「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

2010-01-09 | 
加藤陽子さん著「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」。これはお奨めです。東大教授の加藤さんが、栄光学園歴史部の中高生を相手に授業を行った内容を本にしたものです。歴史を学ぶ意義をあらためて考えさせる内容。で、一方通行で「教える」のではなく、日清戦争から太平洋戦争までの日本がおかれた状況、国内状況、特に庶民の反応などを極力客観的に示して、生徒たちに「君たちなら」と問いかける形式で対話が成り立っている。生徒たちの感性が、実にいい。さすが名門・栄光という感じです。

たぶん、「自虐史観」などと言いつのり、思考が固定してしまい、視野狭窄で客観的な歴史的事実を事実として受け止めることが難しくなっている人には「悪書」でしょう。マルクス史観絶対主義の人にも同じでしょう。両者とも自分の思いこんだ世界観、物語にある都合の良い「事実」の一部を引っ張り出して物語を紡いでいて、都合の悪いことには目をつぶる。批判的意見には目や耳をふさぎ、自身が絶対である、と言いつのる点はまったく同根ですから。

点である事実、事象の背景を分析して考え、通底しているものがなにかをあぶり出し、点と点とをつないで面にしていく地道で知的な作業がないと人間の営みの集大成である歴史は見えてこない。歴史は多面的であり、これが絶対などという側面、見方はないけれど、ある程度、事実が告げる「何か」を共通理解することは可能だと思います。その「何か」を求める作業の面白さをうまく伝えた一冊だろうと思います。

この本が多くの若い人に読まれることを願います。もちろん大人が読んでも得るところ大なのですけど、やはり頭が柔軟な時期に読むのが一番でしょうから。