい」からです。
「人間そっくり」でもなく、「人間みたい」でもない。
この「…っぽい」という微少な特徴のエッセンスを保てるのは、
過分にロビタの機体フォルムによるのではないでしょうか。
とくに、「目」です。

ロビタには「目」が無い。
顔中央の横長のくぼみが、かろうじて「目」にあたる。
が、人間の「目」にはフォルムとしてほど遠い。

もしロビタの顔に「目」がふたつ付いていて、
「しかし ご主人さま」と口ごたえしたならば、
ロビタびいきの主人も、だいぶ印象が違ってくるのではないだろうか。

目は心の窓。
「心」を持ちながらも、それを表現する「目」を持たぬロビタ。
「私ハ 人間デス」の主張も、嘲笑とともにナマ人間から却下される。
(だから「行動」で表わす。集団自殺、ボス殺しという方法で…)

いっぽうのナマ人間の召使は、
「目」が感情を表われないようにすることにこそ、苦心しているのたが。

召使としては、複雑な位置にいるロビタであった。

さて、ロビタの「召使評価グラフ」



ひかえめ 3
「シカシ…」の反抗的セリフでかなりの減点。
「火の鳥 未来編」では主人の猿田博士に向かって
「博士! アナタトイウ人ハ ホントニ ワカラズヤ デスネ」
とまで言う。
でも そこが ロビタの いいところ。

機転 3
主人より先回りしてモノを考えるタイプではありませんね。
命令されたことに対しての反応(感情らしきものを含めて)は豊かですが。
でも そこが ロビタの いいところ

献身 3
職場を放棄しての集団自殺、
自分が人間であると証明するめにボスを殺す、など
主人より自身の「個」の意識がはるかに勝っています。
なので点数はかなり低く。
でも それが ロビタ なのだ。

主人からの愛情 3
チャンバラや折り紙が出来るロビタ。子供たちからは絶大の人気。
が、雇い主の大人(主人)たちからはその「人間くささ」ゆえに、好かれたり嫌われたり。
ロビタはナニー(子守り)向けなのでしょう。

スタイル 3
いかにも「旧型」な感じが心温まる…ともいえるが、
そのぶん「洗練」からはほど遠い。従者には向きません。
でも そこが ロビタの いいところ。

関連リンク
これってロビタ?――富士通が考えるサービスロボット(ITmedia 2004/09/13)
 自立型・普及価格ロボット! 1台200万円! 身長130センチ体重63キロ!
新TVアニメシリーズ紹介「鉄腕アトム」(ASTRO BOY.JP)
 あっ! 「目」がある!
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コメント
 
 
 
ロボット執事 (knt)
2007-03-13 17:44:18
はじめまして。ジーヴスからこちらのブログにたどりつきました。執事初心者にはありがたい記事ばかりで、とても楽しく読ませていただいております。
さて、こちらにロボットというカテゴリがありますが、アシモフの「鋼鉄都市」に登場するR・ダニール・オリヴァーはいかがでしょうか。彼は執事ではなく主人公のパートナーなのですが、執事好きの血が騒ぐ関係であります。
countsheep99様であれば、彼をどのように評価なさるのかなあ、と楽しみに思い、コメントさせていただきました。
これからも楽しみに通わせていただきたいと思います。がんばってください。
 
 
 
執事好きの血が騒ぐってのが、 (countsheep99)
2007-03-15 09:51:01
いいですね~!(笑)

はじめまして、Kntさん。ジーヴスつながりで当ブログにいらしたとは、うっれしい!

ロボットのカテゴリー記事が少ないのは、わたしがSF小説に暗いからです。

つね日頃から思ってました。
「きっと執事ファン垂涎のロボットがいっぱいいるんだろうなぁ、SFに詳しい人はそんなロボットたちと何度も出会っているんだろうな、あーいいな、素敵だな、知りたいな、うらやまし(つづく)」

ですから、オススメSF小説の情報はとても嬉しいです。(アシモフと聞いてSFと決めつけてしまいましたが、いいんでしょうか?)

執事ではなくても「執事っぽい役割のキャラクター」というカテゴリーも作りたいなぁと思うとるんですよ。(←遅筆のくせに…)

お暇なおりに、また覗きにきてください。ではでは。

 
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