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街の散歩…ひとりあるき

08-09…摩耶夫人懐妊…『釋迦尊御一代記圖會』巻1

2024年07月20日 | 宗教

て疲労を休められ、その後、多くの金銀縑帛(けんはく)を与えて本国へ返し給いけり。
然(しこう)して二人の妃を叡覧あるべしとて清淨殿に召昇(めしのぼ)し、初めて二女を上
覧あるに、聞きしには百倍勝りし国色にて、三十二相八十種好を兼ね具え、
十分叡慮に稱(かな)い歓喜したまうこと斜めならず。姉妹とも宮中に留めらるべき
よう宣旨ありて、姉・憍曇彌は月に諭(こと)えて月景城に住ましめ、妹・摩耶は花に
象(かたどり)りて青龍城に住ましめたまう。これより淨飯王、南北の臺(うてな)への御幸は
稀にして、東西の臺へのみ交々(かわるがわる)御幸あり。愛幸したまうこと双手の玉の
如く月景城に鵉輿(らんよ)を促したまう日は破利遮那城の宮巳(きゅうひ)女官
羨み、青龍城に風駕を停めたまう夜は並那離城宮女侍官嫉み媚びを
てうし、粧いを凝らして龍駕を迎えんとぞはかりける。淨飯王は二人の后妃
の叡慮に稱(かな)わせたまうにつきても、父・善覚大臣を賞せずんば有るべからずとて、
小国の王に封じ仙乗国を賜りければ、善覚臣大いに歓び深く帝
恩を謝し奉り、漢土西洋の珍玉奇珠をはじめとし、その余天下の

宝を集え七車に積み飾りて、自身(みづから)これ守衛し、加毘羅城へ上り参内し
龍顔を拝して封爵の天恩を謝奉り、七車の宝を献じければ、淨飯王
叡感浅からず大饗宴を開き、妓楽を奏させて重くもてなしたまう。誠に家
の面目世の名誉この上あるべからずとて、見る者聞く者羨まぬはなく、四
天下の人皆、花顔(みめよき)娘を生まんことを願いたり。

五 摩耶夫人懐妊

夫れ天地、物を妬みや秋の月。明(あさ)朗ならんすれば浮雲これ覆(おおう)て曇らせ、春の
花爛漫ならんとすれば風雨これを破りて散らしめ、唯、月花のみならず、人間
の上にわきて此の憂い多し。さるほどに善覚臣の女(むすめ)憍曇彌、摩耶の
両夫人は淨飯王の愛幸厚ければ、望として足らざるはなく、願いとして
満たざるはなければ、何の不足もあるまじかりけるに、忽ち、同胞仇歌(あだうた)
の怨みを結び、内心に三毒の剱(つるぎ)を磨くこととはなりけり。その濫觴(らんしょう)を尋
ねるに、姉妃・憍曇彌夫人の心には今般の勅命につ いて入内せば躬(みずか)らこそ
皇妃に具(そな)わり、摩耶夫人は父母の許へ返さるべしと思われけるに、案
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