海鳴記

歴史一般

『島津久光=幕末政治の焦点』を読んで (1)

2009-06-29 11:42:30 | 歴史


 久しぶりのブログ再開である。
 しばらく前、ある理由があって自分のブログを覗いたところ、もう誰も見ていないだろうと思っていたのに、毎日コンスタントに二十人前後の人が入っているのには驚いた。もう三ヶ月近く休んでいたのに、である。これでは何か続けなくては失礼にあたる、と真面目に考えたわけではないが、最近、たまたま読んだ町田明広氏の本に快い刺激を受けていたので、これを整理してみようと思いついたのである。また、明治16年終わりから翌年の9月まで静岡県令だった奈良原繁の動静も少しずつわかってきたので、これも綴ってみようと思う。

 さて、町田氏の『島津久光=幕末政治の焦点』<講談社選書メチエ>は、文久2年(1862)の率兵上京から慶応3年(1867)の王政復古あたりまでを、久光を中心とした薩摩藩の中央政治との関わりを論じたものである。一般の読者向けなのでわかりやすく、また学術論文では踏み込めないところまで言及していてすっきりした。何か胸のつかえが取れたような感じがしたのである。歴史の学術論文というのは、専門家向けだから仕方がないものの、原稿枚数の制約があるのか省略も多いし、また実証を重んじるあまり文章が生硬になるきらいがあり、どうもわれわれ門外漢にはとっつきにくいのである。
もっとも、町田氏に関する限りは、「八・一八政変」に関する論文も読んでいたので、最初からそれほどの抵抗はなかった。ほぼ同時期に読んだ佐々木克氏の論文と較べても、読みやすかった記憶があったからだ。どちらの詳細も記憶から遠くなっているが。

 ともかく、この本で記憶に残ったこと、感心したこと、うーんと思ったことなど思いつくままに綴ってみよう。
まず第一に、芳即正(かんばしのりまさ)氏の『島津久光と明治維新』を超えた研究成果を踏まえているという印象である。研究成果というのは、より多くの第一次史料を駆使し、より説得力のある論を展開できているということである。