昨日の興奮が、深く心地よい眠りとなって目ざめた朝、部屋の中
にひとひらの桜の花びらが落ちていた。その薄紅色の花びらは、どうもほんのわずかに開いていた窓からの侵入者にちがいない。
住居のマンションは4階にあって、桜はだいぶん遠く30メートルは離れている。ここまで飛んできたのは、よほど風に乗ったためだろう。偶然はないのならこれは、神様から「疲れた?大好きだろう?これで疲れを忘れなさい」とのプレゼントにちがいない。
子どものころから桜が好きだった。時期になれば必ず花見たさに、ひたすら山を登っていた。ところが成人すると以前ほどは関心を持たなくなった。たぶん散るのが嫌なんだと思う。散っていく様があまりにもきれいで、じつは咲くより好きである。舞い上がる桜吹雪の中にいると、何だか気がおかしくなりそうだった。それがちょっとつらくて、わざと関心を持たなくしたのかも知れない。ちょうど子どもの頃、好きな女の子がいて、で、ふられるのが嫌で、わざとつれなくしているような感じだ。まったく素直じゃないと反省する。今日は神様が造って下さったこの花、たった一枚の花びらだけれど、届けて下さったことに素直に見入り喜び、そして感謝をした。 (ケパ)