金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】もし上海で大停電が発生したら? その2

2019-02-18 07:29:01 | 金融マーケット
 前回は、上海周辺でブラックアウトが発生して、数週間の間、電力がストップしたら、キャッシュレスの世界では暴動が発生してしまうというところまでお話しました。
 人によっては「現金を持っていたとしても、やはり暴動は起こる」と言うかもしれませんが、現金や小切手があれば、少なくとも商店主は品物が売り切れるまではお店を閉めることはありませんし、新たに商品を入荷すれば、またお店を開いて商品を提供しようとすると思います。買う方も、お店が閉まってさえいなければ怒って打ち壊すことはしないと思います。

 さて、ライフラインが回復して、やっとアリペイやウィチャットペイが使えるようになった時、市民の間でアリババやテンセントの経営不安の噂が流れたとしましょう。確かに、数週間の機能停止でも大損害が発生しますし、もしかしたら資金繰りの不安があるのでは? といった噂が広まる事態です。市民はアリペイやウイチャットペイに置いてある資金を銀行口座へ移し替えるようスマホで指示を出します。市民の多くが一斉に動くと、これも当然ながらアリペイもウィチャットペイも資金繰りが急速に悪化、資金決済が出来ない状態に追い込まれます。

 銀行でいう「取付け騒ぎ」が発生する訳ですが、これが銀行の取付け騒ぎであれば、中央銀行がこの銀行に対して「特別融資」を実行すれば混乱は終わります。中央銀行は各銀行のバランスシートを、ほぼリアルタイムで把握しているため(金融行政による各種モニタリング、中央銀行による定期考査はこのためにあります)、自信をもって何兆円でも資金を注ぎ込みます。そして混乱が去ったら、ゆっくり回収するのです。
 しかし、これがテンセントやアリババだとそうはいきません。中央銀行の知らないところで、膨大な投資が膨らんでいて、もしかすると債務超過の状態かもしれないからです。金融行政傘下の銀行と、そうでない門外漢とでは、中央銀行の扱いが異なる理由はここにあります。

 したがって、この場合、第二次災害が発生、せっかくライフラインが回復したというのに、市民生活の決済機能はまだまだ復活できません。
(続きは明日)

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【競馬予想】フェブラリーステークス(GⅠ)

2019-02-17 12:10:00 | 競馬
 府中1600mのダートGⅠです。
 芝スタートだったり、ワンターンだったり、最後の直線が500mもあったりで、ダートレースの中ではキワモノ。外枠有利、差し追込み有利のコースではありますが、ここは⑥インティを頭固定で。

 武豊騎手が中途半端なレースをせずに、迷いなくハイペースで逃げてくれれば圧勝もあると思います。
 相手は外枠の⑭オメガパフューム、⑬ノンコノユメを中心に、⑦⑧③のサンライズノヴァ・モーニン・ゴールドドリームを交えての三連単勝負。

 さて、久々にダート界の絶対君主が現れるか?

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【競馬】イタリア競馬の落日

2019-02-17 09:34:50 | 競馬
 「近代競馬の祖」ともいえるネアルコを生産したイタリア競馬界。日本には馴染みの深い、トニービン、ホワイトマズル、ファルブラウなどもイタリアで生まれた名馬たちです。しかし、現状は見る影もなく、寂しい状況に追い込まれています。

 イタリア競馬界は、20世紀終盤からその運営面において、杜撰な経理管理が行われ続けたため、2000年代に入ると衰退の一途を辿ることになります。国からの援助で何とか生き永らえ続けるものの、馬の生産数や馬券の売上げは激減し、かつての面影はありません。2019年は遂にGⅠ競走が消滅するところまで追い込まれています。

 世界的レベルの名騎手たち、すなわちデットーリや、ミルコ・デムーロとクリスチャン・デムーロ兄弟のように、国外の競馬に活躍の場を移している優れた人材も目立つところ。

 競馬は国の文化の一つであり、その文化の灯が消えようとしているのが今のイタリアです。
 国の文化を支え、サスティナブルな運営を継続させていくためには、「財力」「知力」「権威」を兼ね備えた有力階層による善意のサポートが必要です。言うなれば、「民主主義」を支える「ノブレスオブリージュ」の存在と同じです。

 競馬にとってのノブレスオブリージュの不在、これが今のイタリアの姿なのでしょう。
 競馬の興隆・衰退は、その国の民主主義の行く末をはかるシグナルなのかもしれませんね。

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【競馬】イタリアの名伯楽テシオと大種牡馬ネアルコ

2019-02-16 04:39:45 | 競馬
 今回は、競馬昔ばなしシリーズのその1です。

 近代競馬の歴史は300年そこそこですが、その中心は発祥の地である英国と、その周辺である愛・仏・独あたりの欧州大陸でした。20世紀に入り、第一次世界大戦前後から米国もその輪の中に入って、第二次大戦後は戦乱の影響もあり、米国こそが競馬サークルの中心になっていきます。

 そんな状況下、世界中の戦後競馬に最も影響を与えた馬は? と聞かれれば、私は迷わず「ネアルコ」と答えます。イタリアの名伯楽フェデリコ・テシオが創った歴史的な大種牡馬です。ところで、ネアルコとはどのような馬だったのでしょうか?

