夜中に起きてテレビを見ていたらNHKで『落語ディーパー!』選という番組をやっていました。
テーマは「明烏」「鼠穴」「粗忽長屋」「居残り佐平治」でした。
落語のあらすじとその落語について話し合う番組です。
この中で「鼠穴」が我が琴線に引っかかりました。
この番組にも出ている春風亭一之輔さんの「鼠穴」を以前にテレビで見たのがはじめてだったのですが、そのうまさと話の展開に驚いたものでした。
あらすじ
人生に行き詰った田舎者の弟が、商人として成功した兄に会いに行きます。
親の財産を分けてもらった弟が遊んで無一文になってしまったのですが、兄は怒りません。
しかも、商売の元手を出してくれるから、商人として自立しろと優しい言葉。
弟は喜んで帰りますが、兄にもらった包みを開けると入っていたのは3文(今なら30円くらい)。
弟は兄は鬼だと激怒し、奮起して3文を元手に商売に励みます。
10年後、商人として成功した弟は3文を返しに兄に会いに行きます。
兄は3文の理由を話し、火事が心配で家に帰ろうとする弟を火事になったら自分の財産をすべて譲るからと引き留めます。
夜、火事になり、弟はほとんどの財産を失います。
兄に金を借りに行った弟に、兄はわずかなお金しか出せないと言い、自分の財産を譲るという話は酒の上のことと冷たく言い放ちます。
弟は兄はやっぱり鬼だったと帰り、娘を吉原に売りますが、代金をすられてしまいます。
弟は絶望し、自殺を図りますが…。
もう、このお兄さんが優しかったり、冷たかったり、言ってることもころころ変わって、弟と一緒に聞いている私も振り回されてしまいます。
で、オチでほっとするのです。
今回、番組で三遊亭圓生師匠と立川談志師匠の口演映像が出てきました。
そこでYouTubeで見られる「鼠穴」を見てみました。
圓生、談志、小三治、円楽、志の輔、こうやって見比べると圓生師匠のうまさが突出していました。
というか、圓生師匠の落語には背景にある江戸時代の空気が流れているので、後の人はかなわないのでした。
番組では談志師匠イチオシでしたが、兄の何を考えているのかわからないところを演じさせたら、談志師匠がぴったりなのは一番なのですが、話自体は説明しすぎでした。
談志師匠が現役の頃は圓生を古く感じ、談志が新しいと感じたものですが、今、YouTubeで同列で見てみると談志のわかりやすくする小細工がかえって古く感じてしまいます。
つづく。