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Surf, Run and Trails / Endurance For Fun

戦国無双 ヤビツ峠~蛭ヶ岳トレラン

2017-10-10 00:12:08 | ランニング



2017/10/18
ヤビツ峠の駐車場に車を置く。
ここまでの峠道、昔は砂利道だったが舗装され、それでも対面通行が非常に困難なほど狭い。
初心者車が通るものなら前後で立ち往生することしばしば。
その道はバイクのクライムヒルの聖地となり、ロードランナーのトレーニングの場としても脚光を浴びている。
峠の売店は標高760m。
バスロータリーとトイレと20台ちょっと置ける駐車場がある。
鬱蒼とした森にあり、なんとも言えない神秘的な霊的な空気が漂う。

そこから1.5キロ舗装路を下って走りトレイル入り口に到達する。
三ノ塔から塔の岳を超え、丹沢山、そして丹沢山系最高峰1673mの蛭ヶ岳を目指す。

丹沢~蛭ヶ岳は筆舌に尽くしがたいパノラマ絶景が目前、足元、頭上、背後に広がる。
神奈川アルプスと言わんばかり恐ろしく落ち込むサワが足元から広がり、
森林限界に近い風景が目の前に横たわり、垂直に切り立つ岩場がトレイル上に現れる。
癒されるも切なくなり、とにかく壮大な山岳美を堪能できる。

アップダウンが激しく、鎖場もあり、累積標高は2200m。
登山者ペースで13時間かかるので、通常は山小屋での宿泊を伴う。

ここを可能な限り走り、極力休まず、這うように登り、飛ぶように下る。
全行程30キロとロングトレイルの部類には入らないが
アップダウンの激しさから脚へのダメージがボディーブローのように効きまくる。


帰路、ガスが深く立ち込み視界が悪くなってきた。
我々4人は完全に雲の中、Run in clouds。
霧雨の粒が少しづつ大きくなり小雨になる。
山では4時も過ぎると斜面の方角や木々のせいで殆ど夜に近い状況になる。
この調子だと日没間際だろう、濡れた石でスリップしながら、
スリップしたらそのまま身体を落とすように走る。

16時半、あと5キロ。1キロペース12分。
少々スピードアップしなくちゃいけない。
ところが、2人が走りながら空腹を訴えてきた。
しかも一人は途中で止まってしまった。足が動かなくなったのだ。。。。


その日は2017年10月8日
遡ること450年前、永禄12年10月8日、
今の神奈川県愛川町、三増(みませ)で戦国史上最大の山岳戦の火蓋が切られた。
北条軍の鉄砲隊優勢の銃撃戦となり武田軍が多大な損害を受けた。
しかしながら山岳戦を得意とする武田軍は北条軍を奇襲攻撃。これがヤビツ峠で繰り広げられた。
戦いは壮絶で、刀、矢、銃弾が今でも出土するという。
矢が入った箱(ヒツ)が見つかったのでヤビツ峠の名の由来はそこにある。

戦死者は4千人強。
この時、負けた北条軍は食料の調達ができなかったのが敗因と言われる。
戦死者の亡霊がうじゃうじゃこの一帯にいる。
亡者たちは餓鬼となり、山に入る者に取り憑く。
取り憑かれた者は空腹を訴え、そして足が止まってしまう。
単独であれば夜は越せない。軽装であればなおさら。

これがヤビツ峠の餓鬼憑き怪談。
歴史の事実に基づく。

その道をトレイルランニング。
道は未知である。
それもまた歴史と自然のロマン。

駐車場に17時半に到着。
真っ暗ではない。
餓鬼に取り憑かれた者も無事完走。

その日、多くの武士が命を落としたその土地で自分を興す。
合掌。