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受験に合わせて中3の甥っ子にこんなお菓子の詰め合わせを送ったら、昨日私立高校二校の合格通知の画像がLINEで送られてきた。
滑り止めといえ、彼の住んでいる地域ではトップクラスの高校だ。
本命は三月の公立高校だけれど、とりあえずは、本人はもちろん姉家族全員ほっとしたみたいだ。
あの子がね~、と叔母としても感慨深い。
この甥っ子君、3月後半が誕生日の超早生まれ。優しい性格の上に、小さい頃から、なにもかもが遅かった。発語、母子分離、鉄棒、縄跳び、そしてかけっこ。
小学校低学年の頃は、友だちと鬼ごっこをやって一度鬼をやるとそのままずっと鬼から抜けられず、泣いて帰ってくることも一度ではなかったとか。
いじめられっ子体質で運動音痴に生まれた男子の悲惨さを母親である姉はいつも雄弁に、面白おかしく語っていたものだったけれど、多分、死ぬほど悩んでいたはず。
そんな、負け癖のついていた甥っ子に転機がやってきたのは小学校高学年。彼は体育の授業で持久走と出会った。
ひ弱な長男に何とか自信をつけてもらいたいと考えていた姉は、職場の先輩ママから言われた言葉を、藁をも掴む思いで聞いていた。
その言葉とは。
「短距離がダメでも、長距離なら努力で強くなれるよ。男の子は、小さな目標を立ててそれを少しずつ達成して伸びる子が結構いるんだよね。スモールステップよ。焦らず頑張って」
スモールステップ。姉は、長男に、このスモールステップの生き方を授け、持久走で実践させようとした。
持久走ももちろん最初は300人中280番代という惨憺たる順位だった。けれど、姉のアドバイスを素直に聞いた甥っ子は、雨の日も寒い日も毎日欠かさず、家の周りを何周も走るようになった。その効果は、少しずつ少しずつ現れた。順位が、じわじわと上がったのだ。
やがて甥っ子の中に、「努力×小さな目標=達成」という公式が出来上がる。
小学校を卒業する頃には持久走でトップ5の常連組になり、相変わらず優しい子ではあるものの、売られたケンカは買ってでるたくましさも身につけていた。
小学生の時に自分の生き方の公式を見つけた彼の、中学3年間は輝かしいものだった。陸上部のキャプテンを務め、自ら地域の陸上大会や駅伝大会など大きな舞台で何度も表彰台に上った。
勉強面も持ち前の努力体質でメキメキと実力をつけて成績をあげ、特にスランプに陥ることもなく、校内、塾内のトップグループの一角としてこの春受験を迎えることになった。
この甥っ子のすごいなぁと思うのは、自分の弱点と持ち味をきちんとわかっているということ。
瞬発力やスピードには自信がないから、そこには最初から目標を置かない。そのかわり、小さな目標を立ててそこに向かって一歩一歩努力する。彼にとっては確実に結果を出す方法がこれなのだ。
負け組出身の底力、ここにあり、だね。彼には多くのことを教わったなぁ。その一つが、負けから学べることはいっぱいあるってこと。
この、かわいい甥っ子に合格のお祝いを買ってあげるのが、叔母さんの今のささやかな楽しみなのだ。
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