なめていたわけではなかった。
が、これほどの威力とは!!!
お昼ごろまでは
「気象庁騒ぎすぎじゃね?」とか
「このままちょっとした雨や風で台風が去ったらどうすんの?」
などと、カッパさんとほざいていた。
私は知人からもらった大量の葡萄(あまり美味しくなかった)を
消費するため、
午後からは葡萄のジャムやゼリーを作ることにした。
葡萄の皮をむいて鍋で煮詰めていると、
じわじわと暴風雨が押し寄せてきた。
みるみるうちに暗雲が立ち込め、あたりが真っ暗に・・・。
「来た来た来たーーーーっ!!!!」
テレビでは大阪に竜巻情報が流れている。
暴風だけでなく竜巻も来るのかよっ!!
と窓を見ると、
ありゃー!
街灯が大きく揺れている。
折れるんじゃねーかー。と不安で目が離せない。
路上駐車のバイクやら自転車が風で押し出されて、
道路上にてんこ盛りになってしまった。
道がふさがったわ、と思っていたら、
またじわじわと道路を横断してしまった。
隣の店の看板がひしゃげてしまった。
近所ではかなりの世帯のカーポートやベランダのアクリルの屋根が
宙を舞っている。
少しでも風が収まると、
カッパさんが出て行くつもりなのかウズウズしてる。
バカか?
頭から血を流して帰ってくるのが関の山だわ。
なんとか、出て行かせないようお菓子で釣ってみる。
そんなこんなで家で肩を寄せ合っていると、
停電してしまった。
でもすぐに点く。
それが2,3度続いたあと、本当に停電してしまった。
長い。長いよ。なかなか電気が点かん。
ブレーカーを見ても落ちてない。
停電がいつまで続くかわからないので、
カッパさんにキャンプ用品を持ってきてもらった。
ラジオ、ランタン・・・
こう言うときに役に立つよね。
ランタンを点けると、あら部屋の中がノスタルジー。
風が吹き荒れる音しかしない。
静か・・・。
ふと、外を見ると並木道の木が根こそぎ折れている。
だよね・・・。この風だもんね。
家の中で時間だけが過ぎていく。
おかげで葡萄のジャムが出来てしまった。
「いつ電気通るんやろなぁ?」とついついボヤいてしまう。
トイレに行っても電気が通ってないので流れない。
仕方なく洗面器で流す。
こんなときに限ってカッパさんはそわそわして、よくトイレに行く。
そして「ちょっとしか出なかった」と微笑む。
4時ごろ少し風が収まったようで、ついにカッパさんは外に出た。
「傘立てがどっか行ってもた」と戻ってきた。
そうだった!!
店の前に傘立てを置きっぱなしだった。
まだ、雨風の強い中カッパさんは近所を探しに行くが、
見つからなかった。
カーポートの屋根を回収に行く近所の人々の姿があった。
隣の店の看板は、どうやら誰かの車に刺さってしまって、
おおごとになっている。
スーパーのフェンスも波打っていた。
色々と爪痕を見に行きたい気もあったが、
まだまだ危険な天気だ。傘もさせない状態だ。
なんとか野次馬根性を沈める。
カッパさんが「冷気が逃げるから冷蔵庫を開けるなよ!」とうるさいので、
夕食の準備ができない。
仕方なくカップ麺で済ませる。
あーー冷蔵庫の食材が気になるーー。
特に冷凍食品はもうお陀仏だろう。
いっそのこと全部出して料理してやろうか、とも思う。
そんなことを考えているうちに、ふいに照明が点いた。
テレビが鳴った。扇風機が回りだした。
嬉しかった・・・。
本当に嬉しかった。
もうね感謝しかない。
初めてわかった。被災者の気持ち。
ずっと他人事だったけど、
少し体験するだけで被災者に近づけた。
お風呂を沸かした。
ありがたいと思った。
アイスクリームを食べた。溶けてなかった。ありがたい。
そんな小さな喜びを味わっていたが、
夜のニュースで結構な惨事が発生していたことを知る。
これからが、もっともっと大変なのだと知った。