美瑛町役場の向かい側にある「丘のまち郷土学館美宙(みそら)」は、郷土史博物館であると同時に天体望遠鏡を備える天文台の機能を持つユニークな建物ですが、ここでは美瑛に関連する様々な文化講座を開いていて、その一環で昨日は「街に近づくヒグマたち~理由と安全対策」と題する講演がありました。
北海道に住んでからは山を歩く時ばかりでもなく街中で生活していてもヒグマとの遭遇の可能性はあるのでアンテナは高くしておく必要があると日々思っている私達は、早速この講演の受講を申し込み出かけて来ました。
講師は山本牧さんという「ヒグマの会」の副会長をされている方でした。「ヒグマの会」は北海道酪農学園大学内に事務局を置く任意の法人ですが、北海道内でヒグマを研究している錚々たるメンバーが集い行政とも連携して活動する権威ある団体のようでした。
昨日の山本さんもヒグマの実態を淡々と話し、ヒグマの存在は「今そこにある危機」なのだけれでも種の絶滅へ向かうのではなく「共存」することに力点を置いた説得力ある内容で受講して良かったと思いました。
一番印象にあるのは、北海道では1990年まで「春ぐまの駆除」作戦という春に冬眠から覚めてふらふらしている内にクマを駆除してしまう手法を取って来たものをやめたということでした。その年までは明らかにヒグマの個体数は減っていて絶滅するのではないかとまで言われたそうです。
しかし同じ地球上に住む動物の一種である人間が一つの種を絶滅して良いのかという思いから春ぐま駆除作戦は中止となり、そこから個体数の回復が始まり34年後の今ではほぼ北海道全域でヒグマの存在が確認されるようになりました。今度は増えすぎて農作物ばかりでなく人にも被害が出るようになりました。
我が家近辺のクマ目撃マップ
現状は駆除作戦を担ったようなベテランの猟師が激減し、唯一電気柵でクマを近づけないようにしていても、人の作る農作物に味をしめたクマたちは怖いもの知らずになって人間社会に近づいてきているということです。
こういう中での「共存」とは決して仲良くなって生きて行くということではなく、クマに人間社会に近づけさせないお互いに境界を知った生き方をさせることだと言います。人間が自然界に入って行く時には決してクマに餌を残すようなことはせず、キャンプでのゴミの持ち帰り、釣りでの釣った魚の放置や鹿猟での死体の放置などをやめることを徹底しなければならず、電気柵での農作物の保護などもお金がかかるがもっとやり、何よりも今年から春ぐま駆除を再開したとは言っても担い手となるハンター不足があるのでこれの育成が必要だそうです。
講演後の質疑応答でも農家や学校関係者から出没するクマにどう対処していけば良いか深刻な質問が飛び、私達の危機感などとは違った深刻さを知ることが出来ました。
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