にわとりのにわ a hen's little garden

歌うたい時々クラリネット吹きの日高由貴のblog。
ちいさなこころのにわの風景をすこしずつ書きとめていきたいです。

Cathy Segal Garicia's workshop vol.5

2012年11月18日 | 2012 Cathy's workshop rep
♪~Everytime we say good-bye~♪

次は、男性ヴォーカリストの登場です。

Cole Porterの美しいバラード、"Everytime we say good-bye"を歌われました。
歌のあと、一同の拍手に包まれました。

(Cathy)
とても詩的(poetic)で美しかったわ。
それじゃあ、もう一度歌ってもらえるかしら?
最初はとても緊張したと思いますから。

(参加者)
はい。
とても緊張しました。

(Cathy)
少ない観客の前で歌うのは、とっても難しいわよね。

(Phillip)
ほんとうにそうだよね。
みんながこっちを見ていて・・・。
でも、結局みんな楽しみたいだけなんだ。

素晴らしかったです。
ピアノの立場から言わせてもらうと、僕は、男性ヴォーカルの伴奏をするのが大好きです。
女性ヴォーカルとは音域が違うから、演奏のしかたを変えないといけない。
それはとっても面白いです。

(Cathy)
それはとっても興味深いわ。
あなたはテナー、それともバリトンですか?

(参加者)
たぶんテナーだと思います。

(Cathy)
あなたはこの曲のキー(音域)が気に入っていますか?

(参加者)
はい。

(Cathy)
あなたは最初の部分のメロディーを把握してますか?

(参加者)
はい。ただ、最初のうち、コードがわからなくて自分の音をさがしていました。

(Phillip)
最初のうち、僕は歌を聴きながら自分の演奏を調整していました。
この楽譜は違うけど、ときどきひどい楽譜もあります。
その場合、最初のうち、なかなか歌とうまく調和しないこともあります。

(Cathy)
これはわたしの経験からいうのですが・・・最初の音というのは、なかなかわかりにくいことも多いですよね。
もし、自分の歌おうとするメロディーの最初の音がよくわからないときは、演奏に入る前に、ピアニストに「最初の音を弾いてもらえませんか」とお願いしてもいいと思います。

(Phillip)
そう。いろんなやりかたがあります。
曲によっては、最初の音を見つけるのがとってもむずかしい。
たとえば、「いそしぎ」なんかは、最初の音は調の半音下の音で・・・コードのなかの13度目の音だから、音をとるのがすごく難しいんです。

それじゃあもう一度歌ってみましょう。

――参加者がもう一度歌う。
一同拍手。

(Cathy)
素晴らしいわ。
自分でもわかっているとおもいますが、あなたはすべての音を正確に歌ったわけではないけれど、感情(emotion)が素晴らしくて、さらにそれを表現する方法が素晴らしかったです。
とても感動的だったわ。
選んだ音も、タイミングもとてもよかったです。

この歌に関して、なにか質問はありますか?

(参加者)
歌の全体をつかむのにはどうしたらいいですか?
たとえば、A、Bなどの形式の中で、一部は歌えるけど、
ある部分についてはうまく歌えないんです。

(Cathy)
わたしには質問の意味がよくわからないのだけれど・・・
聴いていると、ひとつの完全な歌として聴こえましたが・・・。

(Phillip)
たとえばクラッシック音楽だったら、同じ形式が繰り返される時に、
二回目に繰り返す時の効果を高めるために、意図的に一回目を静かに演奏したりする。
彼はそういうことについて質問したいんじゃないかな。

(参加者)
そうです。

(Cathy)
わたし自身は、あまりそういうことは考えてないわ。
あなたの歌は素晴らしかったですし、音楽はそのときにつくられるものですから(In the moment)。

たとえば、明日、あなたの気持ちは変わっているでしょう?
恋人は明日になればたぶんまた戻ってきますからね(笑)

(このうたは、「あなたに『さよなら』というとき、いつも自分の一部が死んでしまう気がする。神様はどうしてあなたを行かせるんだろう。さよならを言うときはいつも、長調の調べは、哀しい短調の調べになる。」という内容の歌詞です――筆者注)。

ジャズが、特別で素晴らしいところは、毎回違う演奏をすることを許されているところです。
ブリッジ(サビの部分)から始めたり、終わりの部分から始めるなど、いくつかアレンジ(編曲)をほどこすこともできますが、この曲に関しては、このままがいいと思います。曲自体がとてもシンプルで美しいからです。

(Phillip)
歌と伴奏の関係について、芸術的な観点から言うと、時々ピアノを弾くのをやめて、声だけを響かせる箇所をつくりたいと思っています。
一番大切な気持ちが出ているところで、伴奏なしで声だけになれば、声が完全に聴こえる。一番微妙なところまで完全に聴こえる。それは、とてもかっこいいと思うんです。
だから、できればそのチャンスをつくりたい。
それはまるであらかじめアレンジしていたように聴こえるかもしれませんが、実際はアドリブです。
歌と伴奏の対話ですね。

