面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

生存競争

2007年12月15日 | Weblog
 考え様によっては過酷な世界だ。椅子は一脚しかない。オーディションとは役の奪い合い。13時開始に到着していない応募者がいたので、所属事務所に問い合わせたら、連絡がなかったので書類選考で落ちたと思っていましたとのこと。メールの送信ミスだった。あらためて来週来て頂くことにしたが、確認して良かった。メールミスで落ちたら浮かばれない。

 1年も修行出来ずに辞める者もいれば、片山竜太郎のように苦節9年、10年目にして世に出る者もいる。アトリエ公演であれば、出演者は10名足らず、例え劇団員でも役が付くとは限らない。付き合いのあるプロダクションから新人を頼まれることもある。僕の方から頼みたい俳優もいる。去るもののことより、じっと耐えて修行に励む劇団員にこそ、あたたかい眼差しを注ぐべきなのに、さらに辛く当たる。揺るぎ無い体力と気力は大きな自信となるからだ。芸道の生存競争は一生続くのだ。辞めるものを責めはしない。だが、嘘は言って欲しくない。一生付いて行きます、と、瞳を輝かせていうな。演劇は恋愛ゲームではない。と、何だか責めているようだが、ただ哀しいだけだ。

 そうなのだ!残っている劇団員に歯の浮くような言葉を言われたことがない。むしろ、小言や悪態の方が多い。櫻井智、安達竹彦、北原マヤ、樋口昇平、片山竜太郎たちは10年以上、佐藤龍星、後藤亨、またか涼等も六年を稽古場で過ごした。高倉、榊原、西本、お世辞のひとつも言えない不器用な者たちが続いている。

 今、一番出て欲しい俳優は塩山みさこだが、なかなか連絡が取れない。勿論1月公演も依頼してあるはずだが、心配になる。本当に風のような人だ。彼女は、気持ち良いほど人に媚びない。櫻井智が彼女の芝居を観て言っていた。普段のそのまま、ふらりと舞台に立って絵になる女優だと。辛口の櫻井嬢、最高の褒め言葉だと思った。羽飾りのいらない大女優になれる人はそう多くない。

泣けるね

2007年12月15日 | Weblog
 11時に日本橋で劇団女優櫻井智と今年最後のイベント打ち合せ。20数年前僕に見つめられて耳まで赤く染めて涙目で見つめ返した15歳の少女が、今や二児の母となり、微笑みながらしっかりと自分の意見をいう落ちついた姿を目の前にして、不覚にも熱いものがこみ上げ、笑って誤魔化した。みんな大人になって行く。当たり前の事だ。「そろそろ頑張ってね」別れ際、まるで母親のような言葉で励まされた。

 13時、映像作家の小和田明くんと昼飯を兼ねて打ち合せ。そこに片山ゲリオンこと劇団俳優の片山竜太郎が合流。小和田くんは僕の3番目の弟子ということになっているが、今や世界的な有名人である。フランスやアメリカで評判の片山ゲリオンの監督は、顔に似ずシャイで、いつも怒って見える。

 14時、小和田、片山と一緒に堀川りょうと合流。どんな組み合わせかというと、正月明けに始まるTV番組の顔合わせに行くのだ。

 15時、仕掛け人のF氏と合流。打ち合せが済んで17時に解散。稽古場へ向かう。

 19時、片山、小和田に安達竹彦を加えて、久々にカウボーイで夕食。このメンバーが揃えば映画の話で尽きない。

 21時、コーヒーを数杯お代わりして解散。何だか体力を消耗して帰宅すると、W氏から六本木へ呼び出し。頼み事をしていたのは僕の方なので、ふらふらしながら、地下鉄に乗る。

 25時、再び帰宅。これから風呂に浸かって読みかけの本を読む。明日は朝から髭をあたりに行こう。まだ、1日が終わらない。何だか泣けるね。きっと誰かの為に生きているのは違いない。