まんじゅうのつぶやき

まんじゅうです。読んだ本の感想や日々のできごとの忘備録です。最近栖が変わりました。

「家族じまい」桜木紫乃

2021-01-14 18:22:02 | 読書のすすめ
今日も群馬の平地は晴れ。
朝は寒かったのに 昼はとても暖かでした。

さて 桜木紫乃の「家族じまい」を読みました。



物語は 智代が夫 啓介の円形脱毛症を見つけたところから始まる。
智代は カットサロン「アクア」でパートとして働いている。
中卒で父から 理髪師を目指すように言われ厳しい修行を経た。
しかし 当の父は 投資に失敗し
自分の店すらも取られてしまう。

親とも妹とも没交渉の毎日。
二人の子供が巣立った今 夫との穏やかな生活が始まったと思っていた。
そんなある日 妹から
「お母さんがね、ぼけちゃったみたいなんだよ」
と連絡が入る。
夫と久しぶりの二人旅の行く先は 実家だった。


5章の短編が それぞれ関係のある別の登場人物の視点で語られている。
よくある形かもしれないが その使い方がとても上手い。

そして 身につまされるとはこういうことか。
年を取って介護が見えてきた 
夫婦。親子の断絶。共依存。つかず離れずの関係。
そのどれもが 問題をはらんでいて
とてもリアルです。

こんな状況なので 心配はしても
「来るのはやめて」
と断られている。
心配だけど 踏み込めない。
行けない距離じゃないのに 会えない。

多くの方が抱えているであろう親への不安を掻き立てられます。

桜木さん自身が私と同世代なので
実際の親御さんや姉妹の立ち位置を書かれたとのこと。
(もちろんフィクション部分も多いと思いますが)

いい作品なので おすすめと言いたいですが
私たち世代が読むのは 結構きつく
そして考えさせられるお話でした。
元気があるときに読んでください。としか言えないなあ。
でも 是非読んでいただきたい作品です。

曇りの日の鉄塔下。

コメント (4)
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