ダイ・シージエ『バルザックと小さな中国人のお針子』(早川書房)の映画版、『小さな中国のお針子』をGYAOで視聴。http://www.gyao.jp/sityou/catedetail/contents_id/cnt0028514/
たまには素直に感想を記しておこうと思うが、言葉に窮する。いくつかの場面は、長い間記憶に残るだろう。星評価なら5個でも10個でも進呈したい。
小説は2000年に発表、「世界30カ国で翻訳」(訳書帯)されたが、原稿は複数の出版社で断られた後、ガリマール書店に送られた。ダイ・シージエはある朝、作家で原稿審査委員のジャン=マリ・ラクラヴティーヌからの連絡で受諾を知る。
? Nous l'avons corrigé ensemble, précise le cinéaste écrivain. Je faisais des fautes de grammaire. Le français n'est pas ma langue, mais je tenais à écrire dans cette langue, surtout pour évoquer le bonheur que m'avait procuré Balzac ou Dumas. Il m'a fait supprimer des adjectifs, corriger certaines tournures, mais m'a incité à conserver des maladresses. ?
「私たちは二人で原稿に手を入れました」、映像=活字作家は付け足す、「文法の誤まりもありました。フランス語は私の国語ではないけれど、この言葉でどうしても書きたかった、とりわけバルザックやデュマが体験させてくれた幸せを喚起するために。彼は余分の形容詞を削り、ある表現を直すように言いましたが、不器用なところもそのまま残すよう、励ましてくれました」
出版社=書店le Dilettanteのドミニック・ゴーティエは新しい才能を見つける名人として知られるが、ガリマール書店のセールスから今度出る本の話を聞いて愕然とする。文革時代、再教育に僻地に送られた中国人青年が、禁じられた文学の古典を読む・・・。自分が原稿を断った作品だ!(”L'histoire des origines” Le Monde 23.08.02)
本が出た頃、ダイ・シージエは「映画監督として地道にキャリアを積んで」いた。フランス語で書いたのは初めてだが、作家としてもまったくの新人ではなかった。(新島進氏、訳者あとがき) しかしベルナール・ピヴォが「ブイヨン・ド・キュルチュール」で絶賛し「華々しい成功」(同)を収めるまでの経緯は、出版界の「いい話」として、伝説化しつつあるようだ。この前引いたL’Express記事(*)でも、ガリマール書店営業部長ブリュノ・カイエの話として、
?Charmés par le roman de Dai Sijie, les représentants ont travaillé dur et rapporté de nombreuses commandes. Du coup, on a effectué un premier tirage de 8 000 exemplaires.?
ダイ・シージエの小説に魅了されたセールスが、頑張ってたくさん注文を取って来ました。早速初刷8 000部を刷り上げたのです。
(当初は3 000部の予定だった、それでも数字を聞いたダイ氏は、多すぎると言ったという。前出Le Monde記事)