夫婦で新しい人生にトライしてます~日本編

15年ぶりにカナダから帰国。終の棲家と選んだ北海道美瑛町から日々の生活を綴ります。

富良野やすらぎの刻(とき)第63夜

2024-05-19 07:33:34 | 日記

昨日は、毎月恒例となっている富良野での脚本家倉本聰さんのトークショー「富良野やすらぎの刻」に出かけて来ました。彼がこれまでに脚本を書き、テレビドラマ化されて来た作品は1000本を数えるのだそうですが、それらの中から彼が選んだ作品を鑑賞し、その後にかつての富良野塾(2010年に解散)の塾生たちで作っている富良野グループのメンバー4人を交えて、鑑賞した作品にまつわる裏話やエピソードなどを語る企画です。

昨日の作品は、かつて60年続いたTBSテレビ系列の「東芝日曜劇場」の中で北海道放送が倉本さんとタッグを組んで制作した「うちのホンカン」シリーズ全6話から「冬のホンカン」(1977年)と「ホンカン仰天す」(1981年)でした。大滝秀治(2012年逝去)と八千草薫(2019年逝去)が駐在所の巡査と妻役を演じ、人情コメディを繰り広げました。大滝秀治は名バイプレーヤーでしたがこのドラマで初めて主演を演じたとか、八千草薫が素でコメディを演じている姿が今になって新鮮な驚きでした。

昨日の倉本さんのお話では、この2つの作品はどちらも倉本さんにまつわる実話が描かれているということでした。「冬のホンカン」は、明日嫁ぐ娘(仁科明子)を思う巡査が駐在していた北海道の森町に逗留していた有名作家(笠智衆)に色紙を書いてもらったがその作家は偽者で宿代を払わずに逃げてしまう、しかし彼の身振りや書かれた色紙の内容は嘘が感じられず逃げられた後にも感慨が残るといったものでした。

倉本さんにも偽倉本聰に翻弄された実話があったそうです。青森から山口まで日本海側を宿泊地を変えながら点々と逃避行した偽者は、逗留した宿ではいかにも作家を気取り観光もせず部屋に籠って書き物を続け、逃げてもしばらくは宿代を踏み倒されたことにも気づかないほどに人々を信用させていたそうです。後で捕まってからある宿の経営者が押さえていた偽者が書いた原稿を倉本さんに送ってくれたものを見たところ、当時NHKの大河ドラマ「勝海舟」を書いていたそうですが本物がまだ13話までしか書いていないのに偽者は23話まで書いてあり、しかもその字の上手さに驚いたそうです。そういう人が世の中にはいるものですね。

また、「ホンカン仰天す」は、札幌の隣で今は石狩市となっている当時の厚田村に駐在していた時の巡査の物語でしたが、村の寿司屋が月に1度の「心の日」に1貫150円の寿司をその日は30円で振る舞い地元民に喜ばれ、また身寄りのない老人に無償で寿司を届けていたことを知った巡査がその美談を警察の広報誌に投稿して悦に入っていたところ、その寿司ネタは寿司店の親父が漁協の倉庫から盗んでいたものだと分かった騒動でした。この話の背景には魚が上がる地元では漁師は安く買い取られて地元には流通せず、寿司屋は札幌へ出かけて倍の値段で買って来なければならないという矛盾があるのでした。

この話も倉本さんがドラマ撮影などで良く利用していた小樽の寿司店で実際にあったことだったそうです。どちらの話にも出て来るのは皆善良で、厳しい自然環境だからこそ生きるために人が助け合うことがDNA化していると思われる北海道の人々です。倉本さんは意図的にこういう作品を書き続けているようでした。

倉本さんを応援している会社から「北の国から煎茶」のプレゼント

昨日の倉本さんはかなり元気な様子でもっとたくさんのエピソードを語ってくれましたがその紹介はまた次の機会にします。来月は私達も見ていた「前略おふくろ様」からの作品鑑賞となるようで楽しみです。

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