金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】資本主義経済の成長の源泉

2019-02-07 07:36:35 | 金融マーケット
 本日からは「経済成長の源って何だ」というテーマについて、持論をお話したいと思います。

 資本主義経済の成長の源泉については、「労働生産性の上昇」だとか、「需要の創造」だとか、またそれを可能にする「イノベーション」の発生こそが源泉だとか、過去の経済学者は結構好きなことをそれぞれ言っています。
 ちなみに、我々が歴史で学んだのは、産業革命で大規模な工業社会が生まれ、大量生産のための工場労働者として、それまでの自給自足型の第一次産業従事者たちが、一気に賃金労働者集団に変わったこと。そして、その集団が大量の「消費」を生み出す「消費者層」となったこと。この「消費」という項目こそが、GDPの半分以上を占める成長の源泉になっていることです。

 産業革命以前の彼らの生活水準は、言うなれば原始的であり、自給自足が原則で、極端に言えば1000年前、2000年前と大きく違わないレベルでした。それが産業革命期から20世紀に入ると、安定した賃金をベースに貯蓄を行い、家を買い、車を買い、そのうち洗濯機が現れ、テレビ・クーラーを買って、ビデオも手に入れていくことになります。原始的な生活から、中間層へ脱皮するプロセスで、この消費者層は爆発的な需要を発生させます。時にはローンを活用しながら、近代的な生活水準を争って実現しようとしていきます。このエネルギーこそが資本主義経済の成長の源泉だと私は考えています。
(もちろん、イノベーションも成長の源泉となりますが、毎日毎日いたるところで発生する代物ではありません)

 ところが、いったん中間層として欲しいものを手に入れてしまうと、給与水準がさらに上昇したとしても、それ以上の消費意欲は沸いてきません。1億2000万人の殆どが中間層へ脱皮した日本では、いくら刺激を入れても消費がかつてのように伸びないのはこれが理由だと思います。
 中国で高い成長率が続くのは、14億人に対して中間層に脱皮できた数がまだ2~3億人程度だからであり、その意味で成長余力はかなり残っています。またアメリカは常に国外から移民が大量に流入してきますので、これが成長を下支えしている要因になっています。

 この成長の波は、まず19世紀のヨーロッパで発生し、その後北米に、そして戦後の日本、そして中国へと展開していき、大量の中間層を生み出しながら続いていきます。今はアジア、これからはインド、最終はアフリカ大陸・南米大陸・アラブ諸国で中間層を育て切ったところで、資本主義の成長ステージはいったん終わるのだと思います。

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