山本あけみ「緑ゆたかな環境を子どもたちへ」

建築士や生活者として、都市計画・公共施設マネジメント・地球温暖化対策・SDGsなど、独自の視点で日々発信

平成25年第3定例会 一般質問のご報告「地域防災力について」

2013-09-10 | 議会・一般質問のご報告

9月9日に一般質問で議場に立ちました。

テーマは「地域防災力について」、

東日本大震災から2年半を経過し、いつ起きてもおかしくない首都直下地震への区の備えについて質問としました。

動画→9月9日http://www.gikai.city.suginami.tokyo.jp/vod/25-03/250909.htm

防災市民組織の現状と課題に関しては区長答弁をいただきました。

質問と答弁の要旨、そして質問の全文を掲載いたします。

 

<要旨>

質問1

震災救援所は、地域・学校・行政などが連携して、避難から救援所の設置・運営に係る役割を担っていますが、現状の課題等について区の見解は?

答弁1

震災救援所運営連絡会が実施する訓練の参加者がいつも同じという固定化等の課題がある。区は幅広い世代の訓練参加のため周知に努め、連絡会と協働した取組を進めていく。

質問2

防災市民組織は、共助の取組みとして地域ぐるみで防災活動を行っていますが、なかなかそうした活動が地元の住民に見えづらく浸透していないように感じます。区の認識は?

答弁2

活動を知ってもらい、参加してもらうにはどうすればよいか苦心している状況にある。 

質問3

地域の中には、防災に役立つ資格を持っている方が多くいると思いますが、そうした方を防災市民組織の活動に巻き込むことは、大変有意義なことであると考えます。区の見解は?

答弁3

その方向性で進めていく。

質問4

区内には区民の方が利用をしている様々な施設があります。体育館や区民集会所、ゆうゆう館などは大変馴染みの深い施設でありますが、いずれも震災時にはどの様に使われていくのか役割が知られていません。これらの施設の発災時の役割は?

答弁4

体育館のように災害対策本部組織の役割を担う施設と、ゆうゆう館のように位置づけをしていない施設があるが機能強化を図る。

 

質問5

杉並区地域防災計画で災害時の後方医療機関が指定をされているものの、区内偏在があると思われる。子どもがいる家庭では小児医療の専門施設が必要となる。区界などは練馬区・中野区・世田谷区などの近隣区の医療機関との連携が必要と考えるが、見解は?

答弁5

災害医療運営協議会を設置し、医療救護体制の再構築を進めている。医療機関の偏在にも配慮し、連携を進めていく。

 

<全文>

 私は民主社民クラブの山本あけみです。通告に従い、区政一般についての質問をいたします。 質問項目は、地域防災力についてです。理事者の方々におかれましては、明快かつ前向きなご答弁と盛り込みました提言についての真摯なご検討をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

わが国に甚大な被害をもたらした、あの東日本大震災から2年半が経過をしようとしています。時が経つのは本当に早いと感じています。

わたくしは3月11日14時46分、我が家で今まで経験をしたことが無い、

大きな揺れを感じました。瞬時に家族は無事かと焦る思いにかられ、その後、通信網や交通網のあれ程の大混乱を初めて目の当たりにしました。また、テレビから放映される被災地の現状、特に大津波が畑の間の道を進む軽トラックをまさに飲み込まんとする映像が、見ている途中で放映中止となり、突然コマーシャルに切り替わった時には、しばし事態が飲み込めずにいましたが、映像がもたらすあまりの深刻さに、放映をすることが出来ないのだと察知した時には、想像を遥かに超える重大な事が被災地で今まさに起きているのだという、大きな恐怖に包まれました。それがあの大津波でした。

 関東大震災はM7.9、阪神大震災はM7.3であったのに比べ、東日本大震災はM9.0であり、飛びぬけて巨大なエネルギーが春まだ明けきらぬ東北の地を襲ったことになります。

 内閣府の想定によるこれから起こるであろう首都直下地震はM7.3、そして南海トラフ巨大地震の想定はM9.1であり、残念ながら地震国日本に住む私たちには少しも休むことなく、その脅威から逃れることはできないのだと思っています。

 当区においては杉並区地域防災計画の見直しの取組みを継続しより良い物にして行こうとする努力を続けていること、震災救援所や医療救護所・災害備蓄倉庫を明記した杉並区防災マップを取りまとめて区民周知に努め、そして総合震災訓練をはじめ、個々の震災救援所訓練にも取り組む姿勢は大変心強いと感じています。

 先月30日の日本経済新聞には東京都の地域防災計画に関しての記事が載っていました。 昨年11月に新たな被害想定で明らかになった防災上の課題や東日本大震災の教訓を踏まえて修正され設定をした目標のうち、住宅の耐震化率など3つの主要項目を点検すると、現状は目標値の約8割の水準に達しているということで、見出しには「直下地震対策8合目に」と大きく謳われていました。

