金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【競馬】ルメールやミルコ、どこが凄いのか?

2019-02-23 08:38:58 | 競馬

 今回は騎手がテーマです。

 GⅠ競走や重賞競走は、ルメールとミルコから買えば、大体当たりますよ! ってプロの競馬評論家が言うくらいですから、今さらなのですが、では彼らのどこがそんなに凄いのでしょうか?

 騎手の力量は、大きく2つに分けられると考えています。第一に「馬を制御する技術」。第二に「レースを支配する技術」。

 最初の「馬を制御する技術」とは、行きたがる馬を抑えたり、勝負どころで馬を追ったりする技術のことで、昔でいえば腕っぷしの強い騎手が上手いと言われていたカテゴリーです。ただし、気性に難がある馬を制御するのは難しく、これは腕っぷしだけではどうにもなりません。むしろ「馬の気持ちとシンクロできる力」がある騎手がこの分野の名人となります。
 ここはクリストフ・ルメールの技術が秀でている分野と言えるでしょう。レイデオロのダービー、アーモンドアイのジャパンカップはルメールしか出来ない騎乗だったと思います。もちろん、ミルコ・デムーロもドゥラメンテのダービーなど高い技術を見せてくれます。ムーアやモレイラなど、外国人騎手のレベルの高さは、まずこの技術にあると言って良いでしょう。ちなみに、日本人の中では、福永祐一騎手、戸崎圭太騎手がトップでしょうか。

 次に「レースを支配する技術」です。これは正確にレースのペースを把握して、この上ない仕掛けのタイミングを実現できる力、と言えるかもしれません。レース支配の最も代表的な方法は、逃げて最高のレースラップを踏んでいくこと。これは誰にも邪魔することができません。また、二番手から逃げ馬をけん制してペースを作る支配の仕方もありますし、ゆったりしたペースを、3コーナーからまくり戦法で支配する方法もあります。
 いずれの場合も、正確にペースを把握する力と卓越した勝負勘の持ち主が、この分野の名人ということになります。この分野では、やはりミルコ・デムーロが頭一つ抜けていると思います。彼がGⅠレースで強いのは、このレースを支配する技術が高いからです。

 なお、日本人では、川田将雅騎手、そして武豊騎手。特に武騎手は強い逃げ馬に乗った時は抜群のペース配分でラップを刻むことができます。先週のインティは見事でしたし、エイシンヒカリやキタサンブラックは、武騎手だからこそ活躍できた馬だったと思います。


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【金融】株式投資の醍醐味=未来の妄想力を競い合うゲーム!

2019-02-22 07:24:05 | 金融マーケット
 本日からは、本来の金融説法らしく、株式投資を中心に、有価証券投資をテーマにしようと思います。

 有価証券投資の基本は? と聞かれれば、当然ながら「インデックスファンドの定時定額投資」と答えます。かのリチャード・ハリスも、ハワード・マークスも同じ教えを数多くの生徒たちに説いています。
 私の本業の一つは確定拠出年金制度の普及活動であり、さまざまな機会を通じて「投資教育」にも関わってきましたが、いくらこれを理屈や理論で説明しようとしても駄目で、むしろ「定時定額投資の効果」をいかにバーチャルに体験してもらうかがポイントです。
 多くの日本人にとっては、この定時定額投資をきっちり実行する習慣さえ定着すれば、社会保障問題の多くの課題が解消されると自分は信じています。

 一方で、相応の社会教育を受けてきた日本人にとって、「定時定額投資」だけで金融マーケットから距離を置くのは少しもったいない気もします。
 株式投資は「近い将来を予想するというより、遠い未来を妄想する力を競い合うゲーム」であり、実はこれこそが醍醐味なのです。各企業において、新たな商品や新規ビジネスを創造しようと日々七転八倒しているのはごく一部のエリート達ですが、そのエリートと同じ体験を疑似体験できるのです。

 株式投資を通じて「妄想力」に磨きをかけることができれば、いつか、あなたは世界を変える力を持てるようになるかもしれません。

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【雑感】中国人留学生夫婦の思い出

2019-02-21 07:45:41 | 雑感
 今から30年ほど前のこと。

 私の自宅の隣地に、母親が持っているアパートが建っていて、そこには中国人留学生同士の若い夫婦が住んでいました。感じの良い若夫婦で、日本語も短期間ながら非常に上手で、生まれたばかりの赤ちゃんも本当に愛くるしく、幸せそうな一家でした。

 それがある朝、一家ごと忽然と姿を消したのです。いわゆる夜逃げでした。
 家賃が払えないような状況には見えませんでしたので、何か特殊な事情があるのだろうな、と思っていたら、その一週間後に警察が事情聴取に現れて、その理由が判明しました。不法滞在と不法就労の疑い、だそうです。

 当時の留学生ですから、国からの公費で日本に来ていたのでしょう。でも、留学期間が終了した後も、本国へ帰らず、自由を求めて日本で生活を続けていたのだと思います。日本の警察の動きを機敏にキャッチして、事前に逃れたのだと思います。

 今、そのアパートは古くなり、誰も住んでいませんが、彼らが植えた「夏ミカンの木」がかなり大きく育ってきました。2年に一度、30個近い夏ミカンが生ります。この夏ミカンを見ると、あの時の夫婦は今頃どうしているのか? またあの赤ん坊は日本で育ったのか? 想いが膨らみます。

 以前にも書きましたが、豪州の「ポイント制」等も参考に、一定の基準をクリアする移民希望者には、敬意をもって国民として受け入れる仕組みがこの国には必要なのではないでしょうか?
 自由と民主主義を守っていく上で、彼らの存在はなくてはならないものに思えてなりません。

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【金融】資金決済機能の主体は、バーゼルⅢ規制下へ!

2019-02-20 07:27:43 | 金融マーケット
 特別なインシデントを例に、金融決済機能を論じてきましたが、この機能は平常時だけでなく、非常時においてもちゃんと動くようにしておかないと、更に大きな混乱を招くことがご理解頂けたと思います。

 これはそもそも銀行がなぜ存在するのか? という意義そのものになります。決済不能の連鎖を食い止める防波堤、あるいは洪水を防ぐためのダムが銀行の存在意義であり、中央銀行と一般市民との間に欠かせない機能なのです。何か有事の際、中央銀行には「特別融資」など、流動性を大量供給する権限があります。その中央銀行が自信をもって資金供給していくためには、財務情報がオープンになっている銀行が間に入っていることが絶対条件になります。この意義は、昔も今も、そして将来も変わりません。

 現代の技術では、すべての個人口座、すべての法人口座を中央銀行に開設することも可能であり、平常時の資金決済は、中央銀行とフィンテック会社があれば成立する時代になりました。しかし、その口座一つひとつにつき、口座主体のバランスシートまで中央銀行が把握することは不可能ですから、インシデント発生の際、どの口座にどれだけの資金を供給できるのかを判断することも不可能となります。それぞれの口座主体の財務状況を把握する存在である銀行が間に入っていればこそ、非常時の資金決済が担保されていることになります。

 キャッシュレス社会を進めていく上では、このような非常時の対応も考慮しながら、資金決済の枠組みを議論する必要があります。楽天やソフトバンクが、資金決済の世界に入ってくるのであれば、バーゼルⅢの規制下で、ぜひ仕事をさせるべきだと思います。どれだけの規制で縛られ、またリスク管理・コンプライアンス管理等の負荷をかけられているか、想像を絶する世界がそこにあるのを知ることになります。
(「キャッシュレス世界の盲点」シリーズは本日で終了します)

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【金融】もし上海で大停電が発生したら? その3

2019-02-19 07:30:34 | 金融マーケット
 ここまで、完全なキャッシュレス世界では、想定外のインシデント発生時に、取り返しのつかない混乱が起こる可能性を提起してきました。
 それでは、そういう事態に陥らないためには、何を準備しておけば良いのでしょうか?

 まず第一に「常に現金の準備はしておくこと」。これは市民側だけでなく、行政側も商業側も、すべてがです。万一の時には、現金や小切手による決済も可能にしておくBCPが必要だということです。ちなみに米国では、デイビッドカード・クレジットカード・小切手現金の比率が1/3ずつのようです。インシデントを意識している訳ではないと思いますが、非常時でも安定した決済機能を堅持できる状態になっています。

 次に「キャッシュレス・ペイの主体は銀行にしておくこと」。これは万が一、経営不安説などが流れた場合、金融行政傘下の金融機関であれば、中央銀行による対応が即断実施できるからです。もし、アリババやテンセント、楽天・ソフトバンクをキャッシュレスの担い手にするのであれば、これらに銀行免許を取得させるべきです。すなわち、バーゼルⅢの規制下で業務を行ってもらうこと。これが、万一の備えになります。

 なお、ここからは余談ですが、日銀の幹部となった友人に、ここまでの妄想話をしたところ、「中国の中央銀行関係者にも伝えておきましたよ」とのこと。「コンチプランをきちんと作らねば‥」との反応だったそうなので、何かしら準備はしているのだと思います。ひょっとしたら、現金を大量に用意しておいて、大停電時にはバンバン市民に配るつもりかもしれません。暴動になるよりもマシですものね。

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