(「日本の安全保障に関する初歩的な確認事項(続き))
「まず、中国は台湾について権原を主張し、この主張は認められている。アメリカも、「一つの中国」を承認している。「自分の領土だからと言って武力行使することは認められない」としているに過ぎない。・・・
また、中国と台湾の和解という可能性も視野に入れるべきである。・・・
いずれにせよ、台湾問題はまず米中問題であり、アメリカに付き従う分でだけ日本の問題なのである。」(p56)
ここで木庭先生は、台湾問題を「日本の問題」として捉える見方に疑念を呈している。
この見方によれば、中国と台湾の和解だけでなく、将来的には、アメリカと中国との(日本の頭越しの)”手打ち”の可能性も視野に入れる必要があるだろう。
他方において、私見ではあるが、アメリカの衆愚政治と中国共産党&軍の”暴発”との相互作用によって、米中全面衝突の場面が生じる可能性もゼロではないと思う。
また、ここ数年、アメリカの対中政策ブレーンが本格的に中国共産党の弱体化を図ろうとしていることも確実だろう。
いずれにせよ、台湾問題に関して、日本が独自の判断で動く重要なアクターであるというのには無理があるだろう。
さて、もっと重要なのは以下の点である。
「要するに2014年以来のウクライナ侵攻の脈絡が台湾海峡にはない。したがって、アナロジーが成り立つ形での軍事侵攻は生じ得ない。
アナロジーが成り立たない以上、中国がウクライナに対するロシアのようにして台湾へと侵攻するであろうとは言えない。そのように言える場合にさえ、NATOも、自分たちが攻撃されたとは考えず・ミサイルのポーランド着弾事件に見られたようにそう考えなければならないことを悪夢と考えている、くらいだから、台湾に連帯するとしても、経済制裁と間接的軍事援助の形態となる。参戦はおろか反撃もない。」(p57)
つまり、「自分たち」(アメリカや西欧諸国等)と台湾との間には、市民社会レベルでの連帯が存在していない点が決定的に重要なのである。