年金ふわふわ

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障害年金と初診日

2014年08月15日 | 新聞連載記事
大阪地裁は先月末、ある女性が、初診日が確認できないことを理由にして、国が障害年金を支給しないのは不当だと訴えた訴訟の判決で、女性の請求を認め、国に支給を命じました。

障害年金においては、初診日が重要な意味を持っています。初診日に国民年金の加入者であれば障害基礎年金の対象とされ、厚生年金の加入者であれば障害厚生年金の対象とされます。(初診日要件)

障害基礎年金は、障害認定日における障害の程度が1級か2級の場合に支給され、障害厚生年金は1級または2級あるいは3級の場合に支給されます。障害認定日は、原則として初診日から1年6カ月経った日です。(障害等級要件)

さらに、初診日前の国民年金加入期間のうちの3分の2以上が、保険料納付期間または免除期間であること。それを満たせない場合は、直近の1年間に未納期間がないことという条件もあります。(保険料納付要件)

いずれの条件も初診日が基準です。初診日が確定しなければ「初診日要件」が判断できず、障害認定日における「等級」が判断できず、「保険料納付要件」の対象期間が定まりません。

初診日は、障害年金を請求する側が証明することとされています。障害年金請求の際に提出する診断書には、医師に初診日を記入してもらい、転院しているときは初診日に診てもらった病院の証明書を添付します。

ところが、初診日から時が経って障害年金を請求する場合、病院のカルテが廃棄されていたり、病院そのものが廃院していたりしていて、初診日が証明できないケースがあります。これにより請求の道が絶たれてしまうことが障害年金の特徴です。

今回の判決は、「客観性の高い資料がない場合、本人の供述や病気の経過などを総合判断し、個別的に認定すべきだ」として、本人の証言などから女性の主張する初診日を認めたものです。今回のケースは、裁判によって救われたケースですが、逆にいえば裁判という方法を取らなければ救われないのが現実です。