 戦績は14戦14勝、これも凄い成績ですが、本当に凄いのは、ネアルコから続くサイアーラインの豪華さです。たくさんのサイアーラインが伸びていますが、その中でも、①ナスルーラー系、②ニアークティック→ノーザンダンサー系、③ロイヤルチャージャー系、の3つは特筆されるべきもの。
 ①のナスルーラ系はさらにグレイソヴリン系、ボールドルーラー系、ネヴァーベンド系などに血脈を広げて、1960年代、70年代の世界の競馬をリードするサイアーラインでした。
 次の②ノーザンダンサー系は80年代、90年代と世界競馬を席捲いたします。そして現在の欧州競馬を支配するサドラーズウェルズ系もノーザンダンサーの直系にあたります。
 最後の③ロイヤルチャージャー系は、言わずと知れたサンデーサイレンスに繋がる血脈で、2000年以降の日本競馬を完全支配した後、その血脈を欧州や豪州へ広げつつあり、いずれは世界の競馬をリードする存在になると思われます。
 こうしてみると、ネアルコの血脈は、1960年代以降の世界競馬を常にリードしてきた存在であり、「近代競馬の祖」と呼ばれるのも頷ける実績だと思います。

 ところで、これだけの名馬がなぜ、当時の競馬二等国であったイタリアで誕生したのでしょうか?
 これはもう、天才生産者フェデリコ・テシオの執念というしかありません。年間100頭前後しか生産規模がなかった当時のイタリアで、常に英国の超一流の血脈を求めて生産を続けました。その結果、ネアルコやリボー(仏凱旋門賞2連覇)といった名馬たちを創ることができたのです。

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【金融】キャッシュレス社会の盲点 もし上海で大停電が発生したら?

2019-02-15 07:34:48 | 金融マーケット
 本日からは「資金決済機能」を少し深掘りしてみようと思います。

 そもそも、お金=貨幣が生まれたおかげで、我々の生活は非常に便利になりました。貨幣が生まれる前は、物々交換が基本でしたので、自分の持ってきたもの(例えば魚)と同等の、こちらが欲しいものを持っている相手方をみつけなければならず、みつけるだけでも一苦労でした。貨幣が生まれたおかげで、まずは魚を売って、正当な価値分を貨幣で受け取り、その後、自分の欲しいものをその貨幣で購入すれば済むことになりました。そして、貨幣が余れば貯めておくことも可能となりました。

 そうこうするうちに、銀行口座なるものが生まれて、現金を所持していなくても、小切手や手形によってモノを購入して、あとは銀行口座で支払決済が出来るようになりました。そして今や、「ウイチャットペイ」や「アリペイ」の時代。日本のSUICAと違って、それぞれ80万円程度までチャージが可能ですので、普段の生活では現金が不要といえる時代がやってきました。事実、上海では現金を見ることはまずありません。

 さて、ここで非常時の頭の訓練をしておきましょう。もし、上海周辺でブラックアウトが発生して、数週間は電力の復旧ができない事態が発生したとしましょう。原因は原発の事故かもしれませんし、昨年の北海道のような大地震かもしれません。当然ながら、アリペイもウイチャットペイも使用できなくなる一方で、上海市民には現金の持ち合わせはありません。しかも、上海は国際都市で、世界各国から多彩な人間が集まっており、特に中国人は超富裕層も居れば、農村部から来ている超貧困層まで、いわゆるピンキリ状態です。震災の時の日本人のように、独特の連帯感ある集団とは全く異なる状況と言って良いでしょう。

 このような状態では、当然ながら食料品や生活雑貨を求めて、2400万人が彷徨います。混乱の中では少なからず、打ちこわしや略奪が発生するでしょう。何しろ現金がありませんので支払手段がないのです。一方、売り手の商店主から見ればすべてが略奪と同じです。世界最大の都市上海で、中国政府が最も恐れる「暴動」が発生していまう事態となります。
(続きは月曜日に‥)

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