(Cathy)
この曲、とてもあなたに合っていますね!
素晴らしかったです。


(vol.6に続く)

~Everytime we say good-bye~
lyrics&music by Cole Porter


モンゴルのうた

2012年11月17日 | 日々のこと
馬頭琴を弾きながら、ホーミーと呼ばれる、ひとりのひとが二つ以上の音を同時にだす唱法で歌う岡林立哉さんのライブに行ってきました。

まだ見ぬモンゴルの、どこまでも続く金色の草原と、広い空、草原をわたる風、馬の蹄の音、大地の振動、満点の星空と静寂が伝わってくるようでした。


小学校のころ、国語の教科書で習った「スーホの白い馬」というお話で知った「馬頭琴」という楽器。

生で見るのは初めてでしたが、端正な形をした楽器でした。

馬のしっぽで作られた弓と弦。本体は、木だけでできたものもあり、それは透明感のある音がするそうですが、岡林さんが使っておられる楽器はヤギの皮をはっていて、土の香りのする、古い響きがするとのことでした。

宇宙とつながっているような、不思議な音。

いい音を出すために、試行錯誤をくりかえし、工夫を凝らして作られてきた歴史があるのだろうな、と思うと、楽器をつくってきたひとたちの努力と想いが伝わってきて、すこし胸が痛くなりました。

モンゴルの民謡から、宮沢賢治、山之口獏の詩をもとにつくられたうた、アイルランドの民謡など、世界中を旅するような音楽。

小さいころからの夢は、世界中を旅して、いろいろなうたに出逢うこと。
小学校の卒業文集の将来の夢に「旅行家」と書いたのを覚えています。
そんな職業があるのかどうかわかりませんが(笑)

いつかモンゴルにも行ってみたいです。

12月以降のライブスケジュール

2012年11月17日 | スケジュール
道を歩いていたら、黒猫ちゃんに遭遇。

むかしは断然犬派だったのに、身近なひとに猫好きが多いせいで、
さいきん猫も気になります。

英語のスラングで、ジャズ好きのことを"cat"と呼ぶというお話を聴いたことがあります。
実際、ミュージシャンにも、お店の方にも、ジャズ愛好家にも、猫好きのかたは多い気がします。
音楽の好みと犬派、猫派の因果関係を調べてみたら面白いかも。


12月以降のライブスケジュールを更新しました。

ほかにも、職場の研究所の忘年会で歌わせていただくことになり、
ちょっぴり緊張&わくわくしています。
職場にも、音楽好きなかたが多く、うれしいです。
前にアルバイトさせていただいていたホテルでも、音楽好きなかたが多くて、
こうしてあたらしいつながりができるのは、楽しい。

さいきんばたばたしていますが、キャシーさんのワークショップレポートもすこしずつアップしていきますので、気長にお待ちください。

schedule

Cathy Segal Garcia's workshop report vol.4

2012年11月05日 | 2012 Cathy's workshop rep
♪~Lullaby of birdland~♪


次のかたは「バードランドの子守唄」を歌われました。

「歌うと思っていなかったので、下手だと思います。すみません。」と恐縮されていましたが、とっても素敵な歌でした。

(Cathy)
なんて素敵なの。あなたはとっても魅力的な声(interesting voice)を持っていますね!

(参加者)
ありがとうございます!とっても緊張しました。


―――ここで、参加者の方が、「So 緊張しました。」と英語と日本語をまぜて言ったので一同大爆笑になりました。


(Cathy)
あなたはよくライブで歌っているの?

(参加者)
いいえ。時々・・・年に一回か二回です。

(Cathy)
歌うのってとってもいい気持ちじゃない?楽しいわよね。
すごくいい演奏でしたよ。
最初は緊張していたと思うから、次は3回歌ってみてくれないかしら?
そうしたらどうなるか見てみましょう。


―――参加者の方が、今度は3回続けて歌われました。
音も、リズムも、一回目とすこしずつ変化しているのがわかります。
いいフレーズが出たり、チャレンジングな音で歌われた時には、ところどころで、Cathyさんから”Hey”と励ましの声がかかりました。
参加者のかたが、最後のほうでスキャットをされ、
演奏が終わると、みんなの拍手に包まれました。


