発見記録

フランスの歴史と文学

SdF Bnf その他、名前の話

2006-03-31 22:35:30 | インポート

行きがかりでSdF(スタッド・ド・フランス)について書いてしまい(3/29)泥縄式調査と加筆に追われる。スタジアム建設中も1995年12月までは、単にle Grand Stadeと呼ばれていた。BnF(Bibliothèque nationale de France)の正式名称が決まるまで、TGB(Très Grande Bibliothèque )と称されたのと似ている。

またStade de FranceのFranceは「国」ではなくÎle de France だという。http://en.wikipedia.org/wiki/Stade_de_France 

なるほどRoissyはRoissy-en-Franceで、SdFはla Plaine de France のスタジアムなのだ。

"Je suis Francilien, habite à 20 minutes du SdF et pourtant je n'y ai jamais mis les pieds..."
(私はイール・ド・フランスの人間でSdFから20分のところに住んでいる、けれど一度も足を運んだことがない。)

SdF cherche public! Par adryfromsg, jeudi 2 mars 2006
http://footsg.football.fr/2006/03/02/150-sdf-cherche-public

サッカーファンのブログだが、なぜ"Ce stade n'a pas d'âme."(このスタジアムには魂がない)のか。

未知の名・事柄ばかりで途方に暮れる、とにかくわかったのは、SdFを本拠地とするサッカー・チームがないこと。
(J.P.モアン氏「スタッド・ド・フランスのホームチームはどこに」http://soccer.cplaza.ne.jp/archives/esprit/esp3.html )

サッカーチームPSG(Paris Saint Germain)は本拠地をParc des Princes に置いていた。

ところが最近PSGがSdFに引越し、Parc des PrincesにはStade Jean Bouinが手狭になったラグビーチーム Stade Français が入るという話が出ているらしい。(PLANETE PSG

結局また知らないことを書いてしまった。

SdFとSDFの類似による洒落の例が確かにあったのに、見失った。代わりにLe PSG, bientôt SDF ? (PSG、まもなくホームレスに?)


AA BB CC 頭文字で呼ばれる人たち

2006-03-30 10:55:48 | インポート

BB(Brigitte Bardot) DSK(Dominique Strauss-Kahn)のように、頭文字で略称される有名人の例がJean Bonnefoy氏の Esquisse d'une liste de célébrités classées par leurs initialesにまとめられている。言語実験工房OULIPO(ウリポ)的な関心をお持ちの方らしい。J2M (Jean-Marie Messier)は小泉今日子Kyon2を思わせる。

このリストにはないがアルフォンス・アレのファンはよくAA(A.A.)と書いている(アレ友の会L'association des amis d'Alphonse Allaisは略してAAAA  Ah!ah!は笑い声「あはは」 )

AA Alphonse Allais で検索中見つけたコント。http://www.boiteallais.com/progs/allais5.htm#text2

Le 26 février 1802 lorsqu'on vient déclarer à la Mairie de Besançon la naissance de l'illustre poète, le scribe municipal en entendant décliner le nom de l'enfant, ne put réprimer un mouvement d'admiration:
-Victor Hugo oh ! oh !
Le soir, au repas de famille, il ajouta au menu ordinaire deux bouteilles de vin vieux. Comme sa femme et ses enfants semblaient étonnés de ce luxe  :
Nous pouvons bien faire un petit extra ce soir, car c'est aujourd'hui qu'est né Victor Hugo, notre grand poète national.

(1802年2月26日、ブザンソンの市役所に名高い詩人の出生届けが行なわれた時、書記は子供の名を聞いて思わず感嘆の身振り、
「ヴィクトル・ユゴー、ほほ~っ!」
その晩、家族で囲む食卓で、書記は普段の献立に二本の古いワインを加えた。妻と子供たちがこの贅沢に驚いた様子なので、
「今夜は少し贅沢をしてもいいさ、今日も今日、われらが国民詩人ヴィクトル・ユゴーが生まれたんだ」)

発表時のタイトルまでわからないが le Chat Noir, A.A. le 14 mars 1885 と記されている。アレ自身この署名を用いるのが常だったのか?

このコントは次のサイト内にある。
Alphonse Allais, l'Académie Alphonse Allais et l'Association des Amis d'Alphonse Allais


S comme sigle 「略号マニア」について

2006-03-29 11:02:38 | インポート

Siglomanie(略号マニア)という言葉を見つけたのはLe Mondeの記事Des sigles sans audace(13.03.96)、「つい最近」登場した略号として、CIE (contrat initiative emploi)が挙がる。
日本の厚生労働省・「03~04年 海外情勢白書」によれば

雇用主導契約(CIE)

50才以上の失業者及び長期失業者等の就職困難者に対して、12~24か月の有期雇用あるいは無期限雇用を民間企業で提供するものである。当該契約を結んだ者にはSMIC〔全業種一律スライド制最低賃金〕以上の賃金が支払われる。職業訓練費用の補助があり、契約者のタイプによって330~500ユーロの補助金が国から支払われる。

Dictionnaire 「略号マニア」は医学の世界に顕著で、関連出版物に溢れる略号に悩まされたJean-Pierre Bouscau-Faure医師は、医学と保健・福祉の略号辞典、さらに広い分野から取ったDICTIONNAIRE GENERAL DES SIGLESも編纂しているが、
" Prenez les grilles de mots croisés, la majorité d'entre elles comptent désormais deux, trois, quatre sigles quand ce n'est pas davantage. ".
(クロスワードパズルの格子をご覧なさい、今では大抵2,3、4個かそれ以上略号を含むようになっています。)

