O'kashira

うだうだ

悲しき「解体ショー」

2007-04-27 16:36:23 | 横浜の空の下


ナックルエイトというボートをご存知だろうか。全長17m、幅60cm、8人が1列に座り片側ずつ漕ぐ。さらにコックス(舵手)1人が乗り、計9人で操るボート競技、およびその艇の名称。ナックルとはknuckle(指間接、拳)に由来し、艇の横断面が5角形の形状になっているためだと言う。頑丈で、安定は良いが、重く、艇速は遅い。現在ではFRP製のシェルエイトに取って代わられ、残念ながら今、この種目はない。



これは、1963年8月に作られた木造艇でおよそ44歳。神奈川県の津久井湖で活躍し、第2の人生ならぬ艇生をここ鶴見川漕艇場で送っていた。乗る人も少なく、ラックのいちばん上で新しく来たプラスティックのスマートな舟を見つめていた。



堅牢さを保つため、合板を多用しているが、無垢の板はさすがにいい材が使われている。写真にはないが、2本のレールにスライドするシートをセットし、木のサンダル状のストレッチャーに足を固定し漕ぐ。漕ぐ、また漕ぐ。



ついにそのときはやってきた。長いことこの艇の面倒を見ていたO氏が電動丸鋸のスイッチを入れた。あっという間にその長い船体は2つになった。



回収しやすくするため、さらに細かく切られた。
まるで博物館にある恐竜の骨格標本のようだ。



補強してある金属部分を外し、船体はバラバラになった。こう解体していくと舟の構造がよくわかる。細かいところに意匠がこらされ、当時の職人の仕事の丁寧さを感じる。



ついにひもでくくられ、焼却場へ旅立つばかりとなった。こんな固まりが5つほどになってしまった。



最後に残ったストレッチャーを並べてみた。ナックルエイト、8人漕ぎのはずなのに7足分しかない?1人逃げた?



同時に木製のオールが不要になった。友人と何本かずつもらってきた。そのとき1人の友人がバウとスターンの三角の部分を壊さずに持って帰ろうとした僕に
「前後をくっつけて一艘のカヌーにするのですか?」
「そんな馬鹿なこと・・・」
とは言っては見たものの、くっつけてみるとなかなかかっこいい。なんとかくっつける工夫をしてアンティークなカヌーを作ろうかと思う。44歳プラスアルファー、アルファー部分の第3の艇生の始まりだ。

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