(参加者)
すみません。スキャットってやったことがなくて、今日初めてだったんです。

(Cathy)
素晴らしいわ!
なにが素晴らしかったのか伝えさせてくださいね。
まず、なによりもあなたが勇敢(brave)だったこと。
それから、ふたつめは、とてもよくフィリップの音を聴いていたこと。
これは歌を聴くとよくわかりました。
フィリップの演奏によって、あなたの歌は変化していましたね。
それは、とても素晴らしいことです。
声が綺麗で、ピッチ(音程)もいいです。
それから感情表現も豊かでしたね。
たとえば”kiss"というときなんか・・・わたしはあの歌い方、とっても気に入ったわ!
(この参加者の方は、kissという単語を歌うときに、ささやくように歌っておられて、とてもセクシーで印象的でした――筆者注)。


(Cathy)
それから、あなたはスキャットをしましたね。
いま、フィリップはVamp(*1)と呼ばれる演奏をしていましたが、通常スキャットをするときは、曲の一番はじめの部分にもどって、新しいメロディーをつくりますよね(You are rewriting melody)。
もちろん、曲の半分だけスキャットするときもありますけれども――ピアニストは、あなたが新しいメロディーをつくっている間、コードを演奏します。
でも今回彼が演奏したのは、2種類のコードだけでしたね。

(Phillip)
そう。いま弾いたのは3―6―2―5(*2)です。


(Cathy)
それは、曲の一番最後に使われる、演奏パターンなのです。
これをVampといいます。
フィリップ、もう一度演奏してもらえるかしら?

(Phillip)
もちろん。
この曲のキーはDbですから、3-6-2-5は、F―Bb―Eb―Abになります。
まあいまは2-5-3-6となっていますが。


―――フィリップさんが、2-5-3-6といいながら、しばらくの間Vampを演奏してくださいました。


(Cathy)
さっき何が起こったかというと、フィリップは、あなたが演奏を終えようとしているということがわかって、Vampを演奏したんですね。
あなたはそれを聴いてスキャットを始めましたね。
そしてフィリップはそれを聴きながら、ここで終わり、と決めてエンディングを演奏した。
あなたはそれを聴いて、自分も一緒に終わったんですよね。
それはすごいことなんですよ。
音楽的なタイミングがあうって、ほんとに楽しいことですからね!
素晴らしかったですよ。


―――キャシーさんのお褒めの言葉のなか、参加者のかたはしきりに照れておられました。
大きな拍手のなか、参加者のかたが席に戻られると、キャシーさんがVampについての説明を続けられました。


(Cathy)
Vampにはいくつか種類があって、よく曲の最後に演奏されますが、時々、曲の途中でソロの代わりに演奏されることもあります。
ドラム奏者がソロをしているときにピアノ奏者がVampを演奏すると、ソロが面白くなるんです。
ハーモニーができますからね。

(Phillip)
そう。よくドラム奏者が「なんでみんなのソロのときにはちゃんと伴奏があるのに、僕のソロのときだけ僕独りなんだ?」と言うので、その気持ちを直してあげるためにVampをいれます(笑)
ピアノで静かにVampを演奏しながらベースにも入ってもらって、ドラムソロをやると、けっこうエキサイティングになります。

(Cathy)
そう。エキサイティングね。

(Phillip)
それからイントロ(*3)でやるときもある。

(Cathy)
そうね。そうそう、イントロについてもうひとつ話したいわ。
わたしは、イントロは長めが好きよ。短いイントロって、ちょっとせわしないでしょう?
イントロを演奏している間、バンドはなにかをつくりだして(create something)いますよね。
そこにわたしは自然に入っていきたいの。
だから、ちょっと長めのイントロが好きなんです。

では次のかたに歌ってもらいましょうか。


(vol.5に続く)

~Lullaby of birdland~
lyrics by George David Weiss
music by George Shearing


*1)Vamp:種類のコードを繰り返すこと。Bossa Novaのエンディングなどによく使われる。

*2)3625:4度ずつ動くコード進行のこと。

*3)イントロダクションintroductionの略。前奏のこと。


Cathy Segal Garcia's workshop report vol.3

2012年11月02日 | 2012 Cathy's workshop rep
♪~Shiny Stokings~ ♪

まず、キャシーさんに指名されたはじめのかたが、”Shiny Stokings”という曲を歌われました。

一回目は歌詞を歌い、二回目はスキャット(scat:歌詞ではなく、適当な音をあてて声で即興演奏をすること)をされました。
スキャットが終わると、ピアノのソロに入る前にキャシーさんが指示を出していったん演奏をとめ、アドバイスをされました。

(Cathy)
とっても素敵。あなたの歌が聴けてうれしいわ。
それに、一番初めに歌うというのは大変な状況よね。すごく緊張したと思うわ。

(参加者)
はい(笑)

(Cathy)
まず、フィリップの音をよく聴いてみて(Keep focus)みてください。フィリップのグルーヴ(groove=リズムのうねり)をよく聴いてみて。
わたしには、あなたがとってもいいグルーヴ感を持っているのがわかります。
ただ、緊張すると、それが出せないのよね。

