にわとりのにわ a hen's little garden

歌うたい時々クラリネット吹きの日高由貴のblog。
ちいさなこころのにわの風景をすこしずつ書きとめていきたいです。

猫なで日記

2008年07月12日 | 日々のこと
田辺聖子さんのエッセイが好きで、いまも『猫なで日記』を読んでいます。
面白くて、電車のなかで読んでいると思わず顔がにやけてしまうので要注意!わたしのなかでは、黒柳徹子さんのエッセイと同じく、電車のなかで読むのが危険な本です。

田辺さんのエッセイをもとにつくられたNHK朝の連続ドラマ『芋たこなんきん』も大ファンでした。(主人公、花岡町子役の藤山直美さん、「カモカのおっちゃん」役の國村準さん、イーディス・ハンソンさん、いしだあゆみさんなどなど、素敵な役者さんぞろいで、毎日の放送がほんとうにたのしみでした。)

田辺さんの文章には、明るさというか、あたたかさがあると思う。

辛いことがあっても、まあ一日寝て、翌朝コーヒーでも飲めばなんとかなるさ、というような、生きることに対する希望のようなものが根底にあるような気がして、だから安心して読むことができます。恋愛や人生についての箴言を、決してお説教臭くなく、ユーモアに包まれた文章で、さらりと書いておられるところがすごい。

・・・けれども、文章が軽やかであるからと言って、作家の方が苦労をされていないわけはなく、舞台裏はいろいろと大変なご様子。むしろ軽やかに見える文章のほうが、書いたご本人は苦しんでいることもたくさんあることでしょう。

ベテランの小説家の方でもこんなに苦労されているんだなあと思うと、なんだか励まされる気がします。

ちなみに、小説家の方の舞台裏のご苦労を読むのが好きで、川上弘美さんや、宮本輝さんのエッセイもよく読みます。そして作家の方の、自分を律することがなかなかできずにダラダラしてしまう情けなさに思わず感情移入して、なんとなく仲間を見つけたような気がして安心するのであります。

**田辺聖子『猫なで日記』集英社文庫、1991年(集英社より1987年に刊行)***