にわとりのにわ a hen's little garden

歌うたい時々クラリネット吹きの日高由貴のblog。
ちいさなこころのにわの風景をすこしずつ書きとめていきたいです。

Carmen Lundy's workshop report

2013年06月24日 | 2013 Carmen Lundy's workshop report
Carmen Lundyさんのワークショップレポートです。

ワークショップの内容は、Carmenさんのオリジナル3曲のなかから、1つ好きな曲を選び、アレンジして歌ってアドバイスをいただくというものでした。

課題曲はこちらで聴くことができます。

◆In Love Again◆

まずはじめの参加者の方が、Carmenさんの”In love again"という曲を歌われました。
とても上手な方でしたが、緊張もあってか、まだすこしリズムに乗り切れていない感じでした。

Carmenさんは、「とてもいいですね。それではもうすこしゆっくり歌ってみてください」とおっしゃり、かなりテンポを落として、参加者がもう一度歌われました。

オリジナルは軽快な感じの曲ですが、テンポを変えると、ぐっとブルージーな雰囲気になり、参加者のかたの、艶のある大人っぽい声がよく生かされていました。

そして、そのあとでもう一度最初のテンポで歌うように指示され、参加者の方が歌われると、はじめに歌ったときとは比べ物にならないくらい、グルーヴ感が出てきました。


◆Walking Code Blue◆

それから、ギターとヴォーカルのDUOで参加されていた方が、”Walking Code Blue”という曲を歌われました。

すでにプロとして活動されている方たちで、表情のつけ方も、表現力も素晴らしかったです。

この方たちに対しては、「ステージは全部あなたのものです。もっと自由に動いて、パフォーマンスしてください。」とアドバイスされました。

2回目に、ヴォーカルのかたがステージを歩き回りながら、歌詞に応じて身体を動かしながら歌われると、視覚的な要素が加わり、最初よりもさらにのびのびと、表現が豊かになっているのがわかりました。

Carmenさんのパフォーマンスを見ていて強く感じたことですが、歌が素晴らしいのはもちろんのこと、「どう見せるか」というヴィジュアル的な表現の巧みさが際立っておられました。

マイクをスタンドに固定して歌うのか、手に持って歌うのか、歩きながら歌うのか、歌詞の内容によって、客席のどこを見るのか、そういったことが、すべて効果を考えた上で、緻密に計算されているように思いました。

もしかすると、その場の気分に応じて自由に動いておられるのかもしれませんが、そうなるまでに、相当な研究と訓練があるのだろうなと感じました(もちろん、天賦の才能もあると思いますし、わたしが勝手に感じただけなので事実とは違うかもしれません)。

顔の造作の綺麗さや、スタイルのよさ、豪華な衣装が大事だという意味ではなく、衣装の色彩や照明の使い方、身体の動き、表情という意味でのヴィジュアル表現はステージで演奏する以上はとても重要な要素だと思っています。

目を閉じて聴いていても音楽が素晴らしいのはもちろんですが、Carmenさんのステージを見ていると、ダンサーのような身体のしなやかな動きや表情の豊かさから伝わってくるものも多かったです。

表現のしかたはひとそれぞれで、たとえばじっと動かずに歌うというのも方法のひとつだと思います。
ステージ上での所作はたぶん一生追求していかないといけないと思いますが、素晴らしい表現の一例を見ることができて、とても勉強になりました。


◆Old Friend

”Old Friend”という曲を歌った若い参加者のかたに対しては、

「あなたはよく響く、美しい声をしていて、素晴らしい楽器を持っていますね。
ぜひこれからもそれを磨いていってください。」と褒められたあとで、

「誰か、あなたにとって大切な人はいますか。
つまり、あなたにとって、この歌のOld Friendにあたる人のことです。
その人が誰なのか、わたしたちに言う必要はありません。ただ、その人のことを想いながら、この歌を歌ってください」とおっしゃいました。

そのあと、同じ方が二回目に歌われたのですが、一回目は朗々と歌いあげるようだった歌が、聴く人の心にそっと寄り添うように変化していました。

Carmenさんが、

「いい(OK)ミュージシャンと素晴らしい(good)ミュージシャンをわけるのは、
どれだけ周りの音を聴いているかということです。
共演者のひとが何をしているのか、聴いてください。
そして、一緒に音楽を作る、という気持ちで歌ってください。」

とおっしゃり、その参加者のかたにエリス・レジーナ(Elis Regina:ブラジルの歌手)を聴いて勉強するよう、薦められました。


◆ ◆ ◆ ◆

ワークショップの一番最後に、参加者全員でステージにあがり、”In love again”の曲のなかでスキャットをまわしました。

Carmenさんのワークショップで感じたことは、Carmenさんは音楽に対してたくさんのアプローチを持っていて、参加者に対してさまざまな観点からアドバイスをされているということでした。

ある人には技術的なアドバイスを、また別の人には演奏するときの気持ちの持ち方のアドバイスを、というふうに、技術に偏るわけでもなく、精神論に偏るわけでもない、というバランスのよさが素晴らしいと思いました。

これは以前に受けたCathyさんや、Sheilaさんのワークショップでも感じたことですし、現在日本で受けているレッスンや、ボイストレーニングの先生にも感じることです。

優れたパフォーマーであると同時に素晴らしい教育者であることは可能である、とこうした方たちを見ていると実感します。

そして、そういった方たちの言葉は、同じ方向を見て、「一緒に学ぶ」というところから発せられているように感じます。