(参加者)
そうなんです。

(Cathy)
それでは、フィリップのすることをよく聴いてみたら、なにが起こるかみてみましょう。
スキャットをするときも――それにしてもあなたのスキャットは素晴らしかったわ――同じです。
フィリップのピアノを聴いて、歌を考えて、また聴いて・・・というふうにしてみてください。
それでは何度か歌って、心地よくなってからスキャットをしてみましょう。

―――キャシーさんのアドバイスを聴いてから、参加者の方がもう一度歌われました。
さっきよりもリラックスして、表現の幅が広くなり、のびやかになっているのがわかりました。
参加者の方の歌をふくらませるように、フィリップさんの美しい音がよりそっていきます。

(Cathy)
とっても素敵よ。
最初にうたったときとは感情表現が違っていましたね。
この曲の歌詞が悲しい内容(恋人がほかのひとに心を移してしまった)というのもあるけれど、最初はちょっと悲しい感じがしたわ。
でも、二回目は、フィリップ、彼女があなたをとってもよく聴いているのがわかったでしょう?
最初と全然違っていたわよね。

そしてスキャットはほんとにかっこよかったわね!
あなたはとてもいいダイナミクス(強弱の表現)を持っている。強弱の変化がないととても退屈になってしまいますから、ダイナミクスは大切です。
面白い音を選んで、とっても面白いハーモニーをつくっていましたね。

それから、モチーフ(いくつかの音符からなる連なり)をくりかえしくりかえし発展させていましたね。とっても面白かったわ。
途中でハプニングが起こって、「わたしはどこかしら?」と思った時に、とても勇敢に前に進みましたね。
そしてとってもうまくそのハプニングを使いました。
とっても楽しそうに歌って、ほんとに素晴らしかったわ!!


(vol.4に続く)


~Shiny Stokings~
music by Frank Foster
lyrics by Ella Fitzgerald(*1)

*1)ジョン・ヘンドリックスの歌詞もありますが、今回はEllaのヴァーションです。







Cathy Segal Garcia's workshop report vol.2

2012年11月02日 | 2012 Cathy's workshop rep
♪~You'd be so nice to come home to~♪



まず初めに、キャシーさんとフィリップさんが演奏してくださいました。

曲は、"You'd be so nice to come home to"でした。

初めに、「みんなが知っていると思うので、この曲にしますね。キーはDmで、ゆっくりとグルーブする感じ(リズムがうねる感じ)でやろうと思うの」とキャシーさんがフィリップさんに伝え、演奏がはじまりました。

キャシーさんの声は、肩の力がぬけていて、決して声をはりあげるわけではないのに、艶があり、遠くまで響く声でした。一つ一つの音がニュアンスに満ちていて、対話をするように、音が紡がれていきます。

歌詞のなかの”August moon(8月の月)"という箇所を”April moon(4月の月)"に変えてうたっておられたので、演奏が終わったあと、質問の時間に「歌詞を4月にかえられたのには、4月に特別な意味がありますか?」とお尋ねしたところ、「いいえ。歌詞を忘れちゃったんです」と笑いながらおっしゃいました。

そして、「集中するにはどうすればいいですか」という質問に対しては、
「集中できないのにはいろいろな理由があるので、その理由にもよりますが・・・わたしのやり方は、静かにすることです」とおっしゃいました。

「ひとつは、頭のなかを静かにすること。考えるのをすこしやめて、静かになるのを待ちます。
それから、演奏もシンプルにして、休みをたくさんとるのです。」

そして、Vol.1でもご紹介したように、不安をコントロールするためのひとつのアイデアとして、キャシーさんが使っている方法を紹介してくださいました。

加えて、不安になっているときは自分のことで頭がいっぱいになっているので、周りのミュージシャンの音をよく聴いてみる。そうすれば、自然に集中できると思う、とおっしゃっていました。

それから、ある歌手のお話をしてくださいました。
そのかたはスキャットをするわけではなく、キャシーさんは、最初の3曲くらいを聴いたとき、普通歌われるものと歌詞が違うのが分かりましたが、それが即興なのかどうかわからなかったそうです。

ただ、聴いているうちに、その歌手のかたが、即興をしていることがわかったとのことでした。

大きなビジョンに向かって構築していくのではなく、ほんのすこし歌詞を変えることによって、まるで日本の庭園のように、限られた小さなスペースのなかで即興をしていたのだそうです。

彼女のようなスタイルもいいと思う、とキャシーさんはいい、いろいろな歌い方があることの例としてお話をしてくださいました。


さて、次はいよいよ参加者のひとが実際に歌っていきます。


(vol.3に続く)


~You'd be so nice to come home to~
music&lyrics by Cole Porter