 今後は合意形成が困難なマンションなどの耐震化率向上や高齢化する住民などの地権者の利害調整を必要とする不燃領域率の向上、コスト高につながる企業への備蓄用品保管要請が必要となる帰宅困難者対策など課題も残るとしています。

 東京都地域防災計画の中には第一の視点として「自助・共助・公助を束ねた地震に強いまちづくり」とあり、強い揺れや火災によって最大死者数1万人、最大被災者数約339万人、帰宅困難者数517万人、そして

約30万棟にも上る全壊など、住宅やライフラインへの大きな被害を低減させるため、また第二の視点危機管理の体制作り、第三の視点再生へのしくみづくりと併せて細かな施策を練っています。

 今月3日には東京都総務局から「東京都震災対策事業計画の策定」が発表され、地域防災計画(震災編)に掲げた目標を達成するための、具体的な事業が体系化され、平成27年度までの計画期間に221事業に取り組むことが発表されました。

 都民と地域の防災力向上においては、「防災意識啓発及び Twitter などによる情報発信」「防災隣組」「消防少年団の充実強化」などが盛り込まれています。

 私は改めて杉並区地域防災計画震災編と震災救援所訓練マニュアルを熟読しました。その中には詳細な書き込みがあり、区議をしていながらも知らなかったことの多さに驚きました。

 読後の感想は「この中には杉並区が自治体として出来ることは大よそ盛り込まれており区民として区に対応を求めることは一通り網羅されている。

では次に、私たち住民は何をするべきなのだろうか?」ということでした。

 私はこれまで自分の住む地域やその他の震災救援所訓練に参加をし、それがどの様な機能を持ち、指示系統はどの様になっているか、そして参加者はどれ位で、動きはどの様なものかなどを視察してまいりました。マニュアルでは震災が発生してから初動の震災救援所立ち上げ、そして運営が長期化

した場合の対処法など詳細に考えられては居るものの、 いざ震災が起きてからマニュアルを読んだところで対応は後手に回り、被災者救援をはじめる様になるまでにはあまりに時間がかかると思われます。いかに事前の訓練によってマニュアル通り、もしくは大まかであっても、それを実行していける力が、それぞれの震災救援所に備わっているかが重要だと考えます。

 言い換えると、地域防災力を向上させていくことが今後最も重要視されるべき課題であると考えています。

そこで質問をいたします。

Q1

震災救援所は、地域・学校・行政などが連携して、避難から救援所の設置・運営に係る役割を担っていますが、現状の課題等について区の見解をお伺いいたします。

 私は、区内の様々な震災救援所訓練を視察するにつれて、 大きな疑問や課題を感じるようになりました。それは「震災救援所訓練によって到達するべき目標が、杉並区内において統一されていないのではないか?」というものでした。

 視察をしていくと、震災救援所訓練とはいえ、 ある場所では校長先生が陣頭指揮を執っているためか、 教育現場の延長であるがごとく受身主体の訓練を行っていたり、またある場所では、発災後3時間を想定して震災救援所の立ち上げ訓練をしているとの事ですが、参加者の多くは指示を待っている状態で、訓練全体の目標が参加者で共有されていなかったり、終わった後の反省会においても課題・問題点及び解決策の共有がされていないため、次に進むべき方向の認識がされていないという状態が見受けられました。

 また、参加者も区職員や学校教諭の他には、町内会や学校支援本部、運営連絡会委員、消防団、民生委員、PTAやおやじの会、児童・生徒など、

学校を中心として連絡の取りやすい限られた一部の区民のみになっていると思われる救援所もありました。

 せっかく訓練を行っていても地域全体にとってはその存在自体も知らされていないのではないか?あるいは認識されていないのではないか?という疑問が沸いてきました。

 

そこで質問をいたします。

Q2

防災市民組織は共助の取組みとして地域ぐるみで防災活動を行っていますが、なかなかそうした活動が地元の住民に見えづらく浸透していないように感じます。この点について区はどのように認識しているのかお伺いいたします。

 先ほど私は「震災救援所訓練で到達するべき目標が杉並区内において統一されていないのではないか?」と申し上げましたが、 それは言い換えると「地域防災力の地域間格差が顕著に存在し、現状においてはいざ震災が起きた時には地域によって対応力に大きな差が出てくるのではないか?」と言えるのだと思います。

 震災救援所訓練に多くの区民が参加し地域で防災という大きな目標に取り組む事、杉並区で共通の訓練目標を持ち、それに向かって自分の地域が果たしてどの位まで到達をしているのか振り返りつつ次の訓練を重ねていく事、わたくしは区民がそういった共通概念を持つことが必要であり、今後の課題であると重ねて申し上げます。

 また、訓練を重ねるにあたっては、防災危機管理者や防災士など、防災の専門家としての人材の育成とその全区的な配置は最も重要と考え、その取り組みに着手をするよう区に提言をいたします。

 

