サイト更新 フランソワ・ヴェイエルガンス『母の家での三日間』
「今年のゴンクール賞は」(05/11/10)では書評を頼りに、それもシムノンの話の枕にしただけ、ごまかしたようでずっと気が咎めていました。
もう一冊『私は作家だ』 François Weyergans, Je suis écrivain("Folio")を読んでみました。
これも語り手Eric Weinが作家で、Marc Straussという男が日本に旅する小説を書く「入れ子」仕掛けです。死の間近な豊臣秀吉を描く章が挿まれ、ここはシュオッブ『架空の伝記』とかボルヘスの『汚辱の世界史』とか、そんな感じです。
Eric Weinが最初の小説Machin Choseを父親に送ると、読んだ父は激怒してそれきり会うのを拒む。
父Franz Weyergansはベルギー人で、特に文学・映画批評で知られた作家だそうです。あるリエージュ史のページ→で引用を発見ー "Liège est une ville de collines et de rivières. Elle est née du mariage de la terre et de l'eau, elle a grandi par le travail du fer et du feu" (Franz Weyergans) 「リエージュは丘と川の都市だ。大地と水の結婚で生まれ、鉄と火の働きで大きくなった」(Franzの父はforgeron 鍛造工)
カトリックで、著作にも道徳的性格が強く、息子の小説第一作『道化師』Le Pitre(ラカンに精神分析を受けた体験にもとづく)にひどい衝撃を受けた。それからまもなく亡くなってしまう。
『母の家での三日間』にも、語り手と死んだ父とのややこしい関係がある。自伝を素材に同じ話を手を変え品を変え繰り返す、シムノンやモディアノのようなタイプの作家らしい。