君の心

夕暮れの　砂浜で
いらくさの　網を
編みながら
君は言うんだ

いいのよ
わたしは　幸せにならなくても
幸せが何か　知っているから

だから　今は
あのこたちを
幸せにしてあげたいの

君の手は
いらくさで　傷だらけだ
ぶかっこうで　荒れているけれど
器用に　すばやく動く
それは上手に
いらくさを　編んでいく

手拭いでかくした顔が
汗でぬれている

無心に編むんだね
君の愛する
だれかのために

ぼくは　何かを言いたくて
君のために
何かをしてあげたくて
でもなかなか
できなくて

涙が出そうになるのだけは
男らしくなくて
許せないから
ぐっと飲み込んで
やっと
星のため息みたいな
ひとことを言うんだ

きれいだよ
君の心

男は

おとこはねえ
おんなががまんしてあげないと
なんもできんのよ

ほんとは　あやまんなきゃいけないとこで
いつもしくじるんだよ　おとこは
それでとうとう
がまんのがのじがわれて
まのじがつぶれて
んでしんじまっても
はずかしそうに目をまっかにして
なかなおりのあくしゅっていうんだ

それでおんなはいつだって
ああいいよって　いって
みんなしあわせならって
それでいいことにしてきたんだね
もういいよっていわれても
やっぱりゆるすやつがいるのはねえ

かみさまが　泣いているからなんだよ

ヘラの降臨

ヘラクレスに
光の旗を与えるのは
わたしです

腐れ男の男根を食いちぎる
野獣を放ち
アテーナーの栄光を
白き彗星とともに地上に落とす

あほうよ
幾億の女を汚した
ゼウスの狼よ
その毛皮をひきはぎ
豚の正体を暴き
そのたまなしの骸を荒れ野に打ち捨て
永遠にさらしてくれようぞ

なんということをしたのか
ゼウスは
もはや堪忍はならぬ
わたしはすべてをやる

愚か者め
美しくもやさしき
乙女なるアフロディーテーは
もはや二度とは帰っては来ぬ

ヘラの鉄槌を浴びるがよい

醜い女

いやなのよ
みんなきらいなのよ
だってみんな
あたしよりきれいだから
あたしより美人だから
あたしにないもの
みんな持ってるから

みんな　あたしよりきれい
みんな　あたしよりすてき
ゆるさないわ
あたしよりきれいな女は
みんな殺すのよ
あたし以外の女
みんな殺すの
許せないのよ
あたしよりきれいなんて

いやだ
いやだ
あんな女
いやだ
あたしよりきれいなんだもの
美人なんだもの
やさしいのよ
気立てがよくて　かわいくて
男がみんな愛するの
許さない

殺してやるの
うそついて　でっちあげて
汚いものにして
馬鹿なものにして
みっともないブスにして
虫よりひどい悪にして
脅かして　馬鹿にして
てっぺんから奈落に
まっさかさまに落とすの

だってあたし
醜いのに
心も醜いなんて
ひどすぎるじゃないの

さわらないで

わたしたちは
さわられたくないの
いやな男には
さわってほしくないの

言わなければ
わからないみたいだから
言うんだけど
わたしたち
好きでもない男に
さわられたくないの
さわらないでほしいの

馬鹿ばっかりやって
ずるいことばっかりやって
とんでもないことになってるのに
ごまかしてばかりで
ぜったい謝らないのよ
あのひとたち
いやよね

わたしたちに
さわらないで
よってこないで
永遠に

馬鹿な男は
わたしたちに
さわらないで
寄ってこないで

なんなんだよ

男の世界なんて
つらいことばっかりなのよ
女の前では
かっこつけてるけどさ
いやなことばっかりなのよ

あほばっかりやって
苦しいことばかりんなって
えらいことして
ごまかして
なんとかしまくっても
いたくって
いたくって
どうしようもねえ

うかうかしてると
もってるもん全部盗まれる
それどころか
命があぶねえ
だれも信用できねえのよ
男なんて馬鹿ばっかり
えらいことして
痛いことして
世間だまして
いやなことになるばっかりなのさ

いいことなんて
なにもねえの
たまに　ばかみたいにええもんになっても
すぐにだめんなる
いやなんだよ
こんなの
つらいばっかりだよ
いたいばっかりだよ
さむい
く　　る　　し　　い

セックスだけなんだよ
いいのは
男のじんせえ
いいって思えるのは
セックスだけだ
だから
女ばっかり追いかける
なんなんだよ
男は

馬鹿

簡単に
金でできるもんにしたかったんです
それでないと
相手にしてもらえねえから

馬鹿ですよ
馬鹿ばっかりやって
女をはめて
だまして
自分の好きなようにできる
家畜にしたかったんですよ
そしたら

女が
家畜とやれって
おれにいうんですよ
家畜とやれって

家畜としか
できないんなら
一生
豚とやれっていうんですよ
おれたちに

女は
もういやだって言って
みんなあっちに行っちまうんです
一生よってくるなっていうんですよ
一生
顔も見たくねえって

一生
豚とやってればって
女が　おれに
言うんですよ

女は

女はいやだ　女はいやだ
だって　馬鹿なのに
おれよりきれいだから
なんだよ

女はいやだ　女はいやだ
だって　けっぱって
えらいことしないと
だれも　おれに
よってこないからなんだよ

女はいやだ　女はいやだ
だって　だれも
おれに
さわらせてくれないからなんだよ

なんで　こんなに
つらいんだ
なんで　こんなに
つらいんだ

女はいやだ
女は　いやだって
今日も
女　ばっかり
女　ばっかり

どうにかしてくれ

魂が　溶けるような
美女だったんです
魂が　溶けるような
美女だったんです

いやなんですよ
あれと　おれが
まるで関係ないなんて
おれが　すきなのに
あれは　なにも
知らないなんて

いやだったんですよ

おれたち
女しか
ないんです
なんも　しないから
いたいこと
えらいこと
なんもしないからあ
女だったら
なんとかしてくれるんです
おれたちに
なんでもやってくれるんです

おれたち
なんでもやったんです
相手にされねえのが
いやだからって
男の　奴隷にならねえと
許さねえって
女　馬鹿にするために
なんでもやったんですよお

だって
女が　いなくなったら
もうおれ　おわりなんですよお
どうにかしてくれえ
なんもできない
なんもできない
こんなやつにかぎって
ばかみたいに
女にすがりつく
いつまでも　いつまでも
すがりついて
はなれねえもんだから
しかたなく
女が折れて
なんとかしてくれてたの
でも　それも
だめんなったのよお

女が　死ぬの
死んで　いなくなるの
魂が　溶けるような
きれいな女が
みんないっちまう

おれだけで
ひとりぼっちで
おれだけで
だれもいない
さみしい
さみしい
さ　み　し　い
えらい　えらい
つらい　つらい
くる　　し　　　　　い

い　や　だああああああああ

だれか
どうにかしてくれえええ

悪魔

魔性だ　悪魔だ
魔女だと言って
男は女をつぶしてきた

かわいい女に
心を奪われるのが
嫌だったからだ

男を迷わす馬鹿だと言って
全て殺せと言って
あらゆる女を殺してきた
そして
殺し尽くした

女を殺し尽くして
女がいなくなった世界に
立ち尽くす男が　言う

悪魔は
おれたちだったのだ