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もう一度、「魏志」の記述に戻る。吉本は、邪馬台国がかなり進んだ<国家>だという一つに「錯綜(さくそう)する官制」があるからだとして、それぞれの国の職階(しょっかい)をあげている。以下、一例として並べてみる。
対馬(つしま)国 大官 卑狗(ヒク→ヒコ)
副 卑奴母離(ヒヌモリ)
一支(いっし)国 官 卑狗(ヒク)
副 卑奴母離(ヒヌモリ→ヒナモリ)
伊都(いと)国 大官 爾支(二キ)
副 泄護<角ヘンに瓜=コ>(セモコ)
暗渠<角ヘンに瓜=コ>(ヒクコ)
奴(な) 国 官 凹馬<角ヘンに瓜=コ>(シマコ)
副 卑奴母離(ヒヌモリ)
不弥(ふや)国 官 多模(タマ)
副 卑奴母離(ヒヌモリ)
投馬(とま)国 官 弥弥(ミミ)
副 弥弥那利(ミミナリ)
邪馬台(やまたい)国 官 伊支馬(イキマ)
次 弥馬升(ミマツ)
次 弥馬獲支(ミマエキ)
次 奴佳<革ヘンに是>(ヌカト)
吉本によれば、ここにあげられた官名は、総称(そうしょう)的な意味で、人名や地域名(ちいきめい)とよく分けらないとし、例として以下のような『古事記』における初期天皇群の名前との対応(たいおう)関係をあげている。
初代・カムヤマト・イワレヒコ 神武(じんむ)
二代・カムヌナカハミミ 綏靖(すいぜい)
三代・シキヒコタマテミ 安寧(あんねい)
四代・オホヤマトヒコスキトモ 懿徳(いとく)
五代・ミマツヒコカエシネ 孝昭(こうしょう)
六代・オホヤマトタラシヒコ 孝安(こうあん)
七代・オホヤマトねこヒコフトニ 孝霊(こうれい)
八代・オホヤマトねこヒコクニクル 孝元(こうげん)
九代・ワカヤマトねこヒコオホヒヒ 開化(かいか)
十代・ミマキイリヒコイ二エ 崇神(すじん)
十一代・イクイリヒコイサチ 垂仁(すいにん)→サオ彦・サオ姫
十二代・オホタラシヒコオシロワケ 景行(けいこう)→大和タケル・弟橘(おとたちばな)姫(ひめ)→倭(やまと)姫
十三代・ワカタラシヒコ 成務(せいむ)
十四代・タラシナカツヒコ 仲哀(ちゅうあい)→神(じん)后(ごう)(オキナガタラシ姫)
十五代・ホムタワケ(オホトモワケ) 応(おう)神(じん)
(「起源論」参照・傍線・二重線・→以下も筆者)