 その他にも例えば負傷者の救護を行う看護師や建築物の安全性を見極める建築士、また、資格という形でなくても野外キャンプなどの経験者なども

大いに災害時には活躍してくれるとも思い、地域に居住する様々な防災に

役立つ資格や能力をお持ちの人材を発掘し参加を促すことが重要と考えます。

 

そこで質問を致します。

Q3

地域の中には、防災に役立つ資格を持っている方が多くいると思いますが、そうした方を防災市民組織の活動に巻き込むことは、大変有意義なことであると考えます。区の見解をお伺い致します。

 震災救援所訓練を視察していくと、その中で大変熱心に取り組みを続ける区議会議員の姿に出会うことがあります。地域のリーダーとしての防災への取り組みに頭が下がる思いですが、一方でその様なリーダーシップを有し、機動力の有る人材に恵まれていないと思われる地域での防災力には大変心配が残ります。

 当区におかれましてはこういった「地域防災力の地域間格差」とも言うべき顕在化しつつある大きな障壁に是非とも目を向けていただき、その解消に向けて施策を講じていただきたいと強く要望を致します。

Q4 

また、区内には区民の方が利用をしている様々な施設があります。スポーツを楽しむ体育館や、会議・講習会などで利用をしている区民集会所、 介護予防においてのゆうゆう館などは高齢者に大変馴染み深い施設でありますが、いずれも震災時にはどの様に使われていくのかその役割が知られていません。

これらの施設の発災時の役割はどのようになっているのかお尋ねいたします。

Q5

また、先ほどらい、杉並区地域防災計画に触れて来ましたが、この中でいくつか気になる部分がありました。それは、災害時の後方医療機関が指定をされているものの、所在地を確認していくと区内偏在があると思われる点です。特に、子どもがいる家庭では小児医療の専門施設が必要となります。区界などは練馬区・中野区・世田谷区などの近隣区の医療機関との連携が必要と

考えますが、当区としての見解をお伺いいたします。

 さて、ここで今回の一般質問をするにあたり私が視察をさせて頂いた震災救援所の中で最も訓練を重ねて来たと思われる区内のある救援所の様子をご紹介いたします。 

 その日は朝9時過ぎに震災救援所に伺うと既に倉庫からの物資の搬出が始まっていました。参加者はお互いの役割確認の為の打ち合わせは無い様子で、持ち場の準備を粛々と進めていましたが、その方々が作り上げた訓練の内容は大変充実したものでした。

 体育館の中では正面に本部と防災用品の展示、そして体験型訓練の場では簡易担架組み立て・車椅子操作・固定電話の安否確認・三角巾による止血骨折保護・心肺蘇生AEDが用意され、それぞれの担当者が来場者に対し説明の上、体験をして貰っていました。

 体育館入り口にはバルーン型照明器具展示と炊き出しが行われ、その奥の運動場ではスタンドパイプ操作・救助のために木材を切断するためのチェーンソー・消火器による初期消火等の体験コーナー、また区内最新型の起震車もあり、震災時を想定した訓練としては広い範囲を網羅していました。

わたくしも初めてスタンドパイプの操作を体験し、性能の良さを実感し、自分でも操作が出来ることを確認しました。

 当たり前のように進んでいく訓練を眺めていた私にとって、ふと気づくと大変驚いたことには、一般参加者が来場するまでのおよそ1時間で、震災救援所立ち上げの準備が終わっていたことでした。

 実際の震災時においては訓練の習熟度が地域防災力を決めるとは考えていましたが、この完成度の高い訓練の様子を目の当たりにして、大変な驚きとともに、杉並区の全ての震災救援所においても同様に行うことが出来るようになることを願って止みませんでした。

 参加者に伺ってみると、こういった訓練を年10回ほど行っているということで、なるほど当日の準備段階でのお互いの話し合いなど必要なく、驚くほどの短時間で震災救援所が立ち上がっているのだと納得をしました。

 ここでは防災危機管理者の有資格者がリーダーとなって、 主催者や協力団体を取りまとめ訓練のリーダーシップを取っていました。訓練終了後にも参加者へのアンケートの結果分析を通じて見えてくる次への課題を共有しており、だからこそ内容の濃い訓練が出来ていることも特筆すべきことだと感じました。

 先ほども申し上げましたが、是非杉並区の全ての震災救援所に防災のプロを育成して配置をしていくことを、再度提言し要望をいたします。

 結びに当たりまして、改めて東日本大震災の被害に合いながらも、懸命に復興を目指し、日夜尽力をされている被災地の方々やそれを支える方々に深い敬意を表したいと思います。

 これまで地震国日本において起きた数々の震災で、ご親族・ご友人を失った方たちの無念を晴らすためにも、その苦すぎる教訓から大いに学び、訓練を通して減災に努め、今まさに首都東京に襲い掛かろうとしている震災から区民を全力で守りきることが、杉並区においての私たちの責務であると信じ、今後ともその努力を惜しむことなく続けていくことを強く要望し、質問を終わらせていただきます。