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H3 ロケット1段用 LE-9 エンジンの 燃焼安定性予測技術及び対策技術開発!

2018-08-01 07:10:29 | ガスタービン
現在,宇宙航空研究開発機構(JAXA)のもとで H3 ロケットの 1段用エンジン LE-9 を開発中。
LE-9 は従来エンジンに比べて燃焼器が大型化することか ら,燃焼の不安定化による大きな圧力変動(燃焼振動)の抑制が課題。

このため,異なる 噴射エレメント長さの組み合わせによる流量変動の分散化技術と,レゾネータ による圧力変動の吸収技術を新たに開発し,燃焼安定性を大幅に向上。
これらキー技術の適用により,世 界で初めて大推力エンジンにエキスパンダーブリードサイクル を適用する LE-9の実用化に目 途付けができ,2020 年の初号機打ち上げに向けて,順調に開発中。

ちなみにレゾネータは、共鳴による圧力変動の増幅を抑制する装置
エキスパンダーブリードサイクル:エキスパンダーブリードサイクルは、液体ロケットエンジンのサイクルのひとつで燃焼室の 冷却に用いた水素をターボポンプ駆動に用いるでつ。
簡素で本質的安定性と低コストを両立するという特徴を持つでつ。




ロケットエンジンの開発において発生し得る不具合の一つに燃焼振動が挙げられるでつ。
焼振動 とは,燃焼の不安定化により燃焼室内で大きな圧力変動が生じる現象である。燃焼振動が発生 すると,圧力変動の影響で燃焼室壁面へ伝達される熱量が大きくなり,燃焼室壁面や噴射エレメ ント壁面を溶損させ,
最悪の場合エンジンの破損に至るでつ。

本事象が実機エンジン燃焼試験で発 生すると,設計手戻りや追加試験等のため開発コスト・開発期間に大きなインパクトを与えるでつ。

従って,開発初期の段階から,燃焼振動を発生させない安定燃焼を確保したエンジンを設計するこ とが重要。
だけど,本事象は,数百本の噴射エレメントの形状,燃焼室サイズの影響を受けるため, エンジン開発初期の段階で実施可能なサブスケール燃焼試験(噴射エレメント1本~複数本の燃 焼試験)で直接検証することが困難。
また,燃焼振動は燃焼,流体,音響現象が相互作用 する複雑な現象であることに加え,影響因子が多いこと,発生し得る燃焼振動周波数・モードが 多様であることから事前予測,対策には高い技術が必要。

そこで,LE-9 の設計技術の事前検証を目的とした技術実証エンジン LE-X を対象に,下記に示す燃焼安定性向上の技術開発を行ってきたでつ。
1. 燃焼振動発生メカニズムの分析
2. 燃焼振動予測技術の開発
3. 燃焼振動対策技術の開発
これら燃焼振動に対する技術開発について説明するでつ。

燃焼振動を発生させない安定燃焼を実現するエンジンを開発するためには,燃焼振動の発生 原因を明らかにしてその原因を取り除き,燃焼室に音響減衰を付加する技術が必要。
また,これらの対策を行うために燃焼振動の発生周波数帯域を予測する技術が必要。

これら の技術を開発するためには,まずロケットエンジンの燃焼振動の発生メカニズムを明らかにする必 要。
そこで,従来機種を含めエンジン燃焼試験データの分析を行い,燃焼振動発生メカニズムの 分析を行ったでつ。

図1に代表的な燃焼振動発生例として,LE-X の燃焼試験(燃焼振動対策なし)の 燃焼室圧力変動計測結果を示す。燃焼室内部の圧力変動の大きさ(カラーコンター)を各時間毎 (横軸),
各周波数毎(縦軸)に表したものでつ。




また,燃焼室の音響共鳴周波数を白の実線 で,噴射エレメントの音響共鳴周波数を白の破線で示しているでつ。
燃焼室の音響共鳴周波数が噴 射エレメントの音響共鳴周波数に近づくと,燃焼振動が発生し圧力変動が増加する傾向が確認 。
これは,燃焼室内の圧力変動が噴射エレメントと音響的に連成することが燃焼振動の発 生のトリガになっていることを示唆(以下,噴射連成燃焼振動)。

図2に示すように,噴射 連成燃焼振動のメカニズムは以下の通りと考えられるでつ。
① 燃焼室内の圧力変動が噴射エレメントに伝搬し,噴射エレメント内で共振することで噴射 エレメント内を流れる酸素の流量変動を増幅。
② 流量変動を伴う酸素と燃料が燃焼領域まで伝搬し燃焼すると,発熱量が変動。
③ 発熱量変動により燃焼室が音響的に加振され圧力変動が発生。
現象①から③のフィードバックループにより,圧力変動と流量変動,発熱量変動が互いに増幅し合う関係を形成することで圧力変動が成長し燃焼振動に至るでつ。




