『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち／山田詠美』

山田詠美の小説は初めてでした。
テンポのいい語り口だからか、つられてあっという間にページをめくっている感じでした。

親しい人の「死」をどのように自分の中で受け入れ、（意図せずとも）亡くなった者から負わされた心の傷をどのように癒していくのか。

亡くなった者との関係性によって再生の道のりや長さは人それぞれ異なると思いますが、その「再生」には必ず何かしらの痛みが伴うことは共通しているのかもしれません。

深く愛するほど、それだけ失うことへの恐れも大きくなり、また失ったときの喪失感は計り知れないものがあります。

でも、誰かと共に生きていく以上、この「愛と恐れ」とは表裏一体なのでしょう。

文中に（正確ではありませんが・・・）、

【私は、「この人が死んだら、私はどうなっちゃうんだろう」と思う人間ではなく、「私が死んだら、この人はどうなっちゃうんだろう」と思える人間になりたい】

というような言葉がありました。

愛することから生じる失うことへの恐れはどうしたら克服できるのか。
そのヒントはこの言葉にあるようにも思いました。