観自在

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別れの作法

2008-11-06 22:11:00 | コラム
 駅前で往来を眺めていると、車で乗り付けて、駅へ向かう人を見ます。おそらく近郊に住んでいる人で、家人が車で送って来るのでしょう。そういう人達を何例か見ていると、面白いことに気づきます。車から降りた人はまっすぐに駅の入口を目指して歩いて行き、ロータリーを走り去る車を見送る人はおろか、一顧だにしない人がほとんどだということです。降りる直前には、「ありがとう」とか「じゃあね」などと言葉を交わしていることとは思いますが、何とも淋しい光景のような気がしてなりません。
 別れの挨拶「さようなら」は、「時間が来たのでお名残は惜しいですが、それではおいとまいたします」というニュアンスでしょう。後ろ髪を引かれる思いを残しながら、しかたなく帰るという感じです。英語の「GOD-BY」のように、突き放したような表現ではありません。
 忙しい朝の時間帯であることはわかりますが、もう少し気持ちを伝え合ってもよいのではないかと思います。人の背中には、意外に表情があって、別れてほっとしたという解放感を表していたり、別れる前までにこやかだったのと裏腹にムッとしていたりと、心中を表しているようです。背中を見送るのも、貴重なコミュニケーションと言えるかもしれません。
ちなみに、私は、別れてからも相手の姿が見えなくなるまでしつこく見送っているタイプで、これもちょっと相手に負担をかけるのではないかと考え、やりすぎかと気になっているところです。もっとも、そうやって背中を見送るような相手も数少なくなってしまいましたが。


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