エンジン燃焼試験の分析の結果,噴射連成燃焼振動は発生例が多く防止する必要性が高い と考えられたでつ。
そこで,LE-9 の開発においては,噴射連成燃焼振動をターゲットに燃焼振動予測 技術,燃焼振動対策技術の開発を進めたでつ。

燃焼振動対策を施す上で,発生周波数を予測することが重要。
対策を全周波数に対し て行うことは現実的でなく,ターゲット周波数を定める必要があるため。

そこで LE-X の開発において,噴射連成燃焼振動を対象に発生周波数を予測するための手法 を開発。
図3に燃焼安定性予測技術の概要でつ。




2章の噴射連成燃焼振動の現象①から③をそれぞれ適切に予測することで,燃焼安定性を評 価することができるでつ。
だけど,特に現象②は複雑な燃焼の動的な挙動に関連しており,解析 や理論で正確に予測することが困難。

そこで,現象①②については,JAXA 角田宇宙センターにて噴射エレメント1本の高圧燃焼試 験を実施し直接計測評価。
サブスケール燃焼器に噴射エレメントを供試し,燃焼試験中に燃 焼室を別途,音響的に加振し圧力変動を与えたでつ。
燃焼室内部の圧力変動を圧力センサにて計 測するとともに,可視化窓を通じて火炎を高速度カメラで撮影することで,圧力加振時における発 熱量変動(発光強度※3)を計測。

これにより,圧力変動に対する発熱量変動の応答特性(圧 力変動振幅に対する発熱量変動振幅の大きさ,および圧力変動に対する発熱量変動の応答時 間の遅れ)を計測し,
安定性評価に必要な現象①②の評価を行ったでつ。
現象③については,波動方程式を用いた音響 FEM※4により評価。

燃焼室の燃焼ガス物性 (音速,密度)には別途実施する燃焼 CFD※5の結果を用いたでつ。
以上のように計測,解析を組み合わせた安定性評価手法を開発し,LE-X の燃焼器単体試験 にてその予測精度の検証を行ったでつ。

※3 発光強度:燃焼反応により放出される特定の波長の光の強度は発熱量の大きさと相関がある。この特定の波長のみを 通過させるフィルタを用いて高速度カメラ撮影することで発熱量分布の計測ができるでつ。
※4 音響 FEM:音響波動方程式を解くための有限要素法(Finite Element Method)。コンピュータを用いて音(圧力変動)の 伝搬現象を計算するでつ。
※5 燃焼 CFD:燃焼反応を含む流動場を解くための数値流体力学(Computational Fluid Dynamics)。コンピュータを用いて 流動、燃焼反応を計算でつ。

図4に噴射連成燃焼振動に対する燃焼振動対策技術の概要を示すでつ。




異なる噴射エレメント長 さの組み合わせによる流量変動の分散化技術とレゾネータによる圧力変動の吸収技術の2つの技術を新たに開発。

現象①において,噴射エレメント内で圧力変動が共振により酸素の流量変動を増幅させるとい うことに着目。
即ち,噴射エレメント内における共振による流量変動増幅を抑制することができ れば燃焼振動を抑制できると考えたでつ。

そこで,異なる噴射エレメント長さの組み合わせにより,流 量変動の波長を分散させ,多数の噴射エレメントを組み合わせたときに,全体としての流量変動 を抑制する技術を開発。
図5に噴射エレメントに対する燃焼振動対策効果を示すでつ。




対策なしの噴射エレメントでは多数 の同じ長さの噴射エレメントを用いるため,燃焼室から圧力変動が加わり噴射エレメント内で共振 したときに,同一の波長の流量変動が同じタイミングで噴射エレメントから流出するでつ。
その結果,多 数の噴射エレメントから流出される流量変動が互いに強め合い全体として過大な流量変動を生じ るため,大きな発熱量変動,圧力変動が発生。

対策ありの噴射エレメントは,音響的な検討に より噴射エレメントの長さに適切なバラつきを持たせているでつ。
短い噴射エレメントでは短い波長の 波が,長い噴射エレメントでは長い波長の波が発生するため,長い波長と短い波長の波を組み合わせることで噴射エレメント全体としての流量変動を抑制。
その結果,大きな発熱量変動が発生しにくくなり,燃焼振動を抑制することができるでつ。

LE-9 の設計においては,本技術を用いて噴射 エレメントの長さの最適化を図ったでつ。

燃焼室の圧力変動を吸収する装置として、燃焼室の噴射面近傍に取り付けるレゾネータを開 発。
レゾネータ入口には多孔板が取り付けられており,音響共鳴現象により流体が多孔穴を 出入りする際に発生する渦により、圧力変動を吸収。

流体が多孔穴を出入りする際に発生する渦が大きくなるほど,音響減衰が大きくなるが,実機エンジンは高圧であり,大気圧条件下よりも,圧力変動振幅が大きいため発生する渦・音響減衰も大きくなるでつ。
従って、大気圧条件の要素試験で計測される音響減衰を実機の評価値として用いることはできないでつ。
そこで、JAXA 角田宇宙センターにて実機相当の圧力変動条件下におけるレゾネータの音 響減衰を計測。

図6にレゾネータの音響減衰計測装置および計測結果を示すでつ。




高圧条件下で窒素を流しサイレンホイールにて加振を行うことで、大音圧加振を行ったでつ。
レゾネータの入口と 内部に圧力変動センサを取り付け,入口の圧力変動振幅に対する内部の圧力変動振幅の増幅 率を計測し音響減衰を評価。
また別途,Guess による音響減衰評価式(半理論、半実験)(5)に よる結果をあわせて示すでつ。

評価式と計測結果は概ね一致しており,音響減衰は多孔穴を通過す る流体の流速変動のマッハ数に比例していることを確認。
そこで,実機のレゾネータの音響減衰を評価する際には、実機で想定される圧力変動と音速, 密度および多孔板開口率より多孔穴部のマッハ数を概算し,図6を用いて音響減衰を評価。

LE-9 の設計においては,本評価手法を用いてレゾネータの多孔板の開口率を調整することで音 響減衰の最適化を図ったでつ。
また実機エンジンでは,複数の周波数の燃焼振動が発生する可能性があり,各々の周波数を 抑制するため複数種類のレゾネータを同時に使用することが想定。

このとき,異なるレゾネ ータ同士が音響的に干渉し性能が悪化する可能性があったため,要素試験にて複数種類のレゾ ネータを同時に使用した際の音響特性(吸音率)を評価。
図7に2種類のレゾネータを円周状 に配置した要素試験装置を示すでつ。




円周状にA種レゾネータとB種レゾネータを交互に配置し,上 面からスピーカーで加振を行ったでつ。
2列に配置した圧力センサで計測した圧力変動データを用い て,円盤中心から外側に伝搬する音波に対する吸音率を評価。
また,要素試験を対象として 音響 FEM による解析を行ったでつ。

図8に計測結果および解析結果を示すでつ。

試験と解析で概ね吸音 率は一致している。複数種類のレゾネータを配置した場合は,レゾネータを単体で使用する際の 吸音率の谷が埋まることが確認でき,
レゾネータを単体で使用するよりも広い範囲で高い吸音率を得られることが分かったでつ。
また,本要素試験と解析にて圧力変動振幅の空間分布や周波数に 対して必要なレゾネータの数と配置について知見を得て,LE-9 では,効率よく圧力変動を吸収 できるようレゾネータの数・配置を設計できたでつ。

技術実証エンジン LE-X の燃焼器単体試験を当社の田代試験場にて実施(図9)。
図 10 に燃焼試験における燃焼室圧力変動スぺクトル計測結果を示すでつ。




対策なしのコンフィグレーショ ンでは modeA,modeB にて大きな圧力変動(燃焼振動)が発生したでつが,噴射エレメントおよびレゾ ネータによる対策を施したコンフィグレーションでは modeA,modeB とも燃焼振動は完全に消失し,
振動レベルを 1/100 に抑制。

図 11 に燃焼振動予測技術の検証結果を示すでつ。




共鳴倍率は減衰比の逆数であり,値が高いほど不安定。
解析では modeA,modeB とも振動レベル(共鳴倍率)が大きくなる傾向が計測と一致 。

解析の共鳴倍率のピークの大小関係は試験の変動圧のピークの傾向と一致。

LE-9 エンジンでは,LE-X で開発したこれら燃焼振動予測技術と燃焼振動対策技術を適用して開発を行った結果,実機エンジン試験において燃焼振動の発生しないことが確かめられ,
燃焼安定性を大幅に向上することができたでつ。

LE-9 設計技術の事前検証を目的とした技術実証エンジン LE-X の開発にて,燃焼安定性向 上の技術開発を行ったでつ。
安定性解析により燃焼振動が発生する周波数帯域を予測する手法を確 立。

射エレメントの音響特性をチューニングすることで燃焼振動レベルを低減する設計技 術を開発。

レゾネータの音響特性を高精度に予測する手法を確立。
またそれらの技術を 実機エンジンに適用し,その有効性を検証。

本技術により,世界で初めて大推力エンジンにエキスパンダーブリードサイクルを適用するLE-9 の実用化に目途付けができ,2020 年の初号機打ち上げに向けて,順調に開発中でつ。
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