にわとりのにわ a hen's little garden

歌うたい時々クラリネット吹きの日高由貴のblog。
ちいさなこころのにわの風景をすこしずつ書きとめていきたいです。

内側の他者

2008年11月03日 | 日々のこと
土曜日、忠田愛さんの個展、内側の他者に行きました。

壁にかけられた作品たちを最初に見たとき、小さいころ、天井のしみがだんだん人の顔に見えてきたときに感じたような、闇にすいこまれていくような感覚に襲われて、正直に言ってすこし怖いと感じましたが、時間が経つにつれて、作品に描かれたひとが、優しい顔や、おどけた顔や、なにか話したそうな顔、だまって微笑んでいる顔など、いろんな表情を見せてくれるようになり、あたたかいまなざしで見つめられているような気がしました。

何枚もにわたって描かれた顔は、生者のようでもあり、死者のようでもあり、すこしずつ異なる表情でありながら、一貫したそのひとのたしかな「気配」のようなものがあって、なんだか親しみを感じました。

普段何気なくひいてしまいがちな、生と死の境界をゆるやかに揺るがし、生のなかにある死と、死のなかにある生のどちらをも見せてくれているようでした。

会場におられた愛さんと、ひさしぶりにお会いしてお話したところ、「今回の作品は、もう自分の手を離れたものだから、次のことを考えているんです」とおっしゃっていました。

愛さんの作品や文章にふれるたび、華奢な外見とやわらかい笑顔の奥に秘められた、創作に対する鋼のような意志と情熱に、驚くと同時に、励まされます。

次回はいったいどんな作品が生み出されるのか、いまからたのしみです。