金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】ロシアにとっての東アジア

2019-02-01 08:09:10 | 金融マーケット
 朝鮮半島・台湾周辺のリスクについてお話しましたので、本日はロシアにとっての東アジアをテーマにいたします。
 近くて遠い国、それがロシアのイメージですが、2017年の秋にウラジオストクに行く機会があり、その時にロシアの現実を実感することができました。

 ウラジオストクはもともと清国の領地であったものを、義和団事件の後、1860年の北京条約でロシアに割譲された港湾都市です。ロシアにとってはアジア唯一の不凍港であり、ソ連崩壊までは軍港として活用されていました。現在は外国人にも開放されており、中国系ロシア人と中国人労働者を合わせると住民の60%を占めます。街並はヨーロッパの風景、しかしスラブ系ロシア人は少なく、圧倒的に中国系と思える地域なのです(なお、朝鮮系ロシア人も存在感がある地域のため、北朝鮮からの出稼ぎ労働者が多数働いている街でもあります)。

 ロシアにとって東アジアの課題は「人口の過疎化」です。西にいるスラブ系ロシア人が行きたがらない場所なのです。ちなみに北方領土の国後・択捉なども同じで、放っておくと人口が減ってしまいます。プーチンが東アジア入植者にタダで土地をプレゼントする施策を出しているのも、別に日本に対する嫌がらせをしているのではなく、本当にロシア人の人口を増やしたいからに他なりません。
 ロシア人が東アジアに来たくない理由は明らかで、産業が少なく貧しいからです。そうするとロシア人が減って、対岸にいる中国人がドンドン入ってくることになります(何たって人の数が違います)。ちなみに、このあたりのロシアと中国の国境ラインはアムール川なのですが、中国側からアムール川を渡ってロシア側に入植していっても、もとから居る中国系ロシア人なのか、無断で渡ってきた人なのか、区別するのは結構難しいようです。

 中国人にとって、この地域は160年前にロシアに掠め取られた場所であり、必ず取り返すつもりで虎視眈々といったところ。ただ彼らの時間軸は200年とか300年単位なので、表面的には何も見えず、気が付いたらいつの間にか国境ラインが変っている‥というプロセスの途中なのかもしれません。

 以上のように、ロシアが東アジアで最も警戒しているのは中国に他なりません。そしてその中国の圧力を打ち返すために、東アジアの経済興隆のパートナーとしてプーチンに選ばれたのが日本=安倍晋三首相なのです。毎年秋に、ウラジオストクで東方経済フォーラムが開催され、必ず日露首脳会談が設営されていますが、日本のマスコミは殆ど報じることがありません。
 プーチンに対しても、何かと北方領土のことだけを聞くのではなく、東アジアの過疎化と経済、あるいは中国人入植者のことなどをインタビューしてみたらいかがでしょうか? 少しは見直してくれると思うのですが‥。

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