Dictionnaire de sigles domaines économiques et sociaux (1992)の著者の一人、Danielle Candel氏は序文で、すでに20世紀初めの辞書le Nouveau Larousse illustré の編者が略号の濫用を嘆いていると指摘する一方、問題の大規模化を認める。
またネーミング会社の大手(?)らしいNomenのMarcel Botton社長は
" Décider d'appeler une société Marlboro ou Mercedes, si le créateur est seul à décider, cela ne pose pas de problème. En revanche, si la décision relève d'une structure collégiale ou d'un conseil d'administration, il est difficile de réussir à mettre tout le monde d'accord. Et le consensus se fait généralement sur le nom le plus basique. L'exemple le plus éclatant étant le Stade de France qui, si l'appellation n'était pas déjà prise, aurait pu devenir le SDF. ".
(社名をマルボロやメルセデスにする、これは創業者が単独で決めるなら問題ありません。それに対して集団組織や理事会で決めるとなると、みんなの同意を得るのはむずかしい。一般に、いちばん基本的な名前に落ち着くのです。その何より明らかな例がスタッド・ド・フランスで、すでに使われてさえいなければ呼び名は「SDF」になったかもしれません。)

SDFという施設や企業名は探しても見つからない。SDF(sans domicile fixe)ホームレス のことか。

実際には通称としてSDFが用いられ「ホームレス」との類似は洒落誘発性を持つようだ。建設中1995年末まではle Grand Stade また完成後もオリンピック開催地がロンドンに決まるまで一時Stade de France - Paris 2012とも呼ばれたことがある。


CPEのもじり方

2006-03-27 10:04:16 | インポート

Alphabet Contrat Première Embauche (CPE)の訳は、「初就業契約」(産経)「初採用契約」(赤旗)とまちまちだが、Jean Véronis 氏のBlogs: Carrément Plein d'Expressions (Technologies du Language)で"Contrat Précarité Exclusion"(不安定で社会から取り残される契約) "Contrat Pour l'Esclavage"(隷属のための契約)などのもじりが現れているのを知る。

"Contrat Pour Ejecter”(はじき出すための・・・)"Contrat Pour l'Exploitation "(搾取の・・・) 根気よく探せばもっとあるかもしれない。

"Contrat Pour l'Elysée"(〔ド〕・ヴィルパン首相の)大統領選狙いの契約、これは保守の一部から出ている声らしい。

CPE ? C comme chômage, P comme précarité, E comme exploité... ?(Le Monde, 19/03/06 )から ? Cocktails, pavés, émeutes ?(火炎瓶、 舗石、暴動 )を追加。

図はブラッチェリGiovanni Batista Bracelli の人体アルファベット。


ウァイス『ロダンの生涯』  ドレフュス事件とロダンとドガ

2006-03-24 07:21:44 | インポート

ウァイス『ロダンの生涯』(榊原晃三訳 二見書房 1969)は「小説」だった。
うずくまった姿勢で彫刻『ダナイード』()のモデルを務めるカミーユ・クローデルは、こんなふうに描かれる。

「・・・彼があまりに熱心に制作しているので、彼女は息をするのもはばかられた。今は、神も彼の邪魔をすることはできないだろうと思った。
 彼女はそのままのポーズを続け、ついに背中がこわれるかと思え、筋肉がきりきりと痛んだ。
 しかし、彼はただこういうだけだった、『もっと肩を高く挙げなさい。お尻が高すぎる。ほんのちょっとも我慢してられないのかい。なんだ!横にそう動いちゃだめじゃないか』」

訳者榊原氏によれば「・・・しかも、この小説を書くにあたって、作者は事実をいささかも曲げておりません。作者ウァイスは、この小説を書くにあたって〔繰り返しが気になるが榊原氏原文のママ〕、数年もフランス、イタリア、オランダに滞在し、膨大な資料を集めたということです。そして伝記小説の画期的な手法を発見しました。つまり、ロダンの実伝はいささかも曲げたり切り捨てたりすることなく、その告白部分だけフィクションで埋ずめ、壮麗な一大ロマンに仕上げたのです」
原著Naked Came I : A Novel of Rodin by David Weiss のAmazon.comレビューでは現在でも評者が揃って高い点をつけている。
問題のドレフュス事件に関して、この本でカリエールに「君も彼(ドレフュス)を支持する気なのか」と尋ねられロダンは答える、「畜生!ぼくにはもう厄介なことづくめとは思わんのかね」

反ドレフュス派として知られたドガと、「バルザック像のごたごた」で手が一杯、「新しい闘い」にまで巻き込まれたくないロダンの違い。
頭からドレフュス有罪と決め付けるドガ、中立を保ちたいロダン。ちなみにカミーユ・クローデルは「もちろんですとも、有罪よ」なのだ。

ロダンはドレフュス再審請求請願書への署名を断り、バルザック像問題では味方だった人たちから裏切り者扱いを受ける。

ロダンを問い詰めるドガは肥満しているが「しぼんだ感じ」、「いつもぶつぶつ不平をこぼしているような目」をしている。

Degas 図はドガの自画像(1890年頃) ユダヤ人憎悪が募るにつれドガは年来の友だったリュドヴィック・アレヴィ(オッフェンバックのオペレッタ台本を書いた)と疎遠になって行く。
ドガの言葉「芸術家は独り生きねばならず、その私的生活は知られぬままであるべきだ」をエピグラフとする論考がDegas & the Dreyfus Affair Portrait of a Poisoned Friendship:
Edgar Degas, Ludovic Halévy and the Dreyfus Affair By Elissa Harwood http://blogs.princeton.edu/wri152-3/f05/eharwood/