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街の散歩…ひとりあるき

12-13…摩耶夫人、前世の戒行の功力によって、今生、花顔端麗の身と産まれ…『釋迦尊御一代記圖會』巻1 25

2024年07月25日 | 宗教

を設け法沙王に讒(ざん)しけるに、父王、継母の讒を信じ遂に瑠璃女を等
乗(とうじょう)国の北なる切陀羅山に捨てたり。瑠璃女は身に覚えなき無実の科もそれと云い
明かさば、継母の罪を顕す不孝となれば是非なく科に伏し、実母の迷物浄
光菩薩の説きたる解脱無盆経をとり持って切陀羅山に赴き、崫(いわむろ)に住みて血盆
経千部を書写し、一万部を読誦し、日々に七種の果物を拾い、三つの灯を
かかげて一心懈怠(けいだい)なく燈明光佛を祈念しける。その戒行の功力(くりき)
によって、今生、花顔端麗の身と産まれ、淨飯王の愛幸を得て歓楽を極めたまえり。
然れば多くの経を書写せし功徳深く六根清浄の徳を具え日月の
光を汚さず六色の障りなき身となり、予(われ)は、そのときの燈明光仏これなり。
かかる結縁なれば、いま御身の胎内を借るべきなり。さのみ辞したもうなかれ
と説きたまい、影のさす許に近寄りたまえば、摩耶夫人、仙言(ぶつごん)を聞きて感涙
を流しながら、なお辞し奉らんと双手を合わしたまうる。不思議なるかな、夫人の掌の
うちより二十八葉の青蓮華生出(しょうしゅつ)したり。そのとき、御仏、白象の背を離れ
て夫人の掌中の蓮華上に乗り移らせたまい、微妙の御声を発したまい

“我得成道現在往来娑婆八千度為度衆生常説法巳今當来諸佛智”と
唱えあせたまい、珊瑚の乳房をかきわけ右の脇より影のごとくにして胎内へ
宿りたまいけり。夫人、駭(おどろ)き、これはそも恐れ多きやとわが身を抱き
見たまえば、五躰六根清らかに盆中に白玉を裹(つつ)むがごとく、胎内より明らかけき
金光明を輝かし、六根六織を照らしたまえば、夫人、廓然として心明らかに三世の
因位眼前(まのあたり)に見るがごとく、前生後生見えわたり、前に仏の説きたまいし
因位の昔語りも疑いなき事実なることを悟る。我ながら不思議にも有りがたきこと
かなと感嘆しむに、そのとき六種の振動して恒河沙の菩薩諸天おのおの来現
したまいて、“載礼佛母除難守護諸佛謅誠(しゅうじゅう)”と同音に唱え、夫人を礼拝
したまうにぞ、后妃、大いにおどろき、これは勿体なしと恐れをなして拝せんとし
たまえば忽然として夢覚めたり。このとき淨飯王も眼を覚ましやや嘆息呻吟し
たまいけるが心をおさめて后妃に向かい、朕、いま奇異の夢を見たり。然るにいま
卿(おこと)が面差しを見るに、平日に異にして真に天子のごとし知らず。卿(おこと)も夢
を見しや否やと問たまう。これによりて夫人も包むことなく夢想の始終を語り
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