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街の散歩…ひとりあるき

07-08…姉妹の女(ひめ)の才色、園(その)生る染る紅葉のごとく…『釋迦尊御一代記圖會』巻1

2024年07月19日 | 宗教

国人に触れて道路を清浄させ自ら官人を順え遠く迎え接し、駅亭
の饗応善美を尽くし、その後、勅使を引きて館舎に請じ、敬(つつしんで)で宣旨を
待ち、巴津那臣、臣笏を正し倫言の旨、他の仔細にあらず淨飯大王、万衆
の宝位につきたまうといえども、いまだ皇后に具うべき佳人を得むわず。朝
廷の緒臣下、これを憂い普く四天下を尋ねて一千五百有余の佳人を召し
集え、叡覧に備うといえどもいまだ大王の尊位に稱(かな)う夫人あらず。しかるに
貴卿の令愛(ぢよ)姉妹ともに絶世の風姿なって、かつ才芸に秀(い)たまうよし、
叡聞も達し急ぎ入内せしむべしとの王命なりとて、勅書ならびに聘物(へいもつ)
与えければ、善覚臣、勅使の祠(ことば)聞きて心中十分に歓喜し、禮を厚く
して勅答しけるは、これは恐れある倫言かな。偏国の微臣が娘、大王の
宣旨を預かりしこと盲亀(もうき)の浮木を得て天日を拝すが如く幸福(さわい)何ごと
か。是に過ぎそうろうべき。然(しか)はあれど、恐らくは容姿醜悪、動止(ふるまい)卑賎(いやしう)
して叡覧に備えるに足らず、却って竜顔を汚すの憚りあれば、違勅の科(とが)畏(かしこ)多け
れど、宜しく辞退の義を回奏なし給えとぞ告げける。巴津那臣、推しかえし謙遜は

さることなれども、姉妹の女(ひめ)の才色、園(その)生る染る紅葉のごとく更に世に
隠れなければこそ、叡慮も兹に傾き給いたれ。王命已(すで)に下る上は辞するは
却って非礼なり。疾〃(とくとく)令愛(そくじょ)に勅命の趣を伝え、入内の用意をなし給えと、
強(あながち)に勧めければ、善覚臣もさのみ固辞するも恐れなりと、承伏してその旨
憍曇彌、摩耶の両女へ傅え、万事用意の間は客殿において勅使を百般に
饗応して官待(もてなし)けり。斯く、数日の後、入内の用意調いければ憍曇彌、
摩耶二人の女(じょ)を十分に粧わせ、七宝荘厳の車に乗せしめ、数百人の
侍女、童女を傳(かしづか)せ、姉憍曇彌は馬将軍、妹摩耶には烏将軍とて、智勇
具足の臣下を添え、一千騎の軍馬に前後を警固なさしめ、黄道吉日
を選び仙乗国を啓行させ、摩伽陀國の都・加毘羅城さしてぞ上らせ
ける。勅使巴津那はこれに先立ち都城(みやこ)へ回り着き、善覚臣、王命を領掌し
二人の女(むすめ)を献(たてまつ) るよし奏聞しければ、淨飯大王叡慮麗しく巴津那
が功労を賞し給い官人を城外遠く出して、二妃の乗車を迎わしめ、
兼ねて新たに営み建てし宮殿へ請(しょう)し、警衛の兵卒には数日の饗